第1話「びしょ濡れの彼女」
三話で完結します! お気軽に読んでみてください!
大学からの帰宅途中、夏のゲリラ豪雨に見舞われた。
幸い、傘を持っていたので助かったが、それにしてもひどい雨だ。
突然の雨ということもあり、道行く人の中には雨宿りをする者や、そのまま雨の中を歩く者もいる。
そんな中に、制服姿の女の子がびしょ濡れになっているのを見つけた。
彼女は傘を持っていないようだ。
初めは自分には関係ないからと傍を通り過ぎようとしたが、あまりにずぶ濡れな格好だったのでたまらず声をかけた。
「大丈夫? 傘入る?」
「……いえ、大丈夫です」
「遠慮しなくていいよ。こんなにひどい雨だもの」
俺がそういうと、彼女はペコリと頭を下げ、
「……ありがとうございます」
と言うと、俺の右肩にペタリと張り付いた。
何だが気まずくて、俺も彼女も何もしゃべれない。
そのまま俺たちは無言のまま、しのつく雨の中を歩いた。
しばらく歩くと、彼女が言った。「……ここです」
そこが彼女の家のようだった。
無事、彼女を家まで送り届けた俺は、ほっと一安心し、その場を立ち去ろうとする。すると……、
「あの……うちに上がっていきませんか?」
少し震える声で、彼女がそう言ったのだった。
◆◆
彼女の名前は結花と言った。近所のF高校に通う、高校二年生であるようだった。
「家に上げてもらうなんて、迷惑じゃないかな?」
「迷惑じゃないです。わたしはただ……お礼がしたいんです」
その言葉に押し負けて、俺は彼女の家に上げさせてもらい、そのまま結花の部屋まで案内された。
ピンク色のクッションとベッドのしつらえられた、甘い香りのする部屋だった。
女の子の部屋なんて、一生縁がないと思っていた空間である。
「修太郎さんは少しここで待っててください」
そう言って結花は部屋を出ていき、俺は一人その場に取り残された。
ちなみに修太郎とは俺の名前である。
◆◆
「遅いな……」
俺は一人、ぼそりとつぶやいた。
というのも、結花が部屋を出て行ってからというもの、彼女が一向に戻ってこないのだ。すでに十分以上が経過している。
俺はたまらず部屋を出て、家の中を捜索し始めた。
他人の家なので勝手が分からず、右往左往する。
すると――。
なんと、風呂場から水の流れる音がするではないか。
しかも、脱衣所の扉が開いたままである。
――シャワー浴びてるっ⁉︎
一体、何のつもりなのだろう?
突然の出来事に動悸が激しくなる。
と、その瞬間、蛇口をひねる音とともに、シャワーの音が止まり、
裸の結花が風呂場から出てきたっ!
「ひゃっ!」
こちらの存在に気付いた結花がバスタオルで身体を隠す。
俺はとっさに目をそらし、弁解した。
「ごめん……戻って来ないから探しにきたんだけど。覗き見するするつもりはなくて……」
「そ、そうですよね。待たせてしまってごめんさい。びしょ濡れになっちゃったから、身体を洗いたくて……」
「そうか……そりゃそうだよな」
シャワーを浴びていると言うだけで変なことを考えた俺の方がおかしかった。
◇◇
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