18.2人目
「お前らを殺せば────────終わりだな?」
「!?」
「こいつ、さっきまで倒れてたのに!?」
「くそ、早く撒きましょグッはァァ!!?」
「トル!!!」
まず、1人目を蹴り飛ばす。トルと呼ばれた男は民家の壁に突っ込んでそのまま動かなくなった。民家の壁に穴を開けてしまったが気にしない。
「なんだこいつは!?さっきまでとはあからさまに違う……!、てめぇ、傷跡が残って………」
「おい、もう一回聞くぞ?俺のマシューに、
何をした?」
「!!!?」
彼らは思わず、後ろに下がる。
俺の目的、それはマシューの奪還。最善?何をもって最善とする?街が無事であれば?奴らを生かせば?
そんなの違う。
"マシューの奪還"唯それだけが成功すれば、それが最善ではないか。
「てめぇ、さっきまで力を隠していやがったのか!」
「そんなことはどうでもいいだろう?早くその子を離せ」
「おやびん、逃げるが勝ちでっせ!行きやしょう!」
こちらに背を向けて走り出す。
戦闘において、それが何を意味するのか知って行っているなら、コイツらは三流未満だ。
「そうか、あくまで返す気は無いんだな?じゃあ────死ね」
もう面倒だ。マシューを消し飛ばさないようにするイメージをすればいいんだろ?簡単だ。俺は最善を尽くさせてもらおう。
「森羅万象のもとに全てを晒せ────存在消去……!」
「なんだこの魔法はっ!?」
そうだ、何も分からぬまま消えろ。俺のマシューに手を出すなんて許さない。
奴らのいる場所に座標が固定される。それ以外のものには決して影響せず、対象のみに作用する。既に魔法は放たれた。俺の魔法はどんどん奴らに近づいていく。さぁ、終焉の時だ。
────永遠に、消えてなくなれっ……!!
「はーい、ストーップ。僕の管轄内で殺しはさせないよ?」
「………んなっ!?」
奴らに魔法が当たる直前、出てきたのはフォードだった。
「馬鹿野郎っおっさん!そこに出たら死ぬぞ!」
俺は前回の使用で使い方を把握出来たので、今回の標的は「マシューを除く周囲の空間の人間」としてこの魔法を使った。
つまり、空間自体にかけているため、マシュー以外の第三者がその場所に入ればその人も消えてしまうことになる。
よって、フォードは絶体絶命どころかもう死んでると言っても過言ではないのだ。
だが、そんな状況であるにも関わらず、フォードは寧ろ余裕そうな表情で、こちらに向けて微笑んだ。
「禁断魔法をそんなに簡単にうってはいけないだろう?はっはっは!」
「…え?」
「森羅万象のもとに全てを偽れ────存在幻影」
白か黒か赤か青かそれとも黄色か、何色とは言い難い何かが、座標空間の間に割って入る。
そして、その何かはマシューとその他3人へと変わった。
「な、なに!?」
それを認知した時には、既に魔法が作用し、座標を消し飛ばした。
「お、おい、おっさん!今何をしたんだ!?」
いつの間にか俺の背後にいたフォードに尋ねる。
「若いな小僧。はっはっは!いいから少し見ていな」
「見ていろって言ったって、俺の存在消去がアイツらを消し飛ばしただけ……!?」
話している途中で、俺は思わず驚いてしまった。
煙が晴れた先には、マシューと"あとの3人"がいたのだから。
「へ………ええぇぇぇ!!?」
「はっはっは!良い驚き方だな!対抗した甲斐があったってもんだ!」
やつら3人も「何があったのかしらん?」みたいな顔して周りをキョロキョロしている。
「俺の……魔法が、無効化された……?」
「そのとおりだ。正確には、君の魔法は作用しているがね。私が作用する先を変えさせてもらっただけだ」
俺は息を切らしながら尋ねているにも関わらず、フォードは顔色一つ変えずに話している。
「………というか、おっさん、さっき"存在"と口にしなかったか?」
