だが断った!
「なぜまたお前なのだ!?」
不機嫌丸出しのTHE王子が私を指差した。それはマナー違反だと習わなかったのか?異世界だから違うんだろうか。そしてなぜコンビニを出るタイミングで召ぶ?あそこ、帰りに寄るのに便利な場所なんだけど、行くのやめた方がいいのかしら?
2度目の召喚はめまいだけで済んだ。前回と同じく、コスプレオジサンたちがひしめいてる。違うと言えば、THE王子が最初から目の前にいることだな。わたしは急いで魔法陣から出て大きく口を開いた。
「助けてー!ま、」
最後まで言う前に、空間に裂け目のような物が現れ、サクッとイケメン魔王が出てきた。
「呼んだか?」
また部屋は阿鼻叫喚の場と化した。前は気がつかなかったけど、THE王子ってば部屋の隅に張り付いてるわ。って、あれ?前回の魔王登場の時の黒い霧は?あれは舞台効果だったのかしら?
「助けてほしいんだろ?」
「魔王様、なんだか言葉遣いがフランクになってません?」
「あー、あれな。威厳がどうとかってジジイどもがうるさいんだわ」
心底面倒くさそうに吐き捨てた。
「じゃあ登場の時の黒い霧も?」
「そーそー。んなん、魔力の無駄遣いだっての。まあ、あれくらいなんともないけどな」
なぜかちょっとドヤ顔。いやん、胸がトゥンクしちゃった♡
「で?戻りたいんだろ?」
魔王がによによしながらわたしを見てる。えっ?もしかして?思わずわたしは荷物を体の前で抱きしめた。
「対価は・・・」
「よく分かったな!」
「いやー!今日は奮発してプレミアムビールなのにー!おツマミも高級缶詰めなのよー!」
渡すものかとスーパー袋を確保するわたしを魔王が冷たい目で見た。
「帰りたくないのか?」
「帰りたいけどさ、そういや今日は来るの早くなかった?」
魔王が目をそらした。
「ビール、美味しかったのね?」
魔王のこめかみに汗がつたった。
「わたしが来るの、待ちかまえてた?」
魔王が口笛を吹いてごまかそうとした。いつの時代のリアクションだよそれ。わたしは肩をすくめた。
「魔王様、わたし好みの顔だから、許してあ・げ・る♡」
魔王の顔がボンッって音が聞こえそうな勢いで赤くなった。いやん、やっぱカワイイ。
「は、早く帰れ!」
ビール目当ての魔王がコンビニの前に帰してくれた。ちょっとはわたしにも会いたいって思ってくれてたら嬉しいんだけどなー。
しかーし。今日は予算不足だわ。第3ビールとさきいかを買って帰った。ああ、プレミアムビール飲みたかった~。
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