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人類最強  作者: 白石らいおん
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4 - 通信復帰?! 意外な指示

 アジトに入って間もなく、シーカたちは再びあの小さなをドアを抜け、地面へ上がった。

「あ~あ。やっぱり広い場所っていいよな」

 大きく身体を伸ばし、クーカスが気持ちよくぼやいた。

「そうですね。せっかく地球に来たのにあんた場所にいってはもったいないもの……シーカ? どうしたですの? 今日は静かですね」

「いつも通りだろ?」

「今日はいつもより静かですよ」

 二人は目線をシーカへ集めると、シーカがアジトの方へ一瞥した。

「さっきの女」

「さっきの女? 確かあの茶髪のお姉さんは……」

「サーシャさん、だっけ? --彼女がどうしたの?」

 しばらく黙って、シーカが頭を振った。

「別に、気のせいかもしれない。--忘れてくれ」

 足を踏み出したシーカを、ルリアが追いつく。

「シーカの勘は聞き捨てないって」

 だけどシーカはそれ以来一言も発さなかった。

「しょうがないだろ? --言いたくないことは言わないのがこいつだ」

 両手を頭の後ろへ組んで、クーカスも歩き出した。

「もう、二人ったら」

 ため息をついてから、ルリアが顔を上げる。

「あなたたち、どこに行くつもりですか?」

「そりゃあ……ボルスさんのところ?」

 シーカもクーカスと同じ当てがないようで、足を止めてルリアに振り向いた。

 すると、ルリアがある方向へ指をさして言う。

「まずはあそこへ向かいましょう」

 横に倒れた高層ビルで出来た廃墟。ルリアの指の先には、一つ何とか直立している建物があった。

「そこに登れば方舟(アーク)からこの辺りの地図データをもらわないと」

 黒いボックスを開けて、中には紫色の光を微かに放つ砂が入っている瓶が、六つある。

「宇宙砂の補充もしてもらいたいから」

 そう言ってルリアが宇宙砂が入っている瓶を一つシーカに渡した。

 シーカはそれをもらって、腰に掛けている鞘の横にある蓋を開ける。中に嵌めている同じ瓶を取り出して、新しい瓶を嵌めて蓋をかけた。

「シーカ、ちょっとは節約してね。残り少ないから」

「……気をづける」

 と、シーカは反省の色もなく足を踏み出す。

 シーカの後ろ姿を眺めて、はぁとルリアがため息を吐いた。

「宇宙砂ってここで取れないのか?」

 大事そうに宇宙砂をボックスに戻すルリアに、クーカスが訊いた。

「取れないよ。ーー宇宙砂はとても燃えやすいから、ちょっと酸素と接触しただけで爆発するからね。ーー宇宙砂の効率はとてもいいので、これだけ燃やせばかなりのエネルギーが発生するの」

 もう一度宇宙砂の瓶を一つ取り出してクーカスに見せた。

 小さな円筒のような瓶。紫色の光を放つ砂が入っている。瓶の片方には輸出口のようなものがついており、もう片方には1センチほど厚い蓋がついている。

「ここに孔があるでしょ?」

 ルリアが蓋のところを指した。そこには閉じられた小さな孔があった。

「この穴に空気を少し入れるとすぐに閉じるの。そして裏側にあるもう一つの孔が自動的に開けられて、宇宙砂と空気が接触するーーそれだけでこの宇宙砂がバッテリーのようにエネルギーを提供してくれるわ、点火装置も要らないよ」

 キラキラと目を輝かせて、ルリアが聞いてもいないことをべらべらと喋った。

「バッテリーって?」

 一方、聞き覚えのない言葉を耳にした顔で、クーカスが訊いた。

「電池ってわかる? クーカスにはわからないか……まあ、エネルギーを保存する装置らしい。昔の人たちは実にたくさんのエネルギー源を使っていたとかぐや姉さんが言いましたよ」

