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十二話

 目を覚ますと見慣れない天井が出迎えた。とは言っても最近は見慣れた天井なんてなかったけど。


 隣で寝ているレイを見て少しホッとする。それだけ危険と隣り合わせだった。


 結局、ご飯もご馳走になってしまった。屋根のある眠りに安心してそのままソファで寝てたんだよな。


周りを見るがガイさんはどこかに行ってしまったらしい。ありがとうくらい言いたかったんだけど。


 暇になったので部屋を見て回る。当たり前だが店頭とは違い、普通の部屋だ。写真立てが目に留まり、近くによる。


 武装した六人の男女が映った写真は写真が苦手なのか不機嫌そうな男もいれば堂々と中心に立ち、こちらを見据える男も、右端で弓を持って豪快に笑う益荒男もいる。昨日聞いた話から弓を持った大男がガイさんだとすぐに分かった。要約すると弓一つで数多の敵を打ち倒したイケメンだったか。正直あまり信じてはいなかったが確かにカッコいい。というか全体的に写っている人達のルックスのレベルが高い。


 目線を右にズラすと左の写真より貫禄の増したガイさんが手を振り払おうとする女の子の頭に無理矢理手を置いて豪快に笑い、その横で綺麗な女性が優しい笑みを浮かべている。この女の子がガイさんが自慢だと言っていた娘だろう。


 他にも数枚写真があったが、どの写真でもガイさんは豪快に笑っていた。


「......何......見てるの」


 寝ぼけているのか声がふわふわしているレイは隣に来た。


「この人がガイさんだよね」


 集合写真の中の一人を指差す。


「多分。ていうか絶対そうだね」


「何かお礼をしていきたいけど本当に何もないな」


 そう。今の僕達には角しかない。


 角の入った袋を持って、ガイさんの家を出た。



 僕は全く分からなかったがガイさん曰く今この街は活気がないらしい。


理由は明白で変異オーガによってC級冒険者五名が死亡し、討伐隊として組まれたB級冒険者も二十三人のうち、七人が返り討ちにあい帰らぬ人となったことだ。A級のいないこの街でB級とは最も頼りになる存在だった。それが変異オーガたかが三体に軽く屠られ帰ってきたのだ。街の落胆も頷ける。


そして、出没地域が街周辺である以上、冒険者たちは自由に狩りも出来ない。現在、帝都からA級を含む討伐隊が向かっているがそれはまだ一昨日のことで帝都からライエルンまでは最低でも三日はかかるとのことだから少なくとも明日まで冒険者は鳴りを潜めているだろう。


 集会所について早速フローラさんに声をかけた。ガイさんの言った通り、集会所はガラガラで職員も暇を持て余しているようだ。


「あの、売りたい素材があるんですけど」


「えっ。こんな時に街の外に出たんですか。危険なので絶対やめてください」


 予想外に心配されたので驚いたが僕は昨日、街の外からやってきたことと変異オーガを討伐したことを話した。街の外からやってきたのは世間知らずなところもあったから大して疑われなかったが、変異オーガの話に関しては明らかに疑っている。


 僕は袋から二つの黒く染まった角をテーブルに置いた。


「まさか本当に」


 僕らを座らせてカウンターの奥の部屋に入ってしまう。すぐに別の職員を引っ張って角を見せた。


 眼鏡をかけたいかにも真面目そうな女性職員は大きな角に右手を翳すと唱えた。


「鑑定」


 角が青白い光に包まれる。眼鏡の職員はもう一つの角にも同様の魔法を唱えて荒い呼吸のままいった。


「この二本は本当に変異オーガの角です。間違いありません。この二人は変異オーガを打ち取っています」


 光に惹きつけられたのかいつのまにか周りに群がっていた職員たちが「おお」と驚きと喜びの混ざった音を漏らした。


「フローラ。報酬を」


 早くも冷静さを取り戻した様子の眼鏡の職員がフローラさんに命じると、フローラさんは興奮覚めぬまま奥に入ると、片手に一つずつパンパンに膨らんだ袋を持って現れる。テーブルに置くとジャラと金属が擦れる音が響く。

僕はその音と上から見える金色の光を見てようやく夢から覚めた。明らかに貰いすぎだ。こんな額は頂けない。


「ではロア様、レイ様。こちらが......」


「ちょっと待ってください。こんなに頂けません」


 レイも同意するようにと首を縦に振っている。


「いえ。これは極めて適切な額です。これがようやく得られた変異オーガを倒す貴重な手がかりになります。これからくる討伐隊の皆さんが対抗策を講じるいい材料にもなります」


 当然理由はあるか。待て。確かこいつは二角のオーガだった。


「これは 元々二本角の奴から取ったので1頭分ですよ」


 僕がいうと場が凍りつく。


「なっ。二角の変異オーガですって」


「はい。そうですけど」


 レイも然りに頷いている。


「二角の変異オーガは確認されているか」


「いいえ。確認されていません」


 眼鏡の職員の問いに一人の職員が答えた。


「これは想像以上に貴重なサンプルになるかもしれない」


 なんかヤバイ。なんか倍近い額を渡されたりしてもおかしくない流れだ。


「分かりました。200万ギル受け取らせていただきます」


 僕がいった時、眼鏡の職員の顔が変わる。


「ところでまだお二方は冒険者登録がまだですよね」


「まだですけど」


「二角の変異オーガを倒したお二方に私たちはB級の位を与えたいと思います」


 僕の反論は次第に大きくなる拍手や祝福の声でかき消されていった。

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