28.腕
ゴブリンは、俺の背後にいた。
「────はいぃぃ!!!?」
「ギャギャキャギャッッッ!!」
ゴブリンは俺の背中を突いた。
「ぐぅっ!!?」
「はっはっは!まぁ頑張れ坊主!」
「あとで覚えとけよフォードぉぉ!!」
俺は後ろへ飛んで距離を取る。が、俺が着地する頃には既に目の前にゴブリンがいて、
バシッ!
「いてぇっ!」
右頬を殴られた。
くそ、血の味がしやがる。口の中切っちまった。
「おーい、そらくーん?ゴブリンに負けちゃうのぉ?あ、夕飯になるのか(笑)」
「てめぇもウゼェ!!」
敵のゴブリン、やけにパンチが痛いと思ったら、グローブの上にナックルバスターつけてやがった。
でも、確かにこのままではやられてしまう。でも、まさかこの状況で存在消去を使うわけにはいかない。先程フォードに怒られたばっかだ。
どうすればいいんだ………?
と悩んでいる間にもゴブリンはどんどん攻撃を仕掛けようとしてくる。
恐らく、俺のことを自分より格下だと認識したのだろう。攻撃も単調になり、前から突撃するだけになっている。
「ギャギャ!」
「うぜぇ!!」
それがあまりにもうざかったので俺は突っ込んできたゴブリンの顔面を先ほどフォードにやったようにぶん殴った、のだが……
パァァァァァァアン!!
「………ほぇ?」
「え?………えぇ!?」
「凄いな坊主。はっはっは!」
殴った次の瞬間には、ゴブリンの頭は木っ端微塵に吹っ飛んでいた。
…………えええええ!?何があったの!?今消し飛んだよね!?殴っただけだよ?俺はっ!?
だがその時、フォードの表情が急に変わる。そして真面目な顔で俺に声をかけた。
「……おい、坊主。その右腕はなんだ?」
え?右腕?そんなこと言われたって別に何もないだろ────
「………うろ、こ?…鱗っ!!?」
「え?鱗だ。なんだそれは!空!」
そう、俺の右腕は鱗がつき、更に手は鋭い爪の生えたものになっていた。
……これはまるで…
「竜の腕みたいだ………」
そして、俺の腕を不思議そうに見つめているアグネーゼとフォード。
どうしよう、心当たりしかないよ。こうなった理由。多分そういうことだと思うんだ。特別なことはなんもしてないんだけど竜って言ったらアレしかないよねあいつらしかいないよね。
「ま、まぁいいじゃん?強いから……」
「そういう問題ではないだろう、空!君の腕は今竜の腕そのものだぞ!それでいいのか!?」
「う、うん。別に嫌ではないんだけど……」
だって、そんな驚くってことは珍しいんだろ?俺は珍しい力を手に入れたってことだろ?なら、俺的には嫌なことないんだよね。
「嫌ではない?君の力は人外のものだぞ?それを嫌ではないで済ませるなど……」
「まぁ落ち着いてくだせぇお嬢さま。坊主がいいって言ってるならそれでいいでしょう?ですが、その事例は俺も聞いたことないんだ。だから、俺は一度街に戻ってこの事を報告してくる。君達はこのまま練習していてくれ」
いやまて、報告されるのはまずい!これがそのままあいつらの身バレに繋がらないとは言い切れないだろう。
「ま、待ってくれフォード!」
「ん?なんだ?坊主」
「いや、その……この事は報告しないでくれないか?」
だが、フォードは不思議そうにこちらを見る。
「なんでだ?これは新たな発見だぞ?報告しなければならないだろう?」
「うっ、それはそうだけど……もしこれで俺が変なことに付き合わされることになったら面倒だし……」
正論は正論だからなぁ。言い訳みたいになっちゃうんだよどうしても。
「空。君はその研究みたいなのをされるのが嫌なのだろう?」
「ま、まぁそうだね……」
「なら、僕が直々にお父様に伝えておこうてはないか。そうすれば空は安全だ」
「ふぇ……?」
「『お父様、私の下僕がカクカクシカジカなのですが……』と伝えておこう」
「てめぇ……!!」
「よし、それでいこう。俺も別にその腕自体にはさほど興味はないんだ。では、頼みましたぜお嬢さま。俺は行ってくるぞ」
「え、ちょっ!」
「なんだ?坊主。まだ何かあるのか?」
くそ、これ以上言うと怪しまれるか!?畜生、ここは引き下がるべきなのか……?
「はっはっは!用事があるなら帰ってきてから聞こうじゃないか。では行ってくるぞ」
考えている間にフォードは行ってしまった。
ていうか、ジャンプしていったぞフォード。ちゃっかりカッコイイな……忍者みたい。
「行っちゃったね……」
「うん、行ってしまったな……」
残された俺とアグネーゼは暫くポカーンとしていた。




