第8話 はなごころ
にょき。
にょきにょき。
あるこうえんで、花のたねがめをだしました。
「きもちがいいなぁ、そとは。ようし、がんばって花をさかせるぞ」
見えない土の下でりっぱなねっこをはり、にょきにょきのびて、はをつけました。
あるときはこどもたちにふまれ、あるときはつよいかぜがふき、花をたおそうとしました。
「まけるもんか。こんなことにはまけないぞ。りっぱな花をさかせるんだ」
どんどんせがのびました。それにつれてまわりのけしきもかわっていきました。
ときどき犬がじゃれてきてたおれても、かぜがふいてたおれても、まけません。
すくすくとそだち、そして、ある日……。
「うーん、うーん……ぱあっ!」
とうとう、花がさきました。
「やったやった! 花がさいた!」
花はおおよろこび。ちょうちょやはちもやってきて、おいわいしてくれました。
花は虫とじゃれあい、お日さまのひかりでひなたぼっこをして、まいにちしあわせにすごしました。
しかし、そんなある日のこと。
あたたかなお日さまにてらされて、きもちがよくてうたっていると。
「あっ、きれいなお花!」
女の子が花をゆびさして、はしってきました。
そして、ぷつり、と花をつんだのです。
花はいたくていたくてたまりませんでした。
そして、花はもう、ながいあいださいていることはできなくなるときづきました。
でも……。
「はい、おかあさん。これ、あげる!」
「ありがとう。すてきなお花ね! とってもかわいいわ」
……だれかがよろこんでくれるなら、まあ、いいかな、と花はおもったのです。
そして、力つきるまで、いっしょうけんめい花はさきつづけました。
じぶんのことをつんだ女の子とそのおかあさんを、よろこばせるために。