第3話 ねこのまもりうた
あるところに、まほうつかいの女の子がいました。
その子のなまえは、あやちゃん。
心やさしい、女の子でした。
さくらの花がさきはじめたころ。
あやちゃんは、こうえんのまんなかででりっぱにさくさくらの木の下に、死にかけたねこを見つけました。
「……たいへん!」
あやちゃんは、じぶんのいのちの力を、少しだけねこに分けてあげました。
こわかったけれど、ねこが目の前でしぬのがいやだったのです。たすけてあげたかったのです。
ねこは、にゃお、と鳴きました。
とてもかわいらしい、なのによわよわしい、かなしいこえでした。
ねこはけがだらけでした。なので、あやちゃんはけがをなおすまほうを、たくさんつかいました。
あやちゃんはちょっとつかれましたが、ねこがげんきになったように見えたので、つかれをわすれました。
ねこはあやちゃんに、たくさんだっこさせてあげました。なでさせてあげました。だって、いのちをたすけてくれたのですから。
「もうげんきになった?」
「にゃー」
なきごえも、しっかりしたものになりました。
「にゃ。にゃーお」
ありがとう、というかのように鳴いたあと、ねこはいなくなりました。
くろいねこでしたが、しっぽの先がまっしろなねこでした。
さくらがちるころになりました。
あやちゃんがお花見をしに、こうえんに来ました。
「きれいだなあ」
そうつぶやいたとき、あやちゃんはさくらの木の下に、くろいかげを見つけました。
すぐに気づきました。
「あのときのねこさんだ!」
あやちゃんが少し前、こうえんのさくらのしたでたすけてあげた、くろねこでした。
あやちゃんはくろねこのところにちかよります。
「げんきそうだね、ねこさん!」
『ふふ、おまえさんのおかげで、さいごの日々をしあわせにすごせたよ』
ねこはそう言ってわらいました。そして、すこしさみしそうに、こう言いました。
『でもね、じゅみょうが来たんだよ。わたしはねえ……もう、しんだんだ。だから、ほら』
ねこはあやちゃんにしっぽを見せました。
ふたまたにわかれた、先っぽだけが白いしっぽ。
「……ねこまたに、なったの?」
『そうだよ。ながーくながーく、生きたからね。そして、おまえさんをさがしてた』
「なんで?」
ねこはとくいげにわらいました。
『わたしはね、ながーく生きたものだから、かみさまに、ふしぎな力をもらったんだよ。守りたい人を守れるような、そんな力をね。
……おまえさん。おまえさんは、しにかけていたわたしをたすけてくれた。こんどはね、もしも、なにかがおまえさんに起こった時、わたしがおまえさんをたすけたい。だから……』
ねこはあやちゃんにちかよって、しんけんな目をして、言いました。
『どうか、おまえさんのそばに、いさせておくれ』
「……それって、ねこさんが、わたしの……しゅごれいに、なってくれるの?」
あやちゃんがたずねると、ねこはこくりとうなづきました。とくいげに。
あやちゃんは、おどろいたようなかおをして、そして、うなづきました。うれしそうに。
「もちろん! ずっと、なかよくしようね」
こうして、まほうつかいのあやちゃんは、じぶんのしゅごれいとなるねこにであったのでした。