俺も男だ
「望月、こいつは俺の幼馴染の、金井 萌愛だ」
「私はなおちゃんと長い付き合いなのよ♪」
なんかまたピリッとした空気に一瞬なったが、気にせず俺は紹介を続ける。
「で、こっちが、ついさっき知り合ったばかりの望月 未来だ」
「じゃあ私はちびっ子って呼ぶからよろしくね♪」
「え? それって名前関係無―――」
「じゃああたしはデブ女って呼ぶからよろしく」
「だから名前を―――」
「あら? 胸が大きくてごめんなさいね♪ 誰かさんと違って薄っぺらじゃないのよ」
「ふん! そんな部分大きくても邪魔になるだけだと思うけど?」
「だから名前が関係するあだ名を―――」
俺が間に割って入る隙もなく、二人は睨み合っている。二人共顔は笑っているけど、よく見ると目が笑っていない。本当に相性が悪いな、この二人。これに関しては諦めよう。
暗殺者については、萌愛に話さないほうがいいだろう。話せば、萌愛も平和な人生を送ることが出来なくなる。そんな事にはなってほしくない。
―――そんな事を考えていると、不意に望月が叫んだ。
「何これ!? 動けない!?」
「ふふっ♪ さっき、なおちゃんをバカにした罰よ♪」
驚きの顔をしている望月を見て、楽しそうに笑いながら言う萌愛。
・・・萌愛のやつ、また「アレ」を使ったな。全く。そんなに多用するなよ。
「いいよ、萌愛。別に全然気にしてないから」
「そうよねっ! こんなちびっ子の事なんて、なおちゃんが気にするはずないわよねっ!」
「え? いや、そういう意味じゃ―――」
「じゃあこのちびっ子はほっといて、私達は続きをしましょう?」
「え?」
そういうと萌愛は、服を脱ぎ始める。
「ちょっ!? ま、待ってくれ! きょ、今日はちょっと疲れたからま、また今度にしよう!」
「疲れてるのならこのまま寝ていいわよ♪」
「い、いや! 本当に疲れてるから! 今日は無理だ!」
「そんなに遠慮しなくていいのよ?」
「遠慮なんてしてないぞ!?」
まずい。いつもならここで終わるはずなのに。
そういえばこいつはなぜか俺が自分の家に女子を連れてくると、いつもよりさらに過激になるな。今日も、望月がここにいるせいか?
「さあ! 私と楽しい青春を―――」
ドン!
楽しい青春が何かは知らないが、俺の上着を脱がせ、ベルトを外そうとしたのでもう無理だ、と諦めようとした時、また望月が凄まじい速さで俺達の距離を離してくれた。
と、とりあえず助かった。
―――だけど一つ疑問があった。
「・・・どうやって私の金縛りを解いたの?」
それについては俺も知りたかった。
―――そう。俺の幼馴染は、俺達と同じ数少ない超能力者なのだ。そして萌愛の超能力は、『金縛り』である。
萌愛に聞いたところによると、動いている物なら何でも止められるらしい。俺の超能力よりは、よっぽど便利な物だと俺は思うんだけど・・・。
しかしこいつは、よく超能力を悪戯で使ってしまう。迷惑なことに、ほとんど俺に。俺も超能力はそんなに多用するなと、注意してるんだが・・・。
いきなり家に上がってきたと思ったら、急に超能力を使って俺の動きを封じ、キスしようとしてくることにももう慣れてしまった。・・・なんで俺にばっかりこんなことをしてくるんだろうか? 考えれば考える程分からない。
でも―――
俺は改めて幼馴染を見る。
少し大人な感じがする顔立ち。メリハリのある身体。整ったモデルみたいな体型。橙色に染まった髪。
望月とはまた違う魅力がある。どうやら萌愛は高校の美少女ランキング|(俺は現実女のランキングには興味はないが)ではかなり上位らしい。
登下校中に萌愛と話していると、なんか危ない言葉がよく聞こえる。
たぶん聞き間違いではないだろう。
しかも彼氏がまだいないという噂のせいか、よく告白されている場面を見ることがある。
―――と、危ない。また三次元に興味を持つところだった。萌愛のことなんて俺が気にする必要も無いか。
萌愛の質問に、望月がふふん、と自慢げに言う。
「あんたの超能力なんて所詮その程度なのね。 そんな弱い力じゃあたしを止められないぞ!」
「! なんだ。ちびっ子も超能力を知っていたの? ということは、あなたも超能力者については知っているのね? ふふん♪ それなら遠慮しなくてもいいわね!」
「あたしとやる気? 上等じゃない。いいわ、来なさい!」
・・・もうこうなったら、止めるのもめんどくさい。俺は二人をほっといて、ベッドに潜り込んだ。
―――そろそろ寝るか。結局今日は、高校も休んじゃったし。やる事は無い。
そう思い、目をつぶろうとしたその時だった。