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回復魔法の使い方  作者: 桜野まつり
2/2

2.起きたらそこは異世界でした

ここは…。


目覚めるとそこは知らないベッドの上だった。





「目が覚めましたか」





紺色のワンピースを着たシスターっぽい恰好の女性に話しかけられた。





「怪我はないようですが痛むところなどありますか?」





上半身を起こし手足を動かす。


とりあえず痛いところはないみたいだ。





「大丈夫みたい…です」





ん?


聞いたことのない声が出たので辺りを見回す。


そういえば目線も低いし手も小さいような…。


とりあえず頬を抓ってみたが、痛い…。夢じゃないらしい。


クスクスと様子を見ていたシスターさんに笑われてしまった。


そんなことよりも大事なことがある。


すかさず胸と股間に手を伸ばす。


あ………る。


胸がある、下がない。


とはいっても胸はまだ少し膨らんでいる程度しかないのだが…。


どうやら女性の体になっているらしい。声を聞いた時にうすうす気づいてはいたのだが。


つまりあの神様の言う通り、自分はこの神様が作った体で異世界に転生したということで間違いないだろう。





「修道院の前に倒れていたので運んできたのですが、ご家族の方は近くにいるのですか?」


「い、いえ。家族は……」





言葉に詰まってしまう。


元の世界には故郷にまだ家族はいるが、ここでは通じないだろう。


というか倒れていた理由や家族構成まで考える必要があるじゃないか。


そういえば魔王が暴れている世界だったっけ。





「両親は…その……亡くなりました。病気で…」


「それは可哀想に…」





なんとかごまかすことができた。シスターを騙すようで気が引けるが、今はしょうがないということにしておく。必要な嘘もあるのだ。





「私はシスターアイナ。もし行く当てがないのなら、この修道院に入れるように院長に話してみましょうか?」





修道院ってシスターになるために修行する場所だったっけ?いやそれより名乗られたのだからこちらも名乗らなければ。





「ありがとうございますシスターアイナ。私の名前は…エリナ…です。今の話、少し考えさせてもらえますか?」





頭に浮かんだ名前で適当にごまかす。本当の名前を使うわけにもいかないし、とりあえずこれでいいだろう。





「エリナさんですか。では私は院長に報告してきますので少し待っていてください、お腹もすいているでしょうし、食べ物も持ってきますね」





そう言って軽く頭を撫でてから部屋を出ていく。


異世界に来て初めてあった人が優しい人でよかった。





『良い話じゃない、暫くここで修行してみたら?』


「そんなこと急に言われてもな」


『言葉遣い戻ってるわよ、もっと女の子っぽく喋りなさい』





ん?


