13.2人の酔っ払い
まあまあの酔っぱらい具合のさくらとしおり。
二人はカウンターに座っていた。
二人で買い物に行って、ディナーを食べて、ここにたどり着いたらしい。
「あなた達、いつの間にそんなに仲良くなったんだよ?」
二人は顔を見合わせる。
「出会ったときから」
「そう、お互いに一目惚れでした」
「しーちゃーーーん」
「さくらさーーーん」
そういって、抱き合う二人。
僕は、馬鹿馬鹿しくなって、シャンパンの残りを飲み干した。
「あーっ、涼一人だけ、上等なお酒飲んでる!」
「涼ちゃん、ずるーーーい」
この酔っぱらいどもめ。
「はいよ」
僕はしょうがなく、二人の前にシャンパンのボトルを置いた。
もちろん、さっき飲んだのとは違う、この店で一番安いものだ。いわゆるスパークリングワイン。
どうせ、この酔っぱらい共に味なんて、わからないしもったいない。
ただ、これを飲むと、翌朝に二日酔いになることは、確定なのだが。
そうとも知らず、二人は嬉しそうにそのスパークリングワインをグラスに注いでいる。
「涼、気が利くね。ありがと」
「さっすが、涼ちゃん。マイダーリン!」
よく考えると、この後、二人を送らなければならなくなるわけで、すぐに自分の行為に後悔したのだった。
二人は、相変わらず飲み、そして会話を続けている。
「しかし、しーちゃん、よく涼と付き合おうと思ったね」
「いや、さくらさん、これでも涼ちゃん、結構いい男なんですよ」
「へえ、私が知らない10年間で成長したんだね」
「私は、18歳からの涼ちゃんしか知らないんで。出会った時には既に、結構気の利くいい男でしたよ」
「ふーん。私の教育の賜物だね」
「さくらさん、ご指導ありがとうございました!」
「しーちゃん、今後私の事をお義姉さんと呼んでも良いよ」
「はい、お義姉さん!」
そういって、また二人で乾杯をしている。本当にどうしようもない二人だ。
でも、さくらとしおりが、仲良くしてくれることに、僕は何だか嬉しくなる。
そんな会話が延々と続いている間に、僕は店の閉店の準備をしていた。閉店作業が終えた頃、午前1時の閉店の時間を迎えていた。
「ふたりとも、そろそろ閉店。帰るぞ」
「えーっ、もう1杯だけいいでしょ、涼」
「涼ちゃーん」
「ダメ。帰ります」
と言って僕は、歩き始めた。
二人もしょうがなく、僕のあとにトボトボとついてくる。
もちろん、二人とも千鳥足だ。
そんな二人を呼んでおいたタクシーの後部座席に押し込み、僕もタクシーの助手席に乗り込んだ。
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