11.彼との再会
今日は、平日だけど、授業もなく夕方のアルバイトまでは、特に予定がなかった。
リビングで、ぼんやりとテレビをみていると、インターフォンがなった。宅急便でも来たのかと玄関の扉をあけると、そこに、しおりが立っていた。
「あれ、しおり、今日何か約束してたっけ?」
「ひっどーい涼、約束忘れちゃったの?」
色々と考えてみたけど、しおりとの約束を思い出せない。
スマホのスケジュールを見てみても、特に予定は入ってなかった。
そんな戸惑う僕の顔を見ながら、何故かしおりは、ニヤニヤとしていた。
「しーちゃん、お待たせ!」
僕の後ろから、さくらが、声を弾ませてやってきた。
「さくらさん、お迎えに来ましたよ」
「ありがとう」
僕は状況が全く理解できなかった。
「じゃあ、涼行ってくるね」
「じゃあね、涼ちゃん。行ってきます」
「行ってらっしゃい、って、どういうこと?」
「まあ、たまには女同士で出かけても、いいでしょ」
さくらは、そう言うとウィンクをして、しおりと手をつないで出ていった。
やっぱり女の人の考えることって、よくわからないと思った。
夜になり、アルバイト先のバーで、開店準備のため、店内を掃除していた。
今日は杉ちゃんとは別のアルバイトのマサトがトイレ掃除をしていた。
バーなので、ピークは午後9時以降になることが多かった。この日もいつもどおり、午後6時に開店したけど、お客さんはいつも通り、まだまばらだった。
午後8時を過ぎたところで、一人の男性がやってきた。一人での来店であり、カウンターに座った。
メニューをしばらく眺めたあと、バドワイザーをオーダーした。
僕は冷蔵庫から、バドワイザーの瓶を取り出し、彼の前のコースターに置いた。
彼は、バドワイザーの栓を回して開けながら、僕の旨の名札を一瞥して言った。
「涼くん?かな」
「はい、涼です」
「アメリカに長期間赴任していたので、日本のビールより、これが好きになってね」
「バドは軽くて、物足りないって感じるんですが、飲み続けると、病みつきになるんですよね」
「そうなんだよ」
といって、彼は微笑んだ。中々、話しやすくて良いお客さんだと思った。スーツをしっかりと着こなしており、顔もまあ男前。
また来てもらいたい、と思えるお客さんだ。
「良かったら、涼君もバド飲む?一杯奢るよ」
「ありがとうございます。ではいただきます」
バーでさりげなく、店員にお酒を勧める。こういうことができる大人って、良いなと思いながら、冷蔵庫から、バドを1本とりだし、開栓した。
「いただきます」
「どうぞ」
僕は瓶に口をつけ、ビールを飲んだ。
「ところで、先日は、お騒がせして、申し訳なかった」
「えっ?」
「先日、ツレの女性と寄せてもらった時、彼女があそこのボックスで騒いでしまって。申し訳ない」
「・・・」
彼は、さくらの不倫相手の男だった。
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