不本意入学からの脱却
おはよう。
ゴールデンウィーク明けにも拘らず、出席者はさほど減っていないようだね。
他の授業の話を聞くと、どうも連休気分が抜けずにそのまま学校に来なくなってしまう人がいるらしいけど、この授業に限ってはそうでもないっぽいから、朝からちょっと嬉しい気分になっている。
先週のレスポンスペーパーに書いてくれた内容を家に帰ってから読んだよ。
いや、皆色々な理由があって不本意なんだと思うと、大学時代君たちのような人が私の周りに一人でもいてくれたらもっと面白い学生時代を過ごせたんじゃないかって本気で考えたよ。
あ、2分過ぎてるな。
・・・授業に入ろうか。
さて、先週不本意入学の定義を明らかにしたところで、君たちも自分がどうして不本意に思っているのか、が改めてよく分かったと思う。
今週はいきなりかもしれないが、その「不本意入学」から脱却・・・もしくは脱出する方法を考えてみよう。
本当はグループワークか何かしてもらった方が良いのかもしれないけど、私は学生時代そういってことが嫌いだったので、自分の授業ではやらないことに決めているんだ。
それじゃあ、先週の定義の順番通りに脱却方法を考えていこう。
話続きで眠くなるかもしれないけど、自分が関係する不本意入学のところはしっかり聞いておいた方が良いと思うよ。・・・何せ、不本意入学解消のヒントの一端を示しているのだから。
まずは、「学部不本意」の解消方法。
これには四つの方法がある。
まずは、「転部」。
ここ雅坂大学では、希望する者に特定の学部間で転部を認めている。
・・・たとえば、法学部に入学したけど、日本史研究に興味が出てきた場合。
この大学では学部二年次で文学部への転部希望が文学部において認められた場合に転部することが出来る。
ただ、転部を行う時期や行っている学部は限られているので、希望する者は良く情報を確かめておくこと。
あと、転部した先では、自分が修得してきた単位が認められる場合と認められない場合、転部先で新たに修得しなければならない単位がある場合もあるので、注意しなければならない。
確か、雅坂大学での理学部から先端工学部への転部には、一般教養科目に加えて、理学部の専門科目で所定の成績を修めていなくてはならないという規定があったはず。
不明な点は各学部の教務課で聞けば教えてもらえるよ。
次に、「編入」。
学部を変わりたいけど、自分が変わりたい学部(又は自分が所属する学部)が転部を認めていない場合、或いは自分が学びたいことを転部先の学部で学べるかどうかわからない場合に、大学を変わってしまうという方法も考えられる。
この場合、自分の望む大学・学部に編入できるというメリットも考えられるが、同時に、編入を行っている大学が少ない、自分が希望する大学・学部が編入を行っているかどうかわからない、自分が今いる大学で修得してきた単位が認められない場合がある、編入を行った先になじめない可能性もある、といったデメリットも考えられる。
勿論、入学金をまた払わなければならない、という経済的な面でのリスクも考えられる。
そして、「仮面浪人」。
大学で単位を修得しつつ、自分が望む学部の入学試験をもう一度受ける、というものだ。
この場合、同じ大学の違う学部に入るならばある程度の単位は認めてもらえるかもしれないが(認めてもらえない場合もあるけれど)、修得してきた単位を認めてもらえない場合もある。あとは費用面。
他にも、自分が勉強面での両立に耐えうるかどうか、精神的にまいってしまうのではないか、といったことも考えられる。
一学年下に入ってしまうことになる、という点も考慮すべきだ。
最後に、「大学院進学」という方法。
この場合、大学院でより自分のやりたい勉強、研究が出来るという利点があると同時に、大学院に入るまでどうするのか、自分の望む大学院に入ることが出来るのか、学部が異なる場合でも大丈夫なのか、といった問題点も浮かび上がってくる。
どの方法も一長一短あり、という感じだ。
次に、「大学不本意」の解消方法について考えてみよう。
「大学不本意」は「学部不本意」の説明の時に挙げた「編入」、「仮面浪人」、「大学院で望む学問をする」の三つの他に、「留学」が挙げられる。
「学部不本意」の場合にも「留学」の手段を使うこともできるが、「大学は不本意ではないが学部は不本意」というのが「学部不本意」の定義だから、「留学」は「大学不本意」の解消方法の方に入れることにしたんだ。
「編入」も「仮面浪人」も「大学院進学」も、学部・学科には不満は無いけど大学が不満だ、という「大学不本意」の場合には学部で必要とされる知識がある程度備わっていれば抵抗のない手段だと思う。・・・・・・いずれにせよ経済面、精神面での負担は背負うことがあるかもしれないけど。
同じ学部であれば、「編入」、「仮面浪人」の際に単位を認めてもらえる可能性も高くなるかもしれない(それは実行後に各大学の教務課に問い合わせて貰えればある程度分かるだろう)。
