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第1話 変なじいさんと冒険の始まり

 何で朝っぱらから、スクーター押さなきゃならないんだ。

 こうなったのも全てあのカタログスペックのせいに違いない。

 リッター70キロって書いてあったじゃねえか。

 走行メーターは60キロしか走ってねえぞ。


 親戚の庭にバイクをへとへとになりながら入れた。

 あと少し歩けば学校だ。

 下駄箱まで後わずかというところで靴紐が切れる。


 靴を履き替え、階段を駆け上がった。

 教室のドアを元気に開け、中に入る。




 突然光ったと思ったら白い空間に飛ばされ目の前に(じじい)が立っていた。


「おかしいのう、全員送ったはずじゃ。その証拠に渡す職業がもうないからの」

「おい、(じじい)状況を説明しろ」


「今ちょっと調べてみるわい」


 爺は空中に窓を出すと、何やら触り始めた。


「ふむふむ、職業のくじの時に二ついっぺんに引いた者がおるようじゃ」

「そいつは許せないな」

「その者には天罰が降りるじゃろ。そういう未来が見えた」


「俺はどうなる」

「今回の事は今、流行りの魔王討伐で異世界召喚という奴じゃ。何も与えずに送る訳にはいかんぞ」


「余り物とかそういうのは無いのかよ」

「無いのう。困った事に職業が無いとスキルが覚えられないのじゃ。スキルが無いと子供と同じじゃ。そうじゃ、特例でスキルを一つ与えてしんぜよう」

「何でも良いのか?」

「無茶は駄目だぞ」


 この状況を作り出したカタログスペックが憎い。

 貯金をはたいて親に借金までして買ったスクーターだったんだぜ。


「決めた。性能を書いた紙を持ってスキルを使えば、その通りの性能になるスキルをくれ」

「嘘を嫌う心が見えたのじゃ。感心、感心。ほれ」


 俺の中に光の玉が入っていった。


「じゃあな、(じい)さん。ありがとな」

「さらばじゃ」




 俺は巨大な魔法陣の上に立っていて、石畳からは冷気が伝わってくるようだ。


 目の前には祭壇があって、人の頭程の水晶玉が置いてあった。

 掃除をしている神官が一人いて、突然振り返りこちらと目が合う。


「あれ、来訪者様が残っていらっしゃったのですか」

「俺は今来たばっかりだが」


「そうですか。では僭越ながら、私が鑑定の儀を執り行わせて頂きます。水晶に触れて下さい」


 俺は魔法陣から出て鑑定水晶に触ると、空中に文字が浮かび上がった。


 名前は波久礼(はぐれ)司郎(しろう)とある。

 職業は空欄だ。

 スキルはカタログスペック100%と異世界の文字で表示。

 異世界の文字も読めるんだなと感心した。


「む、む、無職。持っているスキルが意味分からない。私が怒られてしまう」

「気にすんなって。貰う物、貰ったら出ていくからさ」




 俺は地下から地上に出て、小部屋に通され待つように言われた。

 そして、偉そうな太った男が鎧を着た兵士三人を引きつれ言い放つ。


「偽物の来訪者というのは君か。今日はめでたい日だ。囚人にも恩赦が与えられた。運が良かったな」

「俺は来訪者なんだって。先に来た来訪者に聞いて貰ったら分かる」


「ハグレなんて知らないそうだ。おい、この無職の詐欺師を城からつまみ出せ」


 両脇から兵士達に腕をつかまれ、部屋から引きずる様に出される。

 宇宙人の死体じゃないんだぞ。


「自分で歩けるって」

「離したら逃げる気だろう。この、詐欺野郎」


 腕を持っているのと反対側の手で殴られた。

 何も殴らなくても良いだろう。


 城の門を強制的にくぐらされ、蹴飛ばされた。

 痛えな、この野郎。




「これに懲りたらもう来るんじゃないぞ」


 頼まれたって二度と来るもんか。


 金は貰えなかったが、なんとかなるだろう。

 目の前には大きな城下町が見える。

 スクーター買う為にバイトは散々やったから、仕事が何か見つかるはず。


 俺は石畳の道を足取り軽く真っ直ぐに歩き始めた。


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