15.ギルドへ
「取り敢えずギルドみたいなやつ探すか」
なんて言わなきゃよかったと今後悔してる。
だって人に聞こうとすると全員が全員百発百中で汚物を見るような目でこちらを見つめながら、マシューに同情の目を向け、俺の近くからいなくなるのだもの。
勿論俺には幼女を脱がす趣味はないので、すぐに素マントをやめ服は買ったのだがそれでも俺の顔はこの町中に広まったようで、もう誰も俺の事を人としてみてくれない。
話しかけるたびにこの反応だからもう心が限界です。
「おにいちゃん?しっぽきられたりざーどまんみたいな顔になってるよ?」
「分かりやすい説明ありがとう。でもな、俺が切られたのは尻尾じゃなくて、この世界での未来なんだ。まぁ切られたというより断ち切られたんだけどね。うふふふふ………」
「ご、ごめんなさい」
なんか謝られた。
だが、どの世界でも可哀想な人に目をかけてくれる優しい人はいるもので、
「冒険者の身なりをした方、きっと初めてだから分からないのだろう?ギルド本部なら、噴水街道西の方向にある。この街は広いからよく駆け出しの冒険者さんが迷われるんだ。気をつけるといいよ」
なんて言ってくれたのだ。
俺はそのおじいさんに顔面が擦れるくらい土下座をして、たっぷりドン引きされた後に、その教えてもらった場所へと向かった。
「ギルド本部………え?これ?」
「なんかかふぇみたい!」
カフェでした。
ギルド本部っていうからにはそれっぽい感じ(それっぽいで伝わるかね)だと予想していたのだが、普通にカフェだった。
例えて言うならど○ぶつの森のやつみたいな感じ。
「ギルドマスターは無口だぞきっと」
「え?なんで?」
「いや、なんでもねぇ……」
まぁ、ずっと前に立っていても状況は変わらないから、入店してみる。
ドアを開くと「カランコローン」とカフェな音が流れた。
それと同時に「グサリ」という音もした。
「いらっしゃい、冒険者。この攻撃は当たらないと知って避けなかったのか?それともただ単に避けれなかったのか?」
「………えくせれんと……」
俺の目の前には俺の顔のすぐ横の壁をナイフで突き刺しているダンディなおっさんがいた。
「この反応速度じゃ、まだ実戦経験ないだろ、あんた。冒険者舐めてっと死ぬぞ、ボウズ」
「は、はひ………」
「おじちゃんつよーい!」
うん。
ギルド怖い。
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「はっはっは!悪かったなボウズ!そんなに驚かせる気は無かったんだぜ?ここの常連なら俺がこれをやる事は知って避けるし、知らなくて、弱ぇ奴は今みたいに動けねぇ。まぁ初見さんで俺の動きを捌けたやつは今までに数人しかいねぇけどな」
「ごめんなさいね。うちの旦那はやる時やるんだけどいつもこんな感じで騒がしい人なのよ」
「やる時ってのはどんな時だ?夜の話か?マリー?はっはっは!」
「ウフフ、その口2度と開けなくするわよ?フォード?冗談抜きで」
「ごめんなさい……」
……キャラが濃いです。
この2人はギルドマスターのフォードと、その奥さんのマリー。
フォードがギルドの全般、マリーが接客といった感じで営んでいるらしい。
「ボウズは見たところ駆け出しの冒険者だろ?そりゃこの俺の攻撃を見れなかったってしょうがねぇさ」
「は、はぁ」
なんというか、このフォードさんは他の人たちとは違う、オーラみたいなのがある。圧倒的な存在感、そして初めて会ったのにも関わらずいるだけで大丈夫そうな信頼感がある。
「おい、駆け出し。一応教えてやるけど俺はこのギルドに3年間毎日通って、ようやくジイさんの攻撃見切れるようになったぜ?」
「え?まじかよ………」
「そりゃそうだ。なんてったって、このフォードさんは、この世界に君臨する四天王の1人、"血に溺れた狩人"と呼ばれ、一部の奴らからは崇められてるんだからな」
「四天王……?」
「おめぇ、ほんとに駆け出しなんだな。教えてやるよ。四天王ってのは、その名の通りこの世界に4人しかいない冒険者の頂点のことを指すんだ。条件はただ1つ。『レベルを999にすること』だ」
「レベル999⁉︎このおっさんが⁉︎」
「生意気なボウズが、失礼なこと言うじゃねえか!はっはっは!」
「……それ他で言ったら命知らずだぜ?まぁ要はここのギルドマスターのは世界で4本の指に入る強さを持ってるってわけだ。分かったか?」
「よーくわかったぜ、サンキュー」
このギルドで昼間っから酒飲んでた奴らが親切に教えてくれた。
……にしても、このおっさんが四天王ねぇ。
「なんだその目は?俺が四天王じゃ不服か?」
「いーえ!決してそんな事はありません!」
「そうか。なら良い……っと、ところでボウズ。てめぇ装備品とかどうしてんだ?」
「え?そういうシステム?」
「しすてむ?なんだそりゃ?よく分かんねえが、冒険者になるんだから、それ位は知ってもらわねぇといけねぇぞ」
「いや、わかってるわかってる。ゲームでよくやったから」
「さっきから、わからない言葉を並べないでくれよ。じゃあわかってるっていうなら、さっさと手を出してくれ。あとコマンドウィンドウも」
「え?なんで?」
「なんでって……勿論ボウズの適正武器とか、あとその他諸々を調べるために決まってるだろ?」
「あ、おぅ!知ってたけどな!」
俺は手を出して、コマンドウィンドウを開く。
「あ、ボウズ。手を出すってのは嘘だから引っ込めていいぞ」
「俺、多分あんたのこと嫌いだわ!」
「はっはっは!」
なんで会話をしながらフォードは俺のコマンドウィンドウを見ていく。
その時に一瞬表情が硬くなったのは気のせいだろうか?
