第34話 必殺の一撃
巨大な扉はボス部屋の扉だったようだ。
扉に触ると音も無く開き、中には三階建ての建物ほどの巨人が仁王立ちしていた。
「二人共気を引き締めていくぞ」
「いよいよ私の出番ね。魔法を思う存分撃てるのね」
「爆弾なら任せて」
「おでは十魔将のティノタリウスぅ。名乗れぇ」
「名も無き勇者だ」
「獄炎の賢者、ミイコ」
「ポーションの聖女、ヨシミ」
「初手はゆずってやるぅ。かかってこいぃ」
「行くわよファイヤートルネード」
御花畑が魔法を放つが効いている感じが微塵もしない。
「ぬるいぃ」
「えいっ」
「とりゃ」
俺と小前田は爆弾を投げる。
爆弾は巨人の胴体に当たり、ボンボンと爆発音を響かせる。
しかし、巨人は微動だにしない。
「今度はこちらの番ん」
巨人は大きな手を組んでこちらを叩き潰そうと振りかぶった。
「不味い、二人とも逃げろ」
俺は煙幕を床に叩き付け、後方に逃げた。
そして、姿隠しのハチマキを装備。
ドスンと巨人の手が床を叩き揺れが俺達を襲った。
「二人とも巨人の気を引いてくれ。俺に考えがある」
「ファイヤーランスを顔面に叩きつけてやるわ」
「私は弁慶の泣き所に爆弾を投げるよ」
俺は姿を隠し巨人の足元に近づいた。
「一人いないぃ。男のくせに逃げるとは情けないぃ」
二人が攻撃を開始する。
御花畑のファイヤーランスは顔面に当たり火の粉を散らした。
「うっとおしいぃ」
巨人は手で顔面を庇う。
そこへ小前田の爆弾が弁慶の泣き所にヒット。
「うがぁ、ちくっときたぞぉ」
どれだけ鈍感なのかこいつ。
俺はアイテム鞄から針を取り出した。
こいつは『ウエスラテの針』と言って『イニシ幻想記』に出てくる暗器だ。
八回に一回の確率で必殺の一撃を繰り出す。
物語では伝説の魔物が勇者を暗殺する為に用意した。
材料は蜂の毒液と針だ。
それにスキルを掛けて作った。
俺はその針を踵に突き刺した。
針はぐにゃりと折れ曲がった。
頭上では爆発音が絶え間なく聞こえる。
針は三十本ほど用意してあるので、俺は何度も針を突き刺す。
十三度目で針は踵に突き刺さった。
「がぁぁぁぁぁ……」
巨人は天を仰いでから崩れるように倒れ黒い煙になった。
「ふぅ、苦戦したな」
「攻撃受けなくて、よかったね」
「そうだな即死するとエリクサーも役に立たない」
「ダンジョンコアがあるのよね」
「さっさと回収しますか。5階層に残してきた冒険者も気になるし」
俺達はダンジョンコアを回収し、5階層に急いだ。
7階層の迷路は機能を停止しており、他の階層の魔物の数も異様に少なかった。
リポップの機能が失われたらしい。
5階層では冒険者が石になった大蛇を破壊しようと短剣でコツコツとやっていた。
反射印は役に立ったらしい。
「無事でよかった。石を一撃で壊せるハンマーを貸してやるから、魔物を倒すといい」
「何から何まで世話になる」
大蛇の石像を全て倒し、地上目指して俺達は進んだ。
「へぇ、十魔将が居たんですか。退治するとはさすが勇者様だ」
「名も無き勇者だから、そこは間違えないように」
「俺も職業を勇者に変えたいな」
「えっ、職業は変えられるのか」
「職業の神殿で金貨千枚を収めれば変えられるらしい」
「良い事を聞いたな」
「そんな、勇者を辞められるので」
「実は俺ジョブレスって職業なんだ。勇者は二つ名だよ」
「そうですか、希望の職につけると良いですね」
次の目的地が決まった。
職業の神殿だ。
無職とはおさらばしてやる。
俺は街でダンジョンコアを売り払い、薬師を寒村に派遣するための資金として寄付した。
ダンジョンはまだ沢山ある。
だけど、俺達が出くわしたほどの凶悪なのは無いみたいだから放って置いて良いか。
ダンジョン攻略は冒険者に任せ街を後にした。




