37.実践
「やらせてたまるかぁぁぁ!!!!」
シュッと、風を切って俺とスケルトン・ナイトの間に入り込んだのはアグネーゼ。
俺に振り下ろされかけていた剣を受け止めてくれた。
「カラカラカラ……」
「な、お前………」
何してるんだ、と言おうとしたのも束の間。
アグネーゼは剣を受け止めたまま左足でスケルトン・ナイトの腹付近を蹴り飛ばした。
「カラカラカラ!」
力の強さは圧倒的にスケルトン・ナイトの方が大きいはずなのだが、アグネーゼはその体格に似合わない力を発揮し、スケルトン・ナイトを押しのけたのだ。
「お前、許さないぞ……よくも空を────空を殺そうとしてくれたな………!!!」
「アグネーゼ……」
そして、アグネーゼは体勢を少し崩したスケルトン・ナイトに、まるで先程俺がコイツにやられたように斬りかかった。
「これでも……喰らえっっ!!次元斬ッ!!!!」
「カラッ!!?」
アグネーゼの放った一撃はスケルトン・ナイトの胸の辺りを見事に捉えた。
その瞬間に、そこに切れ目が出来る。スケルトン・ナイトの体にではなく空間に。
そしてその空間が元に戻ったかと思うと、スケルトン・ナイトの胸の部分は見事に切り取られていた。
「じ、次元斬………」
カラカラ、と音を立てて崩れさる骨達。
その音はアグネーゼがスケルトン・ナイトに対して、227以上もレベル差がある敵に対して勝利を収めたことを意味していた。
大白星を挙げたアグネーゼ。
本人はずっと下を俯いていた。
「おい、アグネーゼ?どうした────」
「初めてできた……次元斬……………できた、できたよ……!!」
「え?…………今まで出来なかったのか!?」
アグネーゼは顔をあげると俺に飛びつきながら満面の笑みで語る。
「あぁ、そうだ!僕は今まで次元斬を使えなかったんだ。悔しくてずーっと練習してたけど、ここで習得できるなんて思わなかったんだ!なんでだろう、あの時不思議と力が出たんだ……」
「そうか……なら良かったんじゃないか?」
「うん、良かった……!」
アグネーゼは今までで一番の笑顔で俺に答えた。
俺が死にそうなのを見て「(´・∀・`)ザマァ」みたいなノリでパワーアップしたのかなー?なんて思いながらも、思った以上に可愛い笑顔を見れたので許してやるとした。
「なんだ、人の顔をジロジロ見て。気持ち悪い」
「やっぱり可愛くねぇなお前」
この野郎め、頭叩いてやるわ────
「カラ、カラカラ……」
「え、なんだ!?」
この場所では、おふざけはどうやら許してもらえないらしい。
俺たちの前にはスケルトン・ナイトが、立っていた。
それも一体だけではない。
俺たちの横から、前から、下から、色々なところからスケルトン・ナイトが湧き出してきた。
「は!?なんで!?普通スケルトン・ナイトは群れないはずだ!なんでこんなにいる!?」
アグネーゼが叫ぶ。
アグネーゼの言っていることが本当なら確かにおかしい。
「おいアグネーゼ!それは本当なのか!?」
「本当だ!前にフォードから教わった事だ!記憶力には自信がある────間違いない!」
だがそのアグネーゼの記憶とは反対に、どんどんスケルトン・ナイトは湧いてくる。
俺達はあっという間に囲まれてしまった。
「カラカラカラカラ…」「カラカラ…」
「おいこれマジでやべぇぞ!?」
「そんな事知ってるよっ!ほんとにどーするのこれ!?」
「知るかっ!!」
存在消去を使うか?────いや、それはだめだ。この後にまだマリーさんの救出作業が待ってるんだ。ここで体力を使い切るのは絶対愚策だ…………ならどうする?普通にやっても勝てないだろうな……一体倒すのにアレだけ手間取ったんだ。今は見えるだけでも10体越え。ここで正攻法を挑むなんて自殺行為に等しい。せめて、俺もアグネーゼみたいにコスパのいい技があれば……………
思わず手を握る。やっぱり俺には力が足りない……仲間を守れるくらいの圧倒的な力が…
その時、俺の頭に一つの策が思いついた……
────────手だっ!!
そうだ、俺にはあの竜の腕がある!!
前にもこんなことあったけど、自分の技が全く把握出来てない証拠だなこれ。一回自分のことを見返す必要があるな……
いや、今はそんな事どうでもいい!あの、パーン出来る腕があるなら、この状況をどうにかできるかもしれない!!
よし、やったるわっ!!!
「おりゃぁぁぁぁぁあああ!!!!」
「はぁぁぁ!!?おい空、お前馬鹿みたいに突っ込んでも死ぬだけだろう!?今の時間何してたんだよ!!」
「うるせぇ!!一か八かだよっ!」
俺は近くにいた、比較的孤立しているスケルトン・ナイトを殴りに行った。
「カラカラ……カラ?」
「これでも………くらいやがれぇぇぇえええ!!!」
俺は全身全霊を込めて、全力の殺意を込めて右手を振り切った。
バシィィンン!といい音がして、スケルトン・ナイトは若干後ろへ下がる。
がそれだけ。
「なに!!?」
「カラ………カラカラカラカラ!!!」
俺の拳を普通に耐えたスケルトン・ナイトは右手に持っていた剣の持ち手部分で俺を殴り倒した。
「ガハッッッ!!?」
「空ぁぁぁぁぁあ!!!」
アグネーゼが叫んでいるのが聞こえる。
が、もう目の前には骨の足が。
「カラカラカラ………」
「次元斬っっ!!!」
「カラカラ!!」
アグネーゼの技もスケルトン・ナイトによる絶妙なタイミングでの斬撃で呆気なく対応される。
「クソがっ!!次元斬っ、次元斬っっ、次元斬────!!!!」
泣き叫びながら出す技もスケルトン・ナイトには効かない。全てがいなされ、消えていく。
そして、スケルトン・ナイトは倒れている俺に剣先を向ける。
「カラカラカラカラ!!」
「やめろぉぉぉぉおおおお!!!」
俺の背中の後ろからシュッと風を切る音がする。なにがそれを発しているのか、最早考えるまでもない。
俺に見えるのは骨の足のみ。
「なんで………なんで俺はこんなにも弱いんだよぉおおおお!!!」
「カラカラカラ………!!!」
「やめろ、やめろぉおおおお!!!!」
────スケルトン・ナイトは、俺に剣を振り下ろした。




