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泥だらけ

作者: タマネギ

水溜まりに足を取られて転けた。

あぜ道には農作業に使う一輪車や、

カブの轍がついていて、

そこに、水が溜まっていた。


轍は、晴れた日には固まり、

夕立をしっかりと溜めて

水溜まりになるのだった。


トンボを見上げ、バッタを追い、

忘れた頃に鳴る爆音機の音に

おののきながら、

私は、その水溜まりに足を

取られてしまっていた。


あぜ道は、虫を見つけるのには

ちょうど良かったけれど、

轍の水溜まりには苦労した。


見えるのだから、いくら子供でも

気をつければ転けないだろうに、

私はよく転けた。


麦藁帽子が邪魔になって、

それで転けたこともあった。

そんな時は、麦藁帽子に腹が立った。


泥だらけになりながら、

膝を擦りむきながら、

私は、小学校の裏までたどり着いた。


祖母との約束で、もう先には行けない。

あぜ道はその先も伸びていたが、

そこからは、田んぼの黄緑色以外に、

茶畑や里芋の少し濃い緑色が見えていた。


私が、祖母との約束を守れたのは、

その緑色の違いもあったのだろう。

田んぼの黄緑色が好きだった。

田んぼのあぜ道が好きだった。


膝の傷がじくじくして、

少しひりひりし始めていた。

トンボもバッタもまだ捕まえては

いなかった。

汗をシャツで拭うと、爆音機が鳴った。


ああ、どこ行きなさるんか。

おののいていた私に、

田んぼから出てきた母屋の

おばさんが言った。


ちょうど、田んぼに水を引きに

来ていたらしく、

私が一人でいるのを見て、

声をかけてくれたのだった。


私は、泥だらけのシャツと半ズボンを

見られるのが恥ずかしくて、

もう帰るからと言い、

小学校の横の道を走り出した。

膝の傷に、痛みを感じていた。

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