二十一話
席についてすぐに女性冒険者が切り出す。
「まずは自己紹介だよね。私はヒルダ・ディレイム。一応、討伐隊の隊長みたいな感じかな。まあもう敵はいないんだけどね。ヒルダって呼んでよ......で隣のサングラスかけてる男がアグニ」
「よろしく」
「でこっちの赤髪がカイム・ヴァルハーゲンね」
カイムさんは軽く頭を下げた。自分の番だ。
「ロアです。こっちは妹のレイです」
「よろしくお願いします」
レイに緊張している様子はない。
「呼んだ理由なんだけど二人が変異オーガ討伐に貢献したって話だけど、他の冒険者たちが分からなかったこととか、普通のオーガとの違いとかが聞きたいんだ」
一瞬思考し、直結に述べる。
「どの個体も固有の能力を持っていたと思います。......僕たちは街に来る前にも一体戦ったんですけどそいつは叫ぶと周りの動きを止める能力でした」
「固有の能力。......他の個体の能力も教えて」
「一体は能力を使う前に倒してしまったので分からないですけど一体は斬撃でした。腕を振るとその角度で斬撃が出ました」
ヒルダさんは顎に手を当てて考えるそぶりを見せる。
「固有の能力か。......レイちゃんの倒したオーガはどんな能力だったの」
「一体は多分城壁を壊した砲撃みたいなのを出す奴でもう一体は体が硬くなる能力だと思うよ」
「やっぱり一番の違いはその固有の能力か」
アグニさんが口を挟む。
「問題はその変異オーガがどうしてライエルンを襲ったのかだろ」
そっか。魔物は人間の街を襲わない。何で襲ってきたんだ?
「そうなんだよね。とにかく今、鑑定してもらってるんだけど......あっちょうど来たよ」
扉が開くと一人の女性が角を持って入ってきた。
「どうだった」
テーブルの上に角を置いて女性は口を開いた。
「オーガの鑑定をしたところ、黒い角を持ったオーガはもとは通常のオーガで何者かの魔法がかけられていることが分かりました。恐らく魔法がかかった個体は角が変色していると思われます」
今まで黙っていたカイムさんが質問する。
「魔法の効果は」
「恐らく使役系の魔法かと」
「誰かがオーガを操って街を襲わせた」
その誰かのせいで冒険者は犠牲になった。泣き叫ぶ仲間の声がフラッシュバックし、怒りがこみ上げる。思わず拳に力が入る。
「そうなるね」
カイムさんに肯定され、独り言が漏れていたことに気づく。ガリュームさんがテーブルを叩くと、テーブルがドンという音と共に揺れた。ガリュームさんの顔には明確な怒りの色が写っていた。
ガリュームさんはすぐに落ち着きを取り戻すと落ち着いた声音でいう。
「申し訳ない。少し殺気立ってしまった」
ヒルダさんが手を叩いて事件をまとめた。
「要するに何者かがオーガを操って街を襲わせたってことだ」
アグニさんがそこに補足する。
「そしてその誰かさんは操ったオーガに何らかの能力を付与することができる」
「でもどうして街を襲ったんだ」
カイムさんは首をかしげる。
「それは分からない。でもこの話は本部にも通しておく」
「お願いします」
「この街自体に意味があったのかそれとも襲撃そのものに意味があったのか」
カイムさんはそこがずっと気になっているらしい。やがてカイムさんはガリュームさんの方を向いて口を開いた。
「率直にいう。僕らはここに長居することは出来ない」
それはもしまたオーガが襲ってきても助けることは出来ないってことじゃないか。ガリュームさんはそれでも平然としている。
「分かっています」
「この事件に首謀者がいるのは間違いない。......ここにはどれくらいいれる」
「一週間くらいかな」
「ガリュームさん、この街がかかえている問題で武力が役立つものとかないかな」
「え。......盗賊団とか」
「それだ。その盗賊団の特徴は」
話がどんどん進んでいく。
ガリュームさん曰く、ここ最近ライエルンに現れて盗みを働いているらしく根城も不明。
説明を聞いて、すぐにアグニさんが言う。
「でも盗賊団なんて冒険者がすぐに捕まえるんじゃないか」
「……その盗賊団は消えるんです」
「消えるって」
瞬間、女性の叫び声が耳に響く。
カイムさんは気付いた時にはドアを開けて外に出て行ってしまう。
あとを追うように外に出て声のした方に走る。
大通りに出た時にはすでに一人の男が炎に捕らわれていた。