「気付くだろうね。確かに言ったよ。だが、その話はまた後でしようではないか」
「は?なんで……」
と、聞き返そうとするとフォードが俺の後ろをチョイチョイと指さす。
その先を見ると、そこには半泣きになったマシューがいた。
「……………マ、マシュぅぅぅぅぅぅうううう!!!!」
「きゃぁぁぁぁ!!!」
俺は思わずマシューを抱き抱える。
「マシュー!怪我ないか?痛いところはないか?心に傷は負ってないか?元気そうでよかったぁぁ!!」
「まだなにもこたえてないむぎゅ……」
俺はもう一度マシューを抱きしめた。
「ごめんな、俺にもう少し力があれば……」
そう、俺に力があればこんなことにはならなかったのだ。あいつらをフルボッコにできるくらいの力が俺にあれば、マシューにこんな怖い思いをさせなくて済んだのだ。
だが、マシューはそんな俺のほっぺを持つと、
「……おちおきっ!!」
思いっ切り引っ張った。
「あいだだだだだだだだだだたっっ!!!」
「なにか、ゆうことはないんでちゅかっ!」
「ゴメンナサイ許して強くなるからイダダ!!」
「そこじゃないの!ちゃんとかんがえたの?」
「そんな事言ったって、俺がなにかしたか?」
というといきなり、マシューはしゅんとなって下を向いてしまった。
あちゃー、御機嫌斜めか?なにかいけない事言ったか?
「……………ったの………」
「え?なんて?」
「だから、しょの……………かったの!」
「はぁ?はっきり言えよマシュー」
「なんで、すぐにまちゅーのところきてくれなかったの!!」
「……へ?」
思わず変な声を出してしまったが、マシューの熱弁は止まらない。
「まちゅーちゅごいこわくて、でもおにいちゃんたちゅけくれてうれしくて、なのにおにいちゃんはまちゅーじゃなくて、その……おっさんのところにいっちゃったでしょ?」
「あ、あ……」
そして、マシューは目に涙を浮かべ、手を強く握りながら俺にこう言い放った。
「まちゅーはかなちかったのっ!」
………確かにそうだ。俺はマシューを助けるためだけに禁断魔法まで打って、その癖それを止められたらマシューを放ってフォードの方に行ってしまったのだ。
それは………だめだなぁ…
俺はゆっくりとグスングスン泣いているマシューに近づいて、ポンッと頭に手を置いた。
「あ……」
そして、顔を近づけて、話す。
「マシュー、ごめんな。お前の気持ち全然考えてなかった。あの時、俺の魔法が止められたのが不思議すぎて思わず聞かざるを得ないと思っちゃったんだ」
「………え、えっと……」
俺はマシューの頭に手を乗せて、精一杯心を込めて
「マシュー」
「ひゃぃっ!」
「悪かったな」
「………………!!」
何故かマシューは顔を真っ赤にしていた。
「? マシューどうした?熱か?」
「ち、ちがうもんっ!こ、こんかいだけはゆるちてあげましゅ!つぎからきをちゅけてねっ!」
「お、おい!なにを怒ってるんだ…」
「べちゅにおこってないっ!」
と言うとマシューは超駆け足でギルドの中に戻っていった……と、扉の手前で立ち止まり、
「おにいちゃん!」
「………だいちゅきっ!!」
そう言い捨て中に入っていった。
………?何があったんだろうか?
と、周りを見渡すとこっそりこの場から立ち去ろうとしている3人(担がれている人1名)。
「っな!?ちょ、てめぇら!!」
「うるせぇ!とっとと帰るんだよ!」
が、そんな3人に近づく一つの影……
「やぁやぁ、赤い三連星の皆さん。誘拐未遂でウチのギルドまで来てもらえるかな?」
と、満面の笑みで尋ねた。
「ひゃ、ひゃい…………」
彼らが返事と同時にもげそうなほど首を縦に振って答えた。
「ふぅ、これで一安心────」
その瞬間、俺の意識は暗闇へ飲み込まれた。




