第64話 紛争の気配
街に着いた俺達はさっそく行動を開始した。
「よし、手分けして情報収集だ」
俺は御花畑と小前田二人と分かれ独自に情報収集する。
まずは『アミオンの目』で領主を偵察しよう。
若い領主は精力的に政務をこなしていた。
側近にも怪しい者はいない。
この街は違ったのかな。
二人の帰りを待つ事にした。
「分かったわよ。ここの領主は軍備を増強しているわ。怪しいと言えばその一点だけよ」
御花畑が報告。
「私も聞いたよ。農村から出稼ぎに来た青年を兵士に勧誘しているんだって」
小前田も続いて言った。
魔物の被害も増えているし軍備の増強は不自然ではないんだよな。
でもなんとなく気になる。
その方面に的をしぼって観察してみるか。
兵士がたむろしている酒場にフードを被った姿でくり出した。
酒を頼まない俺達は奇異な目で見られたが、食事だけの客もたまにいるから邪険にはされなかった。
兵士のグループが次々にやってくる。
兵士達の会話には不自然なものは無い。
たが何か違和感がある。
兵士の一人がいやに非人間的なのだ。
そして気づいた機械音声みたいなんだと。
俺は『真実印』をそっと組む。
その兵士はなんと魔物だった。
のっぺらぼうの顔はドッペルゲンガーだったと思う。
二人に合図してその魔物の兵士の後をつける。
兵士は領主使用人の宿舎に入って入った。
俺は『アミオンの目』で中を覗く。
中にはメイド姿の女が居て兵士に化けた魔物はその女に何やら報告をしている様に見える。
「ねぇ、ぼーっとしてどうしたの。中に踏み込まなくともいいの」
「スキルでマーカーみたいな物を付けたからしばらく泳がす」
「へぇ、何時の間に。なんか怪しいんだけど」
「波久礼君、素直に白状した方が良いと思う」
「まぁなんだ。秘密だ」
「それでこれからどうするの」
「マーカーが付いているとカメラの役割をするからそれで見張る」
「そのマーカーってのはどんな形」
「それも秘密だ」
「あんた私達にもそのマーカーを付けてないでしょうね」
御花畑と小前田は盛んに自分の背中を見ようと身をよじる。
これはスキルで千里眼を獲得したなんて言ったら怒られそうだな。
「つけてないったら、ない」
俺は手を振って否定した。
「まあ良いでしょう。おかしな事したら半殺しの上で絶交よ」
「覚えとくよ」
怪しいメイドの女を『アミオンの目』で見張る。
女は領主の担当のメイドのようだ。
だが、領主のそばにいるだけで仕事はしていない。
領主がたまに仕事を言いつける事があっても、他のメイドに命令して済ましてしまう。
こいつは黒だな。
メイドの女が何回か兵士に用事を告げる場面がある。
俺は『アミオンの目』で兵士の尾行を開始した。
兵士は街の外に出ると街道の途中で馬車の中身をアイテム鞄に受け取り、街に戻った。
馬車の中身は驚く事に全て武器。
兵士はその武器を武器庫の武器と取替え、通常の勤務に戻った。
武器には例の黒い水晶が嵌っているじゃないか。
そういう事か。
兵士を知らず知らずのうちに洗脳しているな。
問題は兵士を使って何をやらかすかだ。
数日経った時にその謎が解けた。
立て札が立ち、そこには『税を一割にする。この街は圧政に苦しむ他の街を救う為に軍を起こす』とある。
なるほど表向きは正義を騙るのだな。
魔族の狙いは戦乱か。
さてどうやって阻止しようか。
領主の目を覚まさせるのに踏み込むと洗脳された兵士が自爆覚悟で立ちふさがるって寸法だろう。
まずは洗脳を解く事だな。




