第12話 クズ勇者をストイック勇者に
次はいよいよ本命の野上だ。
野上は完全武装で宿の裏手にやって来た。
ばれてるのか、それとも用心深いのか。
「波久礼居るんだろ。正々堂々勝負しようじゃないか」
やっぱり、ばれたか。
「出てこないなら。クラスメイトが一人犠牲になるぞ」
三人の他に部下がいたのか。
いや、はったりかもしれない。
「お前、桜沢さんと仲が良かったよな。彼女がどうなっても構わないのか」
別に彼女だったとか気があったとかないんだけど、朝に挨拶を返してくれる貴重な女子。
野上はなんて卑劣な奴なんだ。
しょうがない、いざ勝負。
石を投げ気をそらす作戦を実行。
その隙にカタログスペック100%を掛けようと手を伸ばすがつかまれた。
俺はニヤリと笑って言った。
「触ったな。カタログスペック100%」
左手には『狂勇者物語』を持っている。
野上は光に包まれ、スキルに掛かった。
「何をした。湧き上がる魔物への憎悪は何だ」
「魔物退治を生き甲斐にした勇者にしてやった。励むんだな」
「くそう、覚えてろ」
そう言うと野上は街の外に向かって駆け出して行った。
桜沢さんを助けないと。
宿に入り三人で手分けして桜沢さんを探す。
どこだ、どこにいるんだ。
こういう時こそカタログスペック100%だ。
探し物といえば。
靴を片方脱いで持ち、『よく当たる占い』をもう一方の片手に持った。
「カタログスペック100%」
靴にスキルが掛かる。
桜沢さんの居所を教えてと念じて靴を投げた。
靴先が外を指す。
宿の外に居るのか。
外に出てもう一回、靴を投げる。
靴先は物置を指していた。
物置には一人見張りがついている。
俺には死角から近づく技があるから問題はない
「カタログスペック100%」
ギルド規約を持ってスキルを掛けた。
「お前は波久礼。今までどこにいたんだ」
「名前の通りはぐれてた」
「ここは通さないぞ」
「はい、はい、そういうのはいいから」
「ヘビーインパクト。何故スキルが発動しないんだ」
「眠ってろ」
俺は小前田製の睡眠薬を飲ませてやった。
見張りは崩れ落ち眠る。
物置を開けると縛られた桜沢さんがコロンと出てきた。
「むー、むー」
俺は猿轡を外してやった。
「野上の奴どこ行った。ぼっこぼこにしてやる」
「桜沢お前、武闘派だったんだな」
「早く縄解いてよ」
急いで縄を解く。
「今回の事を女子のみんなに話して野上とは別行動とったらどう」
「まずは一発殴らないと」
冷静に話を聞いてくれる雰囲気じゃない。
これだけ血の気が多ければ野上にもう負けないだろう。
それに傷一つないのだから、捕まったのも何か罠に掛けられたのかも。
「じゃ俺、行くよ」
小前田がクラスメイトの男子とやり取りして分かったのだが、野上達は大人しくなった。
野上に惚れている女子以外で野上をぼっこぼこにしたらしい。
女子は大半が別行動になった。
野上達が俺達や異世界人に迷惑を掛けて良いって法はない。
それに、俺は異世界から元の世界へ早く戻りたいのだから。




