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第5話 そらとぶくじら

「はるとー、なにしてんだよーう」

「そらをみてるんだ。なにかおもしろいことがないかなーって」

「まーたはるとの『なにかないかなー』がはじまった」

「もうあきらめようぜー、おれらだけでサッカーするか!」

「おう!」

はるとは学校のジャングルジムで、空を見ながらそうぞうをふくらませていました。校ていへはしっていく友だちの足音をききながら。

(いっかいでいいから、くもの上にいってみたいなぁ。きっとふとんにしたらきもちいいよなぁ)

(まほうつかいにあってみたい。それで、まほうをみせてもらうんだ)

(あと、ねことはなしてみたい。犬とか、とりともはなしたいな)

どうしてこんなにたのしいことを、友だちはしないのでしょう? はるとは、それがふしぎでなりません。


そんなある日のこと。

はるとはその日もジャングルジムでそうぞうをふくらませていました。

「はるとー、きょうもゆめの中なのかよー」

友だちにそんなことをいわれながらも、空を見上げています。

(そらとぶくじらに会ってみたい。いつかせなかにのせてもらって、くもの上にいくんだ)

そんなことをかんがえていると、空に、なにかが見えました。

「ん? ……なんだろ、あれ……」

はるとはじいっと目をこらします。

「あれは……えっ、くじら⁉︎」

そう。それは、そらとぶくじらでした。

ここちよさげにおよぐくじらは、まるでうみの中にいるかのようでした。

「おいはるとー、空にくじらがいるわけねぇーだろー?」

友だちはそういいましたが、はるとはきいていません。

「おーいっ、そらとぶくじらさぁーん!」

空にむかって大声でさけぶと、それをききつけたのか、こちらへ向かってやってきました。そして、「おーい、わたしをよんだのは、きみかーい?」とききました。

「そうだよーっ、ぼくがよんだんだよーっ」

はるとのこえをきいて、くじらはうれしそうにわらった、ように見えました。

「今いくから、そこでまってておくれー」

くじらはゆっくりゆっくりやってきて、ジャングルジムのとなりに、ずっしりとおりたちました。

「さあ、せなかにおのり。すべらないようにね」

「やったあ!」

はるとはよろこんで、くじらのせなかにのりました。友だちにはくじらが見えないようで、「おい、はるとが……ういてるぞ」「ま、まじかよ……」といっています。

「さあ、しゅっぱつだ!」

「おーっ!」

はるとのかけごえとともに、ふわり、とくじらが空にまいあがります。


「お、おいっ! は、はるとが空をとんでるぞ!」

友だちのそんなこえが、どんどんとおざかっていきます。

あたりを見回せば、そこには青い空。そして、白いくも。下を見るのはすこしこわいですけれど、見てみるといつもじぶんのいる町が小さく見えます。

「わたしはいさなという。きみの名まえはなにかね?」

「ぼく? ぼくはね、はるとっていうの!」

「いい名まえだな。わたしはな、はると。きみのことをずーっと空の上から見ていたんだよ。きみはそうぞうがすきなんだろう?」

「うん! だいすき!」

「だからそんなきみを、ゆめのくににしょうたいしようとおもってね」

「ゆめのくに⁈ 」

「そうさ。くもの上にある、なんでもかなう、ゆめのくにさ」

「えっ⁉︎ いいの?」

「ああ」

「やったあ!」

くじら——いさなのことばをきいて、はるとは大よろこび!

「じかんがかかるから、のんびりなにか、はなしでもしながら、いこうじゃないか」

「うん!」

はるとはいさなに、たくさんのはなしをしました。

友だちは、そうぞうがあまりすきじゃなさそうだとか、そうぞうをしていたら、おかあさんに「くだらないことかんがえてないで、べんきょうなさい」といわれたとか、このあいだはこんなそうぞうをしたとか、どうでもいいことをたくさんはなしました。

どんなにくだらないことでも、いさなはきいてくれました。それははるとにとって、とてもうれしいことでした。


そして、空がきれいなむらさき色になったころ。

「さあ、はると。ここがゆめのくにだよ」

「わあっ、すごい!」

はるとが目をかがやかせます。

それもそのはず。

その大きなくもの上では、まほうつかいがまほうをかけて、くもの上にゆきをふらせています。はねのはえたしっぽが2本のねこもいます。「はじめまして!」といまこえをかけてきたのは、きれいなとりでした。おくのほうでは、きゅうけつきが、こうもりといっしょに、ほしくずのキャッチボールをしています。くもの上に生えている木には、おにぎりやパンがなっています。

「あそこに小さなこやがあるだろう? あれはじゆうにつかっていいぞ」

そういわれて、いさかのひれがさした方を見てみると、小さいというわりには大きめのこやがありました。きっと、あの大きなこやも、いさなにとっては小さなこやなのでしょう。

はるとはいさなのせなかからおりて、こやの中に入りました。

するとどうでしょう。

そこはまるで、小さなりょかんのようでした。

だれでもつかえるロビーに、きちんとかぎもかけられるへやもあります。

「もしもし、はるとさんでしょう?」

声をかけてきたのは、ばけねこでした。

「はるとさんのおへやなら、そこにありますよ」

ばけねこのゆびさすさきには、「はるとのへや」とかかれたとびらがあります。

「ありがとうございます」

中に入ると、そこにはすばらしいばしょがありました。

あかりはたいようのひかりと、月のひかりの2しゅるいで、つくえといすは、ほしくずをあつめてつくられています。ベッドはふかふかのくもでした。


こやからでてきたはるとを見て、いさなは「どうだい? 気に入ってもらえたかな?」とたずねました。

「さいっこうだよ!」

はるとはすぐにこたえました。

「ここでいつまでも、くらしていていいんだよ」

「本当に⁉︎」

「ああ」

「やったぁ! ぼく、ずっとここでくらすよ!」

こうしてはるとは、ゆめのくにの住人となったのでした。

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