 へいと、クーカスは適当に相槌を打った。

「でも今の私たちには宇宙砂しか頼れないから、アークに宇宙砂の補充を送ってもらわないと」

「ついでに俺の着替えもよろしくな」

 クーカスの戦闘服に、金属の光沢がある黒い糸のようなもの数本、彼の体に纏っている。何本かが切れているのが見えた。

「あなたたちって、物を大事にすること心掛けがないのか? --まあいいけど、また送ってほしいものがあったら早く言いなさいよ。方舟から発射された物資がここに到着するまで結構時間かかるらしいから」

 それを聞いたクーカスはピンと、何かが閃いたようだ。

「あっ、だったらさっきのおじさんたちにも、バベル式なんちゃら剣を渡したらいいじゃない?」

「……バベル式神鋼剣」

 シーカに言い間違いを訂正されて、クーカスは「そうそう、神鋼剣」と言い直した。

「どうして?」とルリア。

「そんなこともわからないのか? ルリア」

 クーカスはにやにやと笑ってルリアを見下ろした。

「もったいぶってないで早く言いなさい。--それとその顔もやめて、殴りたくなるから」

 振り向いて、シーカもクーカスのアイデアに耳を傾けた。

「俺たちの任務って地球の調査とルバルトのおじさんたちの救援だろ? それはおじさんたちがアニモに勝てないってことだろ?」

 珍しく頭を使っているクーカスを、物珍しい目でルリアが「ほう」とこぼした。

「てだ。さっきおじさんたちも剣を持っている。つまり彼らにも剣が使えるわけだ。--バベル式なんちゃら剣みたいな性能はないみたいだけど」

「……バベル式神鋼剣」

「まあ、名前はどうでもいい」

 シーカがわずか眉をひそめた。しかしクーカスにはそれを気づいた様子はなかったので、彼は話を続けた。

「あんな剣で今まで戦ってこれたということは、彼らの剣の腕前はかなりのもの。--彼らにもそれを配ってあげたら、シーカが数人増えたことになるだろ?」

 何バカなことを言っているんだこいつは、とシーカはその言葉を口には出さずに黙ったいた。

「彼らにバベル式神鋼剣を配ったところでシーカみたいに使えるかどうかはさて置き……それで? その後はどうなるの?」

「そうなれば、おじさんたちも自力でアニモたちに勝てる。俺たちはおじさんたちを守らなくても済む。俺たちの任務は地球の調査だけになる--つまり、この広い地球で自由にあちこち行ってもいいってことだ」

 決め顔でそれを言い終わって、まるでルリアとシーカの褒め言葉を待っているようにクーカスは構えた。

「うん、クーカスにしてはまあまあかな。久々に頭使ったでしょう、お疲れ様。--さあ、行きましょうシーカ」

 思っていた反応とは大分違って面食らったようにクーカスが声を上げながら二人を追いついた。

「ちょっと、お前らせっかく地球に来たのに、またあんな狭い場所で暮らすつもりかよ!」

「しょうがないでしょう? 私たちは任務で来たのだから」

「だから俺の方法を使えばその任務は」

「無理ですね。ーーだって、あの剣はシーカしか使えないから、一本しかないよ」

 頭をかしげるクーカスに、ルリアがバベル式神鋼剣の説明をしてあげた。

 バベル式神鋼剣は宇宙砂をエネルギーとする加熱装置と、装着式の柄と刃で構成していることや、物資が欠如している現在加熱装置の大量生産は不可能のことなどを早口でルリアがクーカスに言い渡した。

