5.逃走
「はぁ、はぁ…うわっ!っと、アブねぇ!転んだら"死ぬ!"」
俺、現在逃走中。
「ガゥゥ!ギャウッ!ウガァァァ!!!!」
ドラゴン、現在追跡中。
「なんでそこまで根に持つんだよぉ!図体デケェくせに器は小せえんだなっ!」
「グギャァァァァァァ!!!!」
「前言撤回スンマセェェェン!」
俺は今、ドラゴン(あと子ドラゴン)に追いかけられている。
キッカケは、俺がこの世界に転生した瞬間にこのドラゴンの卵を割っちゃったこと。
チラッと後ろを振り向いたときに小っちゃいドラゴンがでっかい方の肩らへんに乗ってたから無事に生まれたんだろうけど、親ドラゴンは許してくれない。ちっちぇなほんと。
「コマンドオープン!」
「走った先が崖でしたw」みたいな事は絶対にしたくないから、地図を見ながら全力疾走する俺。顔の前に表示されるのだが、動いているときは半透明になってくれるため、走っていても視界の邪魔になる事はない。ご都合主義万歳。
地図を見る限り、この方向に走っていけばずっと陸が続いていそう。
と言うわけで俺はその方向に走り続ける。
「おんどりゃぁぁぁ!!お前に殺されてたまるかってのぉ!」
「ウガァァァ!!!!」
「もういやぁぁぁぁぁ!!」
本当に、これは体験しないとわからない怖さだね!前には木がめっちゃ生えてるからそれを避けながら走るしかない。ドラゴンの方は走ってりゃ木が吹っ飛んでくから(比喩じゃなくてマジな方で飛んでるから)なんの影響もないみたい。
「くそ、どうすりゃいいんだよ⁉︎どうすれば生き残れる?どうすれば逃げ切れる⁉︎」
マップを見て、道を間違えないように進む。
「うわっ⁉︎しまった!」
ずっとマップを見ていた俺には足元が見えていなかった。木の根っこに足を取られて俺は転んでしまった。膝を擦りむいたが、そんな事はマジでどうでもいい。後ろを振り返れば当然のようにドラゴンが迫ってきている。
「畜生!立ち上がれねぇ!」
アニメとかで、足が動かねぇとか言うことあるじゃん?あれってほんとにあるんだな。力が入んねぇよ……
「……は、ははは………」
こんな所で2度目の人生終了かよ。結局俺は、くだらない死に方しか出来ねぇのか。ま、ドラゴンに喰い殺されるんなら武勇伝位にはなるかね。せめて自分の死亡時刻くらい確認しようかとコマンドウィンドウを開く。あれ?時計って何処にあるんだろ……?なかなか探しても出てこない。まぁそんなの見てたって何にもならないけどな。…せめてスキルだの魔法だのあったら良かったんだけどな………魔法?
俺は必死で自分のステータス画面を見直す。
「存在消去…」
そう、ドラゴンから逃げることしか考えていなくてすっかり忘れてたけど、前魔王…えーと、なんだっけ?名前忘れた。とにかく、そいつが使っていたこの魔法、[存在消去]を俺は使えるのだ。
俺の中に急に自信が湧いてくる。まだ死なない。生き残れる。
そうか、俺にはこの魔法がある、なら…!
「ドラゴンッ!かかってこいよぉ!!」
俺は必死で戦闘態勢を取った。幸い、生前に武術の類も一通り習得していた俺は、ある程度なら体を動かせる自信があった。
「ギャァァァァァア!!」
ドラゴンが近づいてくる…あと50メートル…30、20、今だ、これなら殺れる!
俺は魔法を詠唱した。
────それは全てを消し去る魔法────
────禁断と呼ばれ、恐れられた魔法────
────何も残さず、それは塵とすら化さない────
「森羅万象のもとに全てを晒せ────存在消去っ!!!」
俺は全身全霊で叫んだ。




