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竜騎士様のお通りだ!  作者: 闇砂糖
グレン王国編
32/41

32.知る怖さ

「いま、情報が入った。マリーはどうやらゴダ森林深部にある"漆黒の井戸"にいるらしい」

「漆黒の井戸?なんだその明らかに危なそうな場所は…」

「危なそうというか、馬鹿みたいに危ないぞ。……まさかとは思うが空、漆黒の井戸すら知らないとは言わないよな……?」

「ま、まぁ、そりゃ勿論……な?」

「………はぁ、ちゃんと聞いてろよ?」


アグネーゼの説明によると"漆黒の井戸"とは俗称であり、正確には"ゴダ水路入口"であるのだとか。ゴダ森林の深部にあり、その周辺に生息しているのはゴブリンだのスライムだの唯の低レベルな魔物であり、近づく分には何の問題もないのだそう。

だが、1歩その井戸を降りて中へと入ってしまうとあら大変。

新米冒険者の町といわれるグレン王国周辺には、いてはいけないような超極悪級の魔物がうじゃうじゃ歩き回っているらしい。

その、頭おかしい生態系から、漆黒の井戸と呼ばれているのだとか。


「ふむ、つまり俺らが助けに行くのはオワタ式だと思っていいのかな?」

「何を言ってるんだい?空。僕も君も充分強いんだ。いや、失敬。僕は充分過ぎるほど強いから問題は無い」

「うんそーだねところでフォード、そこのところはどうなんだ?」

「あぁ。俺がいるから何の問題もないぞ?はっはっは!」

「そうでしたね。999レベルですもんね!」


という訳で、絶対俺達が行ってはいけない場所に、最強の仲間と行くことになってしまった……




「────ここが、ゴダ森林深部か……」


ゴダ森林深部。


奥に行けば行くほど、どんどん木が生い茂る。

今いる場所の時点で、既に空がしっかり見えず、昼間であるにも関わらず結構な暗さである。


道中に出てきた魔物は全てゴブリンやスライムなどの低レベルなものだけであり、俺やアグネーゼだけで簡単に対処できていた。


景色はというとまぁ緑。

前を見ても緑、後ろも緑、下も緑、右も左も緑緑緑。緑以外の何があるの?って位緑緑。もう、俺は緑に縁があるのかなぁ?ってくらいの緑。


さて、緑がゲシュタルト崩壊した所でフォードが解説を始めた。


「よし、だいぶ奥まで来たな。ここら辺は既に"ゴダ森林深部"と言われる場所になる。まぁさっき言った"漆黒の水路"にさえ入らなければどんなに置くまで進もうとゴブリンやスライムしか出ないけどな。そんで、あそこに見えるのがマリーのいるであろう地下への入口、"ゴダ水路入口"だ」


フォードが指す先を見ると、井戸があった。


うん、井戸。


石で出来た井戸。その上には木製の屋根がついている。

そして周りの地面だけ円状で草が刈られており、井戸が強調されている。


「よし、マリーさんを助けに行こう!」


早速俺は井戸へ向かおうと歩き始めた。

が、その瞬間


グンッっ!!!


「っ!?」

「うわっ!な、何が起きたんだよ!」


俺とアグネーゼは謎の力で押さえつけられた。いや、正しくはそんな感触があった。


「はっはっは!この場所が危険だって事を体が無意識に感じ取ったんだろうな」


1人だけ平気そうな顔をしていたフォードがそう話し始める。


「こんな感覚、稽古では感じたことない………この場所が高レベル、危険地域だってことを表してるって事なのか…?」

「まぁそういうことですな。その井戸を一歩降りればそこは君達にとって異次元レベルの強さの化け物の住処になる…そういうことですよ」

「フォードが前に教えてくれたな……高レベルな魔物が放つプレッシャー……」

「そうですよ、お嬢。まぁプレッシャーを放てるのは俺も同じですがね」


────プレッシャー、か……


ここにいる魔物達が全く別物だと、俺とは比べ物にならないほどの奴らだと、それが証明しているのだ。

敵の姿を見ることすら叶わないかもしれない。

気付いたら死んでるかもしれない。

動けないかもしれない。

剣を抜けないかもしれない。


(────!!!?)


