33.ギルマス
────くそ、体が動かねぇ!
畜生、こんなところでは死にたくねぇんだよ!
どんな強さしてやがる……
こんな強さのヤツ、今まで戦った事ねぇよ────やめろ、殺すなぁぁ!!!
────上が俺で、下はアグネーゼである。
なにが?って、そりゃお前、このアフレコの話だよ。
今、俺達はゴダ水路という場所にいる。
先程俺達が入ったゴダ水路入口───通称"漆黒の井戸"から梯子を10メートルほど降りた場所がここ、ゴダ水路である。
超高レベルな魔物が生息しているのは漆黒の井戸ではなくこの水路になるのだが、何故かここには『漆黒の水路』とかそういう二つ名はついてなく、『"漆黒の井戸"を降りたらゴダ水路だよ』みたいな事になってる。
漆黒の井戸自体は別に危険ではないということで、すごく奇妙である。意外とそんなものかもしれないが。
さて、そんなこんなで俺達は確かにゴダ水路に入ることが出来た。
「よし、入れたな。意外と梯子って辛いんだな。めっちゃ久しぶりに使ったよ…」
「空は地下には行かないのか?あ、怖いのか。暗いもんね〜」
「んな訳あるか」
ゴダ水路は勿論地下にある。その為、光といえば所々に設置してある松明か、自分の持っているランプのみ。
つまり結構暗い。
おまけに足元が湿っていてすこし滑りそうになる部分があったり、壁にコケが生えてて触ったら少し萎えそうになったりとかなり環境が悪い。あと寒いし。
今はマリーさんを救出する為に来ているから頑張れるが、レベル上げなどの為にわざわざ自分からここへ来るか?と聞かれたら答えはノーだ。
「よし、お前ら。梯子を降りた100メートル位は、すっごく強い魔法使いのおっさんがめっちゃゴツイ結界張ってるから魔物達は来ない。だが、もうすぐ結界の外に出るから気を引き締めておくんだぞ」
「うぃー」
「分かった」
フォードの説明は分かりにくかったが、つまりはもうそろ警戒しとけ、という事だろう。
じゃあ、そろそろ武器の準備でも────
「坊主、危ねぇ!!」
「ひゃい!?」
フォードに呼ばれ咄嗟に頭を下げる。
その瞬間、俺の頭スレスレを何かが飛んでいった。
「カラ、カラカラカラ………」
後ろを振り向くと、そこには骨格標本がいた。
「学校七不思議だぁぁぁあ!!!」
「こいつは、スケルトン……のウィザード──の、上位種だな」
「スケルトン・ハイウィザード、だね」
「……………スケルトン・ハイウィザード…?」
しっかりと骨格標本をみると、確かに「スケルトン・ハイウィザード Lv.85」の文字が……
「Lv.85!!?」
「何を驚いているんだ、こいつは弱いほうだろう?」
「フォードの言う通りだ。85位ならグレン王国を少し出ればうろうろいるぞ」
「……………え?」
あ、そうか、この世界の最高レベルは999だった。
どうしてもレベル上限は99だと思ってしまう俺がいるんだよな。わかるだろ?
「まぁ坊主、こいつを殺ったら詳しく教えてやろうではないか、ハッハッハ!」
と言いながらフォードはスケルトン・ハイウィザードのところへ走っていく────と思ったらもうアイツの後ろに背中合わせに立っていた。
「あばよ、骨野郎」
「カラ……!」
そしてそのまま右回転。
いつ抜いたのか分からない、光り輝く剣を右手に持ち、綺麗な剣筋が描かれる。
骨くんは、左腰から右肩まで切り上げられた。
走り出してからの時間、1秒もない。
スケルトン・ハイウィザードはそのまま崩れさり、残ったのは剣を右上に掲げながら残心を取るフォードのみ。
そして相手の命の灯火が消えたことを確認し、フォードは剣を鞘へ収めた。




