2.再会
あれから、10年が経った。
僕は都内にある大学の最終学年を迎えていた。
就職活動に追われる日々。
まあ、それなりのレベルの学校だし、要領も良い方なので、なんとかなるだろうとは思っている。
今日も、大手メーカーの会社説明会をハシゴし、疲れ果てて家に帰ってきた。
隣の家の前を通るとき、家の前に見慣れない真っ赤な車が停まっていた。生憎車には、詳しくないので、車種名はわからないが、輸入車だと思う。
それを横目に見ながら玄関のドアをあける。
「おかえりぃー」
と聞きなれない声がリビングから聞こえてくる。
「誰だろう。まあ、いいか」
その声を無視して、階段に向かう。
その時、リビングのドアが開いた。
「こら、涼、ただいまは?」
その懐かしい言葉に振り替えると、赤茶色の髪のちょっと良い感じの女性がこっちを見ていた。なぜか懐かしさを感じた。
「あっ」
「おかえりぃ、涼」
「・・・ただいま。・・・って言うかお帰り、さくら」
「おっ、覚えてたー?そう、山下さくら、帰国しました」
と言って、さくらは敬礼をした。
僕は何だか照れ臭くなり、自分の部屋に行くことにした。
そして、ベッドの上で、似合わないリクルートスーツを脱ぎつつ、つぶやいた。
「忘れるわけないよ・・・」
部屋着に着替えて、足早にリビングに向かう。意識したわけではないが、なぜか早足になっていた。
リビングでは、母さんとさくらが談笑していた。
「晩御飯は?」
「あっ、さくらちゃんと、久しぶりに話して盛り上がって、忘れてた」
「おばさん、じゃあ私、なんかつくろっか?」
「帰国したばっかりで、疲れてるでしょ?出前でもとろうか?」
そんな母さんの言葉を遮るように僕は思わず
「さくらのハンバーグが食べたい」
と言ってしまった。
さくらと僕は、近所のスーパーで買い物をしていた。
「しっかし、涼もおおきくなったねぇ」
「親戚のオバちゃんか!」
「オムツを替えてあげてたあの頃が懐かしい」
「3つ違いだろ、そんなわけないし」
笑うさくら。
僕は183㎝になっていた。当然だけど、10年前は桜の方が大きかったけど、今はさくらより頭一つ分ぐらい大きかった。
僕の持つスーパーの買い物かごに手際よくハンバーグの材料を入れるさくら。
「で、どうなの?」
「何が?」
「涼も、22歳でしょ。彼女とか」
「そりゃあねぇ。こんなイケメンを世間の女性は、放っておきませんから」
「まあ、確かになかなか良い男の子になったね涼は」
さくらの言葉に少し照れる僕。
「で、さくらは?」
「そりゃあねぇ、こんな良い女を世間の男どもは、放っておきませんから」
そんな軽口をたたきながら、僕達は買い物を終え、家に向かった。
確かにさくらは、キレイな女性に成長していた。さっき久しぶりに会ったとき、思わずドキッとしてしまった。
そんなさくらと一緒に歩くことができて、ちょっと幸せな気分になっていた。