第14話 ことなかれ貴族を改善
大きな河のほとりの街で俺達は足止めを喰らっていた。
情報を集めるために行った川原で揉めている人達が。
「親父無理だって。止めといた方がいい」
「そうだよ。あの怪魚に何隻船を沈められたか」
「あいつは一度片目を銛で突いてやった事がある。もう一度出来るはずだ」
老人とその息子と思われる漁師がどなりあっていた。
「ちょっと失礼」
「なんだいあんた」
「もしかして、河が渡れないのはその怪魚のせいなのか」
「そうだな、あいつがどっかに、行っちまうまでは舟は出せん」
「冒険者に依頼は出さないのか」
「皆で金を出し合って依頼したよ」
「それで」
「退治に出かけた冒険者は全て怪魚の腹の中さ。依頼料が安いのもあって今は受け手は誰もいないよ」
「それなら、領主は何もしないのか」
「領主様は悪い人では無いのだけど、ことなかれ主義の塊みたいな感じさ」
うーん、もう少し色んな人に話をきいたら、介入してみるか。
街のギルド主張所で怪魚の依頼を見る。
なんと金貨五枚。
たしかに命の値段にしてはとっても安い。
「あんた、凶悪犯のハグレじゃないのか」
俺が依頼を見ていたら地元の住人らしき人が話し掛けてきた。
「失敬な、俺はシロウ。ほらギルドカードもある。よく間違われるんだ」
「悪かったな。その依頼は止めておいた方が良い。旅館組合の人間に恨まれるよ」
「怪魚が退治されると、河が通れるようになって旅館が困るのか」
「大きな声じゃ言えないが、毎年この時期をあてにして旅館を運営していると言ってたよ」
「旅館が困らない様にすればどうかな」
「代官と旅館組合長が妨害してくるに決まってる」
領主サイドが依頼料を出さないので安いのか。
ははーん、さては私腹を肥やしているな。
そんな臭いがぷんぷんする。
しょうがない一肌脱ぐか。
街で買った『ダウジング入門』なる書物を左手に、右手に重りに糸をつけた物を持ちスキルを掛ける。
宿屋とくれば温泉だ。
温泉が出れば怪魚がいなくともやっていけるだろう。
重りが指し示す地点を幾つか見つけ、その中で宿屋街に近い所に三人で集まった。
「御花畑、頼む」
「いくわよ。アースコントロール」
地面に穴が空きしばらくしたら、熱湯が轟音と共に吹き出た。
近所の住民や宿の客やらが集まり凄い騒ぎに。
「ええい、退かんか。何の騒ぎだ。代官に断りなくこのような騒ぎを起こすとは」
「お代官様ですか。神から与えられたスキルがここを掘れと言うので掘ったのです」
俺は揉み手しながなら太った代官に話し掛けた。
「そうか、神託のスキルでも持っているのか」
「違うのですが、似た様な事は出来ると思います」
「これの所有権はどうするつもりか」
「もちろん、お代官様に献上いたします」
「そうか、殊勝な心がけだな」
「それでお願いがあって、領主様に目通りしたいのです」
「それぐらいなら容易い事だ」
俺は紹介状を持って領主館を訪ねた。
領主は冴えない中年の男で俺を不思議な物を見るような目で見ている。
「何か用でもあるのか。実務は代官に任せておる。そっちに話を持って行くが良い」
「お手を拝借。カタログスペック100%」
領主が光に包まれ、スキルが発動する。
「貴様、何をする」
「河が渡れなくて困っているんだよ。『貴族規範』という本に書いてある事を破れなくした」
「『貴族規範』とは理想というたわ言が書いてあるあれか」
「そうだよ。代官が職務怠慢もしくは私腹を肥やしているかもしれないからやらせて貰った」
「くそう、代官の不正を突き止めなければ……。なんでこんな欲求が」
「領主様、頑張って。じゃあ俺はお暇するから」
これで事態は動くだろう。