「ーーだから、その方法では……聞いてる?」

「うん、聞いてる聞いてる」

 明らかに聞いてはいるが、ルリアが何を言っているかわからないような顔になったクーカス。

「さっきのことは全部、ずいぶん前に方舟でカグヤ姉さんに教えてもらったことだよ」

「あんな昔のことなんて覚えるか!」

 ブーンと、シーカの鞘に音が鳴り始めた。

「……これ、結構熱い」

 ルリアとクーカスがシーカのほうへ目を向くと、シーカが鞘から剣を抜き出しているのが見えた。

 真っ黒な剣身に、空間をも歪める熱を放っている。

「うわ、本当だ……シーカお前ずっとそんなの大丈夫かよ」

「……オレは平気」とシーカがそれを示すように素早く素振りを斬って見せた。

「だーかーらー」と、ルリアが声を上げた。「宇宙砂の無駄使いは厳禁って何回言えばわかるんですか! --早く閉めなさい!」

 ぷんぷんと怒るルリアに叱られ、シーカとクーカスはしばらく大人しくしていた。



 瓦礫を踏みながら、シーカたちが電波塔へ向かった。

「そう言えばさあ、あの建物って誰が作っただろう?」

 アニモも現れないまま3分ほど歩いたら、クーカスが話題を振り出した。

「昔の人たちじゃない? --っていうかこれ持つの手伝ってよ」

 ボックスを背負いながら歩くのはよほど重かったらしい、はあはあと息を切らしてルリアが言う。

「嫌だよ、めんどくさい……お前それ飛べばいいだろ?」

 ボックスからモニター付きキーボードだけ取り外して、ルリアはボックスをクーカスに押し付けた。

「宇宙砂の残りが少ないってさっきに言いましたよね? --クーカス無駄に筋肉付けてるから別に持ってくれても構わないでしょ? ケチ」

「ケチはないだろケチは。なんで面倒なことはいつも俺に押し付けんなのよお前は……シーカだって」

「シーカはあんたとは違います。彼は剣を、そして私はこのボックス。--あんたあんなに筋肉つけてるのに何も持たないのは許されると思いますか?」

 返す言葉がなく、クーカスは「ボックス」をルリアからもらった。数えるまでもない、クーカスが今まで口喧嘩でルリアに勝ったことは一度もなかった。

 さらに5分ほど歩いた。途中でルリアはしばしばマイクに声を入れて、アークと連絡を取ろうとした。

「どう?」

 150センチのルリアが受信機を高く持ち上げて、それでもアークと繋がらない。

「手伝って」とルリアがクーカスに言って、するとクーカスがルリアを持ち上げた。

「うぅぅ……ここでは無理みたい。もうちょっと前へ行ってみよう」

「やっぱりあの建物に乗らなきゃダメか……」

 ルリアを下ろしてからクーカスが前に進もうとした。

「どうした? シーカ」

 立ち止まるシーカの様子が気になったようで、クーカスとルリアも一旦足を止めた。

「……静かだ」

「いるか?」

 クーカスが両手を構えて周りを見ながらシーカに訊いて、シーカが頭を横に振った。

「まあ、大丈夫でしょう。今は昼だし--ネズミは基本夜行動物だとデータにも書いてありました」

 よそ風が大地を撫でで、それにつれて舞い踊る砂が掠り合う。

「宇宙とは違う静かさです。やっぱり地球はいいですね」

「ああ。この広くて黄色い空がいい」

 大きく息を吸って、クーカスが皆に言った。

「絶対、地球で俺たちの家を作ろう。--もう方舟には帰りたくないからな」

「もちろんです」

 笑顔を交わして、三人は再び歩き出す。

『……よっ……ただ……に……たい……せよ……』

「来ましたよ!」

 目的地の建物に近づき、シーカたちの受信機にオペレーターさんの声が聞こえた。

「こちらルリア。この辺の地図データをお願いします」

『……えす……ただ……せよ』

「なあ、ルリア。俺の受信機は壊れたみたい、よく聞こえないけど」

 クーカスがそう言うと、上手く聞き取れないのはシーカだけではないようだ。二人ども受信機を外してルリアに目を向くと、「もうちょっと電波塔に近づいて見よう」とルリアが答えた。

 ーーどうやらルリアのほうも、上手く声が拾えなかったらしい。

「こちらルリア。聞こえますか」

『--繰り返します』

「おお、直った」

 建物の中に入って、受信が安定してきた。

 クーカスが再び受信機を耳に当てる。

 そして、受信機からの指示に、三人ども息を飲み込んだ。


『ーー直ちにそのポイントから撤退せよ!』 

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