15.2人の朝
朝9時。
昨日、少し飲みすぎたせいか、まだ少し頭がボーッとしていた。
コーヒーでも飲んで、目を覚まそうと思い、階段を降りて、ダイニングに向かう。
キッチンでは、さくらが料理をしていた。
「おはよう。あれ、さくら今日、会社は?」
さくらが、振り向いた。
既に着替えも終わっていて、ナチュラルなメイクもされていた。
「涼、おはよう。今日は年休。しばらく採用面接で忙しかったから、昨日と今日はお休み」
「ふーん。社会人って、意外と休みが多いんだね」
「まあ、私ぐらいのできる社員は、メリハリをつけて、働く時は働き、遊ぶときは遊ぶ。いわゆるワークライフバランスってやつね」
「休んで、ただ飲んだくれてるだけじゃん。人生空しくならないの?」
「涼も大人になればわかるよ」
「もう、大人だし」
しばらくの沈黙。
「そうね。昨日、私にあんなことするし」
僕は自分の顔が熱くなるのを感じていた。
「何、覚えてるの?」
「そりゃね。涼のファーストキスいただいちゃいました!」
「ファーストキスなわけないし」
「そりゃそうか。しおりちゃんもいるしね」
「・・・」
僕のファーストキスは、しおりでもなかった。
子供のころ、友達とケンカして、落ち込む僕をさくらが、慰めてくれたことがあった。
その時、優しくキスをしてくれたことがあった。
「まあ、さくらは、覚えてないだろうけどね」
と僕はつぶやいた。
「何?」
「何でもないよ」
しばらくして、さくらがテーブルに、みそ汁と、ご飯と鮭の塩焼きを二人分並べた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。しじみの味噌汁。やっぱり、二日酔いにはこれが一番だね」
「でしょ?」
「いただきます」
そう言うと、僕とさくらは、朝食を食べ始めた。
朝食を食べ終え、僕は二人の食器をキッチンで洗っていた。
さくらは、ソファーに座って、コーヒーを飲みながら、朝のワイドショーを見ていた。
「ところで涼、ゴールデンウイークの予定はどうなってるの?しーちゃん、何も誘われてないって、言ってたけど」
僕は食器を洗いながら、答える。
「就活が、どうなるかわからなかったから、特に予定は入れてなかったんだよな」
「ふーん、そうなんだ」
テレビでは、温泉特集が流れている。
すると突然、さくらが立ち上がった。
「そうだ、温泉に行こう!」
「某鉄道会社のCMじゃあるまいし。何で、俺とさくらが二人で温泉に行くんだよ」
「違うわよ。しーちゃんも誘って3人で!楽しいよきっと」
「3人の方がもっと変でしょ」
「日本に帰ってきて、久々に温泉行きたかったんだよね。早速、しーちゃんに連絡しよ」
そういうと、僕の発言など全く気にせず、しおりにメッセージを送り始めた。
しばらくして、しおりから、賛成の返事が来たことは、言うまでもない。
今日は暑かった。
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