「ボウズ、今から調べてくっからちょっと待っててくれよ。ていうか、おめぇレベル1って事はクエストも受けたことねえな?マリーに言ってクエストを受注してこい」
「え?あ、了解です」
フォードは奥の部屋へ行ってしまった。
「冒険者さん?」
「え?あ、マリーさん」
「名前はなんていうの?」
「えーと、神木 空って言います」
「空、ね。分かったわ。じゃあ空、早速だけど1ついいクエストがあるのよ。慣れるためにもそのクエストを受けてみない?」
「あ、いいですね。お願いします」
「ふふふ。ちょっと待っててね」
マリーさんはさっきのフォードさんとの会話とは随分イメージが違うな。
結構お淑やかな人だったぞ。
「これよ、空」
「ん?【時計台の修理】ってヤツですか?」
「そうよ。噴水広場のシンボルだったんだけど、何故か今朝消えてしまってね」
「き、消えた⁉︎」
「そうなの。目撃者が言うには、光に包まれて次見た時には"まるでもともと無かったかのように消えていた"らしくてね。まぁ原因は分からないのだけれど、兎に角早急に修理しなきゃいけないからその材料を集めて欲しいのよ」
「光に包まれて、ね。ふ、ふーん。不思議なこともありますねー」
「おにいちゃんがまほうでけしちゃっ────」
「なんだ?マシュー?お腹痛いならトイレに行ってきなさい」
「わたしたちをたおそうとしたときにまちがえちゃったん────」
「マシュー、なんのお菓子が欲しいかな?」
「うまーぼう」
「100本買ってやるから少し静かにして?」
「いぇーい!」
「時計台の修理の為の材料集めですね?分かります」
「………あなたの所為なの?」
「断じて違いますね、はい」
「………まぁいいわ。じゃあクエストを受けるということで正式に依頼するわよ?」
「お願いします!」
『クエスト【時計台の修理】を受注しました』
俺の頭の中に音声が流れる。コマンドウィンドウには、[クエストログ]が追加されていた。
「えっと、じゃあもう出発してもいいんですか?」
「あら、ちょっと待ってね。まだあなたの武器が決まってないわ。旦那が出してからクエストに出発して頂戴」
「分かりました。……じゃああの席に座って待つとするか」
「すわってまつか!」
俺は店の奥にある席へと向かった。
とその時、
「ガシッ!」
「あ、すみません」
「おいこら?駆け出し?てめぇどこに目つけて歩いてんだコラ?」
「そうだそうだ!ウチらのリーダーなめてんのかっ⁉︎」
「調子乗ってんじゃねえよ!やっちまってくだせぇ!」
え?え?なにこれ?
「ガキ?てめぇわざと肩ぶつけて喧嘩売るのは良いけどよ?喧嘩売る相手が間違ってるんじゃねえのか?あ?」
「えぇ?そんなことしてねぇよ!喧嘩売るほど暇じゃねえんだ俺は!」
「んだとてめぇ?俺なんか喧嘩する相手にもなりゃしねえってか?あんまり調子乗ったことしてっと……息の根止めんぞ?」
「その調子でっせおやびん!」
「はは!ビビってまっせこいつ!」
ちげぇよ馬鹿野郎。俺がビビってんのはな、俺が本当にビビってるのはな!
『初めて入るギルドでは必ず先輩冒険者トリオに喧嘩売られるフラグ』
が本当に存在していたことなんだよぉぉぉ!!




