30.何者が
「マリーが、攫われた……」
フォードからこの話を聞いて既に30分が過ぎただろうか?
俺達3人はグレン王国城下町に戻ってきていた。
「おい、フォード!どういう事なんだ!?……いや、違うな……何が起きたんだ?」
「何が起きたのか、か…………そうだな。簡単に話すと、この街が攻められた、という事だ」
「せ、攻められた!?」
「そうです、お嬢様。あなたは城暮らしですからよく分からないでしょうが、意外とよくある事ですよ?」
「そ、そうなのか……やっぱり僕は世間知らずなのかもしれないな……」
「フォード、攻められたって、何に攻められたんだ?」
「ふむ、これは少し驚いたんだが……魔族なんだ」
「魔族………」
「そうだ。魔族だ。魔族の話を聞いたことはあるか?坊主」
「……いや、ないな。ちゃんと聞いたことは無い」
「そうか、まぁこれは一般人でも詳しく知ってるやつはあまりいないから仕方ないだろうな。簡単に説明してやる」
「あぁ、助かるよ…」
「まず、魔族っていうのは魔王の配下の者達のことを指すんだ。正確には、魔界に住むヤツらのことなんだけどな」
「魔界?」
「うむ、魔界だ。まぁ魔界と言っても別の世界にある訳では無い。普通にこの世界にある。まぁ、地下だったり逆に上の方だったりするんだけどな」
「なるほど……」
「そして、魔族と人間は戦争状態にあるんだ」
「……それが今回攻められた理由じゃねぇのか?」
「いや、こんな駆け出し冒険者の集まる街を攻めたところで奴らにはそこまでメリットはないだろう?それに、そもそも……」
「そもそも?」
「今はほぼ休戦中だったんだ。魔族と人間はな」
「そ、そうなのか?それはいつから……」
「今から100年程前だと聞くが……そもそも、この話はさっきギルドの中でした筈だぞ?」
「あ?そういえばそうだな。忘れてたぜ」
「おい、少し待て!という事は、この街が攻められる理由は一つもないじゃないか!」
「そうです。だから驚いたんですよ自分も……」
「アグネーゼ、今はそれじゃなくて魔族の情報が先だ。フォード、続きを頼む」
「あぁ……それでだな、魔族は見た目は基本的に人と同じなんだが、あちらは怖いくらいの階級社会でな、同じ魔族でも立場とかそこら辺が全然違うんだ」
「サタンとかルシファーとかか?」
「バカタレ、あんなお偉いさん方はもう少し違う次元だよ。あそこは神みたいなもんだよ………そうだな、例えていうなら生まれた瞬間からギルドマスター会議の中の立場を争っているようなもんだ……はぁ行きたくねぇなぁ今月…」
言いながら上を向くフォード。その目には光る何かが見えた。
うん、なんとなく察したよ、ギルマスはギルマスで大変なんだね……
「ま、まぁとにかく、あっちはあっちでまた大変なんだよ。あ、あと、魔物と魔族はまた別だぞ。魔物は魔族でも人間でも襲うからな」
「へーそうなのか?てっきり魔物は魔族側なんだと思ってたよ。使い魔的なのはないのか?」
「それは確かにいるが、魔族に限らず人間にもいる。そこに異なる部分はない」
「うーん、じゃあそこまで違いはないのか?俺らと魔族には」
「その通りかもしれないな。……いや、大きな違いといえば一つあるぞ。魔族の奴らは……正しくいうと幹部レベルの力を持つ奴らは獣化できる奴らや、魔法関係なく火を吹くヤツ、翼生えてるやつらとか、人間とは全く違う力を持つ奴らもいる」
「おぉ…結構違うんだな……」
「そこはな。あと、基本的に闇属性の魔法を使う奴らが多いんだ。個人差はあるけどな」
「色々あるんだなぁ…」
アグネーゼが途中から話を聞かずにギルド内を彷徨いていたものの、魔族に関して俺はある程度の知識を得ることが出来た。
「それで、魔族の奴らはどこにいるんだ?場所は把握出来てるのか?」
「あぁ、それなら偵察舞台が今やっている所だ。場所が分かり次第すぐに向かう事になっている」
「じゃあ、それまでは準備でもしてるか…」
「そうしてくれ。すまんな、折角の初クエストなのにこんなことになってしまって………」
「ふっ、フォードらしくないな。いちいち謝らなくてもいいだろう?マリーさんの方が優先だよ」
「ほぉ、言ってくれるじゃねぇか坊主のくせに……」
俺らは顔を見合わせて笑い合う。周りから見たら師匠と弟子ってところだろうか?そんな関係も、アグネーゼとフォードを見ているといいなぁと思う。アグネーゼは嫌いだけどな。
だがマリーさんに恩があるのもまた事実。
街に連れ出してもらえたおかげで俺もこの街のことを少しは知れた。
マリーさんは絶対に助ける……!




