第60話 断酒
「まずはこれを飲んでもらおう」
俺は『女神の涙』とエリクサーを取り出した。
「毒か。今なら妻の元に旅立っても良い」
そう言ってコップの注がれた二つを飲む。
これで状態異常と内臓とかに疾患があっても癒されるはずだ。
「悲観しているところ悪いがもう酒を一滴も飲まないと誓約書を書いてくれ」
俺がそう言うと領主は無言でペンを走らせた。
俺は誓約書を片手に。
「カタログスペック100%」
領主は光に包まれた。
酒にまた溺れるなんてなって欲しくないからこれで良いだろう。
「領主様この者達を信用してはいけません」
領主夫人の兄で家臣の男が押しかけて来て言った。
「こいつ魔物が化けてる」
和銅さんが指を差して言った。
「ふん、ファイヤーランス」
御花畑の魔法が炸裂。
家臣に化けていた魔物は魔石になった。
「魔物が化けていたとは。俺の妻は魔物に殺されたのか」
「そういうことになるな」
「俺は決めたぞ軍を起こして魔王を討伐する」
「領民の迷惑にならない範囲なら良いだろう」
「そのように取り計ろう」
そして、城の中の魔物が化けていた者は全て退治して城を後にした。
元居た街に帰ると桜沢さんに呼び出された。
「ちょっと困った事になったわ」
「へぇ、どんな」
「隣街の領主を改心させたのが鮮やか過ぎたのよ」
「妬みを買ったって事」
「そうよ、暗殺も思いのままって事らしいわ」
「俺達は暗殺なんてしないのにな」
「噂では野上達は暗殺も請け負っていると聞いたわ」
「来訪者の品格が問われている訳か。野上達に自重しろと言っても聞きそうにないな」
「来訪者は早く魔王退治に専念しろなんて声が上がったわ」
「急かされるのも嫌だな」
「危機感を抱いた貴族がこの街の領主に圧力を掛けたようなの。どうしたら良いと思う」
「俺の目的は今も変わらない。クラスメイト全員の帰還だ」
「帰還のめどは立っているの」
「魔王を討伐すれば俺のスキルで帰れるはずだ」
「そういう事なら、魔王討伐一択よね」
「そうだな」
「私達も協力するわ。みんな帰りたいはずだもの」
「じゃあ、旅に出るんだな。俺も付いて行くよ」
「その方向でみんなを説得してみる」
俺は気になったので野上の様子を覗き見る事にした。
野上は今宿屋で女性と二人きりだ。
おっと18禁の臭いがするが、構わず見続ける。
女性が服を脱ぐ。
野上も服を脱いだら見るのを止めようと思った。
そうしたら、野上が突然、聖剣を抜いて女性に切りかかる。
気が狂ったのか。
女性は黒い煙になって魔石を残した。
おお、魔物だったのね。
野上の奴は相変わらず勘が鋭いな。
魔王が魔物を差し向けたって事だよな。
和銅さんに警告しとかないとな。
魔王を覗く事にした。
二本のねじくれた角に赤黒い肌をして玉座にふんぞり返って座る魔物が見える。
あれが魔王か。
手下に次々に命令を下している。
音が聞こえないのが残念だな。
だが、魔王の姿を見れたのが収穫だ。
後で城の見取り図とか道順とかを記録しておこう。
出発の日になった。
桜沢さんは今まで世話になったお礼だと領主に言われて馬車四台をもらったようだ。
俺の馬車を加えて馬車五台の総勢二十一人のキャラバンは一路、魔王城を目指す。




