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本日一話目です。
コルニキアでは基本的に個人での召喚を禁止している。聖晶世界に意識を飛ばしすぎて意識不明になるのを防ぐためと、暴走した時にすぐに反喚部隊に連絡するためだ。
学校に行くまでヒュイカは二人にいじり倒された。トールの話をする度に顔を赤くして、慌てふためく姿が面白かったのだ。
ただ、無理矢理だがトールのPPCのアドレスを奪われてしまった。
それはトールが何とかするだろうとマミは決めつけ、放置した。
学校に着いてからはマミが適当に用意した契約物で召喚を繰り返した。追試で何を契約物にするかわからないので、とにかく試した。
落ち葉から木の枝を召喚したり、土から大きめな岩の塊を出したりした。
八回目の召喚をしてグラディスを聖晶世界に戻すと、ヒュイカが目を丸くしていた。クレアは怪訝そうな顔をしていて、マミのことを注視していた。
八回も連続で失敗しなかったことがそんなにも珍しいことなのかと思ったが、マミにしてみては珍しいことだったと思い出した。
最近は失敗をしていなく、何連続も召喚を成功しているのでそんな初心も忘れてしまっていた。
「ど、どうかな?これで追試は大丈夫かな?」
「あー、あたしは大丈夫だと思うけど、マミこそ大丈夫?」
「え?何が?」
「いくら下級と最下級とは言っても、八回も召喚して疲れてないの?」
そう言われても気だるさや疲労感は一切感じなかった。
何ならまだまだ召喚できるくらいだ。トールを召喚した時も、その前の特訓の時も、昨日中級クラスの召喚をした時でさえ疲労感は感じなかったのだ。
「別に何ともないけど、二人とも何で?」
「ほら、召喚のし過ぎで倒れちゃう人もいるでしょ?特に子供が顕著だけど。マミもそうならないか心配してたけど……さ。だって、コロシアムに出る人は前日に召喚をしないんだよ?」
「そうなの?」
「あたしは五回目くらいで止めようと思ってたんだよ。けどマミは楽しそうに続けるから……。ま、いっかって」
召喚のし過ぎで体を蝕むというのはコルニキアでの常識だ。
だが、そのし過ぎがよくわからないのだ。マミは今の通り十回程度なら召喚しても体に支障は出ない。
コロシアム本戦に出るような人は一試合で十回以上が普通なのだ。しかも上級ばかり召喚して、なのだ。
「危ないって思ったら止めてよ。それよりも……」
マミはメモ帳を出して書き込んだ。人間は自分の召喚における限界量を計る機械か何かが必要なのではないか、と。それさえできれば召喚で倒れる人間は圧倒的に減るのではないか。
それは才能を決めつけてしまうかもしれないが、何かしらの努力でその限界量が伸びれば召喚の教育にも生かせるのではないだろうか、とも書いた。
「うーん、調べたいことがいっぱいだなぁ……」
「それじゃあさっさと研究者にならないとね。でも、マミの学力なら飛び級だってできるんじゃないの?」
「わたしは日常生活の中にヒントって隠れてるって考えてるんだよね。それに飛び級したせいで他の人はしっかり学んでる部分を疎かにしたくもないし。あと、召喚ができないまま研究者にはなりたくない」
「まぁ、召喚に関してはどうすれば実力が伸びるかわからないからねぇ。でも安心しなよ。マミには才能あるから。こんだけ召喚して疲れないのは一つの才能だよ」
才能があるクレアから才能があると言われることは純粋に嬉しい。しかも、クレアはトールやイフリートまでもが認める召喚士だ。トールが言っていたことを真に受けてもいいかもしれない。
「二人とも、付き合ってくれてありがとう。明日は頑張るね」
「いつもと変わらないし、大丈夫そうね。頑張って」
「何ならあたし等見に行こうか?どうせ暇だし」
「えー、トールさんの試合見に行きたい!トールさんに賭ければお小遣いも手に入るし!」
「学校にいるのに大声で賭けるとか言うのはやめようよ、ヒュイカ……」
それで気になり、マミはPPCを出して明日のコロシアムの予定表を見た。前日には上級の試合日程は発表されるのだ。
トールからある程度の予定を聞いているが、明日の予定はまるで聞いてなかったのだ。
「明日トール試合ないみたいだけど?」
「え、ないの⁉」
「じゃあ別にいいんじゃない?マミをからかいに行こう」
「あれ?応援じゃないの?」
この後十八時にもう一話投稿します。




