17.温泉にて②
「やっぱり、熱海に来たら、まずコレでしょ!」
僕たちは、駅前の足湯に3人並んで座っていた。
もちろん、靴下を脱いで、足を浸していた。
確かに足湯は気持ちいい。昼過ぎから、こんな贅沢もたまには、いいもんだと思う。
さくらも、しおりもご機嫌だ。
温泉を嫌いな人は、そういないと思うけど、特に女性は好きだから。
「じゃあ、この後は、定番のあの銅像を見に行くよ!」
「おおっ、学生服の男が和服の女にケリを入れてる、例のやつですね!」
そう、熱海と言えば定番の明治時代の有名な小説の一場面を再現した銅像だ。
「さくら、流石にあそこは、ちょっと遠いよ。この荷物だし。行くとしても、一旦、宿に荷物を置いてからでお願いしたい」
じっと、僕を見つめるさくら。懇願するようにさくらを見つめる僕。
「うーん。いきなり予定変更なのは、ちょっとアレだけど、ま、しょうがないか。じゃあ、とりあえずタクシーで、宿に行こうか」
そう言って、さくらはタクシー乗り場に向かった。
僕としおりも、さくらに続いた。
タクシーで15分ほど走ったところで、宿についた。
入り口にさくらの会社のロゴが入った看板がかかっている。
「どう?うちの会社、結構福利厚生しっかりしてるでしょ!」
さくらが、ドヤ顔で僕たちを見ている。
確かに、立派な建物だ。ホテルのような大規模ではないが、洒落た佇まいの建物だった。
自動ドアをくぐり、僕たちは保養所の中に入る。
さくらが、フロントで手続きをし、手に鍵を持って帰ってきた。
「さ、部屋に行こう」
廊下をしばらく歩き、僕たちの泊まる部屋の前に着いた。
さくらが、鍵を開け中に入ると、12畳ぐらいの和室が目に入った。部屋の奥には、板の間のスペースが少しあり、そこには、ソファーが外を向いておいてあった。
「さくら、これ一部屋だけ?」
「しょうがないでしょ。無理を言って予約入れてもらったんだし。男のクセに文句言わない!」
「そうだよ、涼ちゃん。3人なら広いぐらいだよ」
「しかしなあ。。。」
「あーっ涼、あんたしーちゃんと二人で、エッチな事しようと考えてたでしょう?」
「違うよ!」
慌てて否定する僕。
その様子を見て、しおりがあきれ顔になる。
「涼ちゃん、今日は3人なんだから。別に焦らなくても、そういうことは、いつでもできるしね。今日はさくらさんと3人で仲良くやりましょ」
ため息をつく僕。
そういう事じゃないんだけどな。昔ちょっと好きで、今もちょっと好きかも知れない女性と、彼女と3人で寝るという事に、なんとなく罪悪感のような感覚を覚えていた。
「というわけで、今日は家族水入らず、3人で寝ましょう。まずは、温泉に行くよ。しーちゃん、準備はOK?」
「はいーーー」
そう言うと、二人は出ていった。
まぁ、僕の考え過ぎかも知れないし、さくらは、お姉さんみたいなものだし、3人で寝るぐらい問題ないなと、自分に言い聞かせた。
「よし、じゃあ俺も温泉に行こう」
僕は部屋に用意されていたタオルと浴衣を手に温泉に向かった。
気がつけば、7月ですね。
まだ梅雨はあけず、蒸し暑い日が続いていますが、頑張って投稿します。
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