………なんだよ今のは……

心臓が締まるような、息が止まるような、そんな感じ。これは……恐怖…?


………そりゃそうだよな。なんかこの環境にすぐに馴染んじゃったけど、俺はこの世界に来て1週間も経っていないんだから。


今まで闘ってきた奴らもみんな低レベルの雑魚。俺はそれでも死にそうになったんだ。

あの時は覚悟できたけど、今回は違う。


"自分から"死に場所にいくんだ。


それはもう自殺と同義語。


死と隣り合わせ、いつ死ぬかわからないなんて環境で生きたことなんか一度もなかったのに。

相手の強さは未知数。分かってるのは自分より強い事ただそれだけ。


────どうしよう、行きたくなくなっちまった。


もし死んだらどうなるのだろう?もう生き返れないだろうな。


─────行きたくない。生きたい。生きたい生きたい生きたい行きたくない生きたい行きたくない行きたくない行きたくない生きたい生きたい生きたい生きたい行きたい生きたい生きたい生きたい────


嫌だ死にたくないまだ生きたい死ぬのは嫌だ!


「うぁ、うっ、うぅ………うわ…うわっ………」

「おいどうした、空?空っ!?」


(死にたく、ない…………)



──そんな時だった。


(安心しろ、我が主様。我がいる限り、其方が死ぬ事は決してないのだからな)


っ!……この声は……ロドリゲスか?


(そうだぞ。我は監視役なのだ。主様に死なれては我は"監視役兼忌み種"から唯の忌み種に戻ってしまうからの。其方を殺させるわけが無かろう?)


そうだろう!?だから俺は行きたくないっ!死にたくない!


(話を聞け、主様。其方は強い。我の力を持つのだぞ?竜の、それも忌み種のな)


……俺には使えないだろう…?宝の持ち腐れだよ……


(ふぅ、全く情けないのぉ。この会話はマシューも聞いているというのに、そんなんで良いのか?)


なっ、マシューも……?


(ねぇ、おにいちゃん?おにいちゃんはそんなよわいひとなの?ちがうでちょ!まちゅーのことたすけてくれたじゃん!もっともーっとちゅよいでちょ!)


───マシュー……………


(全くその通りじゃ、主様よ。あの時マシューを助けてくれたではないか。あの時の勇気はどうした?覇気はどうした?怒りはどうした?あのマリーとやらにも世話になっているだろう?その恩を返さずにいいのか?フォードとやらに恩を返さなくていいのか?………それに"行きたい"だろう?)


俺でも、できる……のか………?その言葉を………信じてもいいのか……?


(勿論じゃ。誰の言葉と心得る?伝説の忌み種であり、最強の竜、バハムートであるぞ?そして、其方は我が主にして眷属、忌み種神木空であるのだから!)


──────忌み種、バハムート、ね……

いつもキャラ崩壊してる癖に無駄にかっこいいこと言いやがって………


笑わせてくれるじゃねぇか、なぁ?


「おい、空!聞こえているか!?いつまでそこにいるつもりだ?さっさと井戸の中に入るぞ。あ、もしかして怖くなっちゃったのかなぁ?」

「ふんっ、そんな訳ねぇだろ?俺を誰だと思ってやがる?」

「ゴブリンの夕飯だろう?」

「殺したろか?」

「殺れるもんなら殺ってみな!早く来ないと置いてくよ!」

「へいへい……」


もっと自信をもっていこう。ありがとな、ロドリゲス、マシュー。おかげで目が覚めたよ。


俺は、もう立派に忌み種なんだから。世界から恐れられる存在になったんだから。


俺に、怖いものなんてねぇだろ!


「じゃあ、行こうか……」


こうして俺達は、井戸にかかっている梯子を下っていった。

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