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第6話 エリクサー量産

 俺はスキルを掛けた鋏で薬草を採りつつ、何とか遣り繰りして渡り歩く事、村を五つ。

 遂に次の目的地の大きな街が見えてきた。


 街に入り、大通りの露店を冷やかしながら歩く。

 店の前を通り過ぎた時、何やら聞き覚えのある声が。


「頼みます。これが売れないと、食事もままならないんです」


 店を覗くとクラスメイトの小前田(おまえだ)良美(よしみ)が土下座していた。


「奇遇だな小前田(おまえだ)

「お金貸して。えっと、波巣流(はっする)君だっけ。」

「会うなり、出てきた言葉が借金かよ。俺の名前は波久礼(はぐれ)司郎(しろう)だ」

「そうだったかな、えへへ。三日も何も食べてないの。じゅる」


 涎を垂らしながら、俺ににじり寄る小前田。

 俺を肉の丸焼きかなんかと勘違いしているのに違いない。


「奢ってやるから涎を拭け」


 飯を食いながら小前田に話を聞いた。

 生徒会長の野上(のがみ)勇清(ゆうせい)が勇者と聖騎士のダブルジョブで、みんなの指揮を執ってるらしい。

 野郎が俺の職業を奪った奴か。

 きっと俺の事を城の兵士に知らないなんて言ったのもあいつに違いない。

 どうしてくれよう。

 小前田に聞いた話では野郎はそうとう遊んでいるらしい。

 酒池肉林だそうだ。

 そうだ、勇者の物語は多い。

 その中で魔物とストイックに戦い続けた勇者の物語をカタログスペック100%してやろう。


 小前田は職業が錬金術士で女の子のパーティの回復役を任されたんだが、大枚叩いて買った最初のレシピ本が曲者だったようだ。

 見せてもらったら神の如き品が作れると書いてあるけど、材料はどこにでもある普通の物。

 ここに来るまでギルドで薬草採取もやったから、どんな物かは分かる。


 小前田は頑張ってレシピの通りに物を作ったが品質が低くてパーティのお荷物になっていたらしい。


「俺がなんとかしてやるよ」

「騙して、奴隷にしたりしないわよね」

「しないって」

「野上たら酷いんだよ。レシピ探してきたのも野上なのに。夜起きたら、私を奴隷に売ると野上達が相談してたので逃げたの」

「レシピ本と売れないポーションを出してみろ」


 ぶつくさと野上に対して呪詛の言葉を紡ぎながら小前田はテーブルの上にそれらを並べた。


「カタログスペック100%。鑑定してみろ」


 光がポーションを包みポーションの色が変わる。


「鑑定。こ、こ、これ、え、え、エリクサーじゃない。やばいよ、襲われちゃうよ」

「エリクサーを金に換えて、この街さっさとトンズラするぞ」




 街のギルドに入る。


「これ、売りたいんだけど」


 俺はエリクサー十本を受付嬢前のカウンターの上に出した。


「鑑定したいのですが、よろしいでしょうか」

「よろしく」


 しばらくして血相を変えて受付嬢が戻ってきた。


「ギルド長がお呼びです」


 俺は念の為にギルド職員規約をいつでも出せるようにしてから、受付嬢の後について行った。


「お前さん何者だ」


 会うなりギルド長は言った。


「来訪者です」


「来訪者は遊んでいて、形ばかりの魔物討伐しかしてないって聞いたが」

「俺達はまともです。真剣に勤労してます」

「まあ、いい。エリクサーはまだ作れるのか」


 その質問は想定済みだ。


「材料が貴重なんで無理だ」


「そうだよな。現物が手に入っただけましか。一本金貨千枚で引き取ろう」


 エリクサーを売ってからが酷かった。

 ギルドからの強制依頼はましな方で、貴族からの横槍が凄まじい。

 小前田の来訪者だと証明する国から貰った短剣を出して事を収めたが、不味いのは俺でも分かる。


 幾つか高い買い物をして、余ったお金は路銀以外を孤児院の建て直しに寄付。

 逃げるように次の街へ旅立った。

 小前田と相談して俺達が使う分の他にはエリクサーはもう作らないと決めた。


 ちなみに小前田と俺はパーティを組むことになったけど、どうなる事やら。


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