頭の中で最近聞いた声が響く。





『上よ、上』





頭の上に白い光が浮かんでいた。


その光が自分の膝の上あたりまで移動するとだんだん光が薄れ、小さな人型になる。


完全に光が収まると異世界に来る前に会った神様がミニサイズで浮いていた。


羽もついていて完全に物語に出てくる妖精そのものだ。





「か、神様?」


『はーい、困った時にズバっと解決!悩み事は私におまかせ♪』





てへっと片目をつぶってピースを目に当てた決めポーズをとる神様。


もうどこからつっこめばいいのかわからなく、唖然としている自分を無視して神様が続ける。





『も~リアクション薄いわよ、まぁいきなりじゃ仕方ないか。本当はいきなりダンジョンのある街でもよかったんだけど、ここで修行するのもいいかなって思ってここにしたの』





どうやら修道院の前に現れたのは神様の気まぐれのようだ。


転生酔い?で倒れていたところを修道院の人が見つけ、運び込まれたと。


正直いきなりダンジョンとかに行かされるよりは全然マシだった。戦闘なんてしたことがないし、しかもこの体では戦える気がしない。





『そんなことないわよ、その体だっていろいろ高性能なんだから。病気はしないし、治癒速度も速いし、基礎能力だって高いんだから』





作った本人がそういうならそうなんだろう。それは後で確認するとしてなぜ修道院なのだろうか。





『こっちの世界の常識を学ぶにはもってこいの場所なのよ。文字の勉強だってできるし、それにエリナちゃんは回復魔法を覚えたんだから修行するには好都合なんじゃない?』





エリナちゃんと呼ばれ一瞬誰の事かと思ったが、そういえばさっきそう名乗ったのは自分だった。


言われてみればなるほど。色々と学ぶには調度いいのかもしれない。


というか相変わらず人の思考を読んで会話してくるな。





『まぁ神様だからね!』





胸を張って偉そうにしているが、妖精の姿のせいか威厳はない。


とりあえず途中になっていた現状確認から始めよう。


ベッドから降りて体を確認する。


今着てる服は修道院の物だろうか、てるてる坊主のような白いワンピース型の寝間着を着ている。


体は小学生くらいの身長で130cmくらいだろうか。男の時よりやっぱり線が細い。


髪は金髪で背中くらいまである。こんなに伸ばしたことがないので違和感がすごい。


顔は鏡がないので確認できない。


胸は少し膨らんでいるがこれくらいならまだ何も着けなくて良いはずだ。


下は…服を引っ張って確認するがやはりなかった。下着もなかった…。





「ねぇ神様、鏡とか持ってない?顔と全身を確認してみたいんだけど」


『ん~…それだったら私の視覚で見せてあげる。そのほうが後ろからも見れていいでしょ』





神様の「えいっ」という掛け声とともに、いきなり自分が見ている世界が切り替わる。そこには白い服をきた少女が立っていた。


あれ…この子どこかで見たような…。





『ちなみに私をモデルにしてるから、感謝しなさい!』





そう異世界の説明を受けた時の神様だった。


髪の色や髪型、目の色以外はそっくりだ。


ちなみに神様は青髪金眼で自分は金髪青眼と逆になっている。


正直人形のようなといえば聞こえはいいが、この金髪少女が自分だと思うと複雑な気分だ。


後ろ姿も綺麗な髪が腰元まで伸びており、もし街ですれ違ったら振り返ってしまいそうだ。


顔はかなり整っていると思う。ぱっちりした目に深い青色の瞳、スッっと通った鼻、小さい口。


まだ幼いが成長したら絶対美人になるはずだ。


神様が少女の姿なので成長した姿はまだ想像できなかった。…これで成人ってことはないよね…。





『安心しなさい、成長するように作ってあるわ。年齢は12歳くらいね』





まだ成長期の途中らしい、とりあえず身長はもう少し伸びるだろう。


視界が戻り部屋を見渡す、すると机の上に折りたたんだ服が置いてあった。これが自分の服だろうか。





『さっきのシスターが着替えさせてくれたのよ。汚れてはいないから着替えてみたら?』





青と白の制服に近いような洋服だった。


もちろん下はスカートだ。





これを着るのか…。





服を着替えようか迷っていると、どこからか視線を感じた。


どうやら入口のドアの隙間からこちらを窺っている人物がいるようだ。


とりあえず服は後回しにして入口のほうへ近づく。


私が扉のほうに近づくと、こちらに気付いたのか慌てたような声がした。





「ねぇどうしようこっちきちゃう」


「ばれ…た?」


「どちらさまですか?」





素早く扉を開けるとそこには同じくらいの歳だろうか、白い帽子に紺と灰色の中間くらいの色の服を着た女の子が二人いた。


見たところどうやらこの修道院の生徒のようだ。


シスターアイナと服も違うし、髪をベールの中に入れていたが、この子達は帽子タイプである。





「あっあの。あなたが倒れてたの私たちが最初に見つけて、ここに運ばれたって聞いて…」


「心配…したの」





目をぐるぐるさせて慌てている子と、落ち着いた雰囲気の子。どうやら自分の第一発見者らしい。


ここはとりあえずお礼を言わないと。





「心配してくれてありがとう。私はエリナ。あなた達が助けてくれたのね」





第一印象は大切なのでにっこりと微笑む。上手く笑顔が作れているかは謎だが、二人の反応は悪くない。





「私の名前はリリア、こっちはフィーナ。エリナちゃんよろしくね」


「ん…よろしく…」





二人とも手を出してきたので、両手を使って握手をする。お友達ということでいいだろうか。





「ねぇ、ところでエリナちゃんはどこからきたの?歳はいくつ?もしかしてどこかのお姫様なの?」


「髪…きれい」





そりゃ質問攻めになるか、フィーナちゃんのほうはともかくリリアちゃんは興味津々の目で見てくる。





「あまり無理をさせてはいけませんよ、まだ目を覚ましたばかりなのですから」


「すっすみません!シスターアイナ」


「ごめん…なさい」





扉の外からトレイに食事を載せたアイナさんが二人に声をかける。


やはり修道女の中でも階級があるのだろう。先生と生徒といったほうが近いのかもしれない。





「心配する気持ちもわかりますが、まだ今日の授業が残っているでしょう」


「エリナちゃんごめんね、また後で来るから」


「また…ね」





こちらに手を振った後、アイナさんにお辞儀して二人は歩いて行った。





「今の二人は?」


「この修道院の生徒です。皆さんここで生活して神の教えや学問を学んでいるのですよ」





どうやら学校のようなものらしい。


神の教えとかはどうでもいいのだが、知識を得るには絶好の機会である。





『どうでもいいってなによー』


「食事を持ってきましたのであちらでいただきましょう」





頭の中に神様の声が聞こえたがどうやらアイナさんには聞こえていないようだ。





『ちなみに私の姿は普通の人には見えないわ、神様だから』





なんだそりゃ…。


とりあえずアイナさんに見られつつ僕は、いや私は異世界で初めての食事を味わうのだった。



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