「大学不本意」における「大学院進学」の場合、大学が嫌すぎて学部での勉強にやる気が起きなかったりする可能性や、望む大学院に入れな買ったりする問題も考えられる。
そして、「留学」。
これは、海外の大学で自分が望む学問を外国語で行う場合を指す。
交換留学でも、実際に半年とか一年とか留学してもいいが、「語学留学」だけはやめておいた方が良い。
単に語学を学ぶだけで、「大学不本意」の解消にはつながらないうえに、自分がやりたい学問が出来るという保証もないからだ。・・・・・・語学をやりたいならば止めないが。
「留学」を行う際には、経済面が心配かもしれないが、多数留学向けの奨学金が出ているし、雅坂大学では、留学を行った際に、特定の単位として認める、という規定もある。
どうしても大学が嫌になった場合には、それも方法の一つとして考えられるのではないかと思う。
「全不本意」と「隠れ不本意」は、気づいてからが勝負だ。
「全不本意」にしろ「隠れ不本意」にしろ、取れる方法は今までの説明の中にも、そして自分で模索していく中にもたくさんある。
その中から自分に合う方法で「不本意」状態からの脱却を図ってほしい。勿論、私で良ければ相談に乗ろう。
最後に、「環境不本意」の解消方法について。
これは解消するのが一番厄介な部類に入るかもしれない。
そして、下手をすると解消できない可能性もある。
不本意の理由が「大学の施設等」にある場合、すぐには改善できない可能性が高いし、(ちょっとしたことであれば、大学の目安箱とか、福利厚生に関することなら生協の窓口に相談できる場所がある)個人ではどうにもならないこともある。(例えば、家から大学が遠い、とか)
不本意の理由が「人間関係」にある場合、不本意の原因をはっきりと見極めて、取り除くために出来る限りのことをやっていくしかない。
・・・・・・この大学の「健康増進センター」には、人間関係とか、就職、自分の健康など様々な事柄について相談できる場所がある。自分一人ではどうにも解決が図れそうにない場合、人に話を聞いてもらいたい場合はそこを利用すると良いと思う。勿論、秘密は守られるし、相談料は無料だ。講義室の前の机に「健康増進センター」の案内パンフレットを置いておくので、必要な人は取っておくといい。
どうせ社会にでれば嫌な人間と嫌でも付き合わざるを得ないんだから、大学時代くらい人間関係で悩みたくない・・・というのが、大学生の頃の私が考えていたことだ。
・・・確かにその通りだから、新しいコミュニティを作ろう、という意見と、出家遁世的な感じで勉強に没頭しよう、という意見と、社会に出る前に嫌な人間との付き合い方を学ぶのもいいんじゃないか、という意見が今なら浮かぶ。・・・当時の自分に言ってやりたい。
人間関係については個人の考え方によるところが大きいから、私がとやかく言うことは出来ない。・・・ただ、どうしても不本意で、どうしようもなくなったときには、人から距離を置く、というのも手だと思う。
それはそうと、人間関係における不本意で、見過ごしてはいけないのが「アカデミック・ハラスメント(アカハラ)」とか、「セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)」の類だ。
現在雅坂大学では人権に関する取り組みを強化しているので、「自分はアカハラを受けているのかも?それで不本意になっているのかも?」と思ったら、迷わず「雅坂大学人権問題撲滅対策課」に電話して欲しい。
「雅坂大学人権問題撲滅対策課」のパンフレットも前の机の上に並べて置いておくので、必要な人も、そうでない人も貰っておいて損は無いから、取っておくといい。
・・・・・・さて。長々と喋ってしまったが、みんな、自分の「不本意」状態を解消する手がかりが掴めただろうか。
初めてそんな方法があると知った、という人も居れば、既に知っていることを並べただけではないか、と不満に思った人もいるかもしれない。
手がかりがいまいち掴めなかった人も、手がかりが掴めた人も、これから自分が「不本意」でなくなるような方法を模索し、実行していくことになるだろう。
ただ、どの方法においても、勉強を避けて通ることは不可能だと思う。
再び試験を受けるのであれば、必要な事柄を学ばなければならないし、何か行動を起こす場合にも、予備知識があるのとないのでは動きに格段の違いがある。
知っての通り、この講義は「反抗的勉学入門」だ。・・・最近は「不本意入学を果たした君へ」という名前の方が有名になっているけども。
如何にして学び、自分の望む方向へと進んでいくか、を指し示していく授業でありたいと思っている。
・・・あと5分で授業時間が終わる。
それでは、今日の授業はここまで。
今からレスポンスペーパーを配るので、今日の日付と氏名、学籍番号、学部、学科、学年を記入した後、感想や意見や質問を書いて一番前の机に提出するように。
あと、先週にも言ったけど、来週は休講だから。・・・情報を集めてみるのもいいかもしれない。
来週は休講です。