プロローグ?
見切り発車よーい!
さようなら。愛しい国。愛しい民。
彼らを護るために私は明日、帝国へと嫁ぎに行く。
例え家族に疎まれ、国を売った悪女と悪評を立てられ愛しい民たちに石を投げられても。
例え大陸の端っこでとても小さくて弱い国だとしても。
ここは、私の生まれ故郷だから。
神聖レルム暦×××年
収穫月赤の日
ティーアンジェ・クレムドゥ・アンジェルーン
ティーアンジェの国は大陸の端にある。
手先の器用なものが多く、様々な細工物を輸出して過ごしていた。
小さいながらにそこそこの豊かさを持つ国で建国から1度も革命等を起こさずに同じ王朝が続いていた。
国は豊かだが、歴史にばかり誇りを持ち、保守的で民の成長も国としての成長も建国以来ほとんど進んでいなかった。
300年以上戦争などしていない軍とは名ばかりの集団に、形ばかりの騎士団。
戦略書は埃をかぶり、王族たちは何を思ったのか驕り高ぶるものばかりだった。
なぜそんな国が滅ぼされなかったかと言われると理由は単純。
民は幼い頃から洗脳に近い考えを刷り込まれる。
王国が滅びれば自分たちも自死を賜らないといけないと。
国が小さい分その教えは強固なものとなり、技術力を目当てに乗り込んでも国民は自分から死んでいくし、土地自体には森と海ばかりで価値など無い。
そんな、単純な理由でどの国もティーアンジェの国に手を出さなかった。
それを知らず王族はみな傲慢にふんぞり返る。ティーアンジェからすれば父や母や兄弟の態度はとても恐ろしいものだった。
ティーアンジェはそんな保守的で傲慢な王族の中に生まれた当代唯一の女性王族ながら、その扱いは異常だった。
月の光を固めたような穏やかな白銀の髪にアメシストを思い起こす淡い紫の双眸。
月の女神がこの世に顕現したようなその姿は王族の特徴には一切当てはまらなかった。
故にティーアンジェは迫害された。
そもそも太陽神を主神とするこの国で月を思わせる彼女は異教的で誰もが嫌悪を抱き必要最低限近付こうとしなかった。
15歳になり、結婚を出来る歳になれば神殿に巫女として入り、神の身許へと向かうのは半ば決定的で誰とも言葉を交わさずにティーアンジェはその日まで無為に過ごしていた。
神殿に入れば毒杯が用意してある。
それで自分の意味の無い人生にさよならが出来るとどこか喜びのようなものすら、感じていた
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