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小悪魔登場

「協力するよ」


「え・・・?」

 予想外だったのか、少女は目を丸くした。そりゃそうだろう。危ない橋を自分から渡る人はいない。でも、この少女を俺は放っておけなかった。


―――「殺す」事を簡単に考えてしまうのは、今まで少女が何人もの生命を奪って生活していたことだろう。この少女に罪はない。自分が危うくなった時は、他人を傷つけてしまうのが人間だから。だけど、それが正しいとは思わない。


 俺は―――

 この少女に、人間の心を持った、本当の人間になってほしいんだ。


「・・・ありがと」

 少女は小さな声でそう呟いたかと思うと、すぐに顔を逸らしてしまう。俺はもう一度目の前にいる少女を見る。

綺麗な青色の髪を地面に垂らしている少女は、幼い顔立ちをしていたが、瞳からはとても強い意志が感じられた。


 こんな可愛い少女が人を殺したのか。神様も残酷だよな。この少女にこんなに重い罪をきさせるとは。


 少女は、なぜ自分がそんな危険な存在に狙われているのか話さなかった。それについてはとても気になるが、自分の人生が壊れてしまった原因だ。よほどの事があったのだろう。話したくないのかもしれない。少女が自分から話してくれるまで待とう。


 そんな少女の白い肌は、窓から差す太陽の光を反射してキラキラと美しく輝いていた。


―――そういえば服着てないけど、寒くないんだろうか?


「・・・・・」

「おわぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

 俺は慌てて顔を少女の身体から背ける。


「な、なによ急に。頭でもおかしくなった?」

「服着ろよ! 服!」

「そんなこと言われても、無いんだからしょうがないじゃない!」

「そういう問題じゃねぇよ!」

 俺はしょうがなくクローゼットから俺の服を出すと、視線を逸らしたまま少女に渡す。少女はぶつぶつ言いながらも着る。


 俺は心臓をばくばくしながら考える。なんでこいつはこんなに平然としてたんだろう? 普通服着てなかったら慌てるだろう? 家でもいつも何も着ていなかったのか? 外で全裸で歩いてたらそのうち捕まるぞ。もしかしてあの時全裸だったのもそれが原因なのか?


 いやまて、今はそんなどうでもいい疑問より重要な疑問がたくさんある。いや、これもどうでもよくないけど。まずはそっちを考えよう。


 ・・・死体とかはどうなっているのだろうか? やっぱりあそこにまだ残っているのか? それにしてはやけに近所が静かだが。


テレビをつける。

『今年は、去年に比べ明らかに異常と思える人口増加が見られ、日本政府は調査を―――』7


 チャンネルを変えても、なぜかどのニュースにも今回の事件の話題が出ていない。なんでだ? 死体が見つかったら普通ニュースになるだろう。


 

 俺の疑問に少女は気付いたのか、「ああ」と言ってから喋りだす。


「死体は暗殺者の仲間が片づけたからもうないわ。だからニュースにもならない」

「へ?」

 俺が呆気にとられていると、少女が馬鹿にしたような口調で言う。


「もしかして暗殺者一人ごときにこのあたしがずっと追いかけられてたっていうの? あたしもずいぶんなめられたわね」

 どういうことだ? 意味が分からない。暗殺者一人ごときって言ったよな。一人ごとき? もしかして―――


「暗殺者ってたくさんいるの!?」

「そんなこともわからなかったの? やっぱりあんた馬鹿なのね」

 即答されてしまった。はぁ・・・。マジかよ・・・。


 俺は窓の外を見る。青く清々しい空は、俺達とは全く別の次元の物のように思えた。

 

 ということは、だ・・・。 暗殺者はこの少女を殺すために何人も刺客を送り込んでいるんだろう。じゃあもしも、その少女を助けた者が出てきたらどうなる? 

 

 ・・・なぜかこの事については結論が一瞬で分かった。


「俺も暗殺者に狙われる身になったのですね・・・」

 俺は小さくつぶやく。この声は少女に聞こえたのだろうか。そして俺ははたして長生きできるのだろうか。全く。なんでこんなに現実は疲れるんだ! 


 アニメの主人公とかなら、こういう時やる気を出すのだろうが、想像してみろよ。自分が明日死ぬかもしれない人生ってスリルってレベルじゃない。ジェットコースターに安全ベルトをしないで乗っているみたいな状況だぞ。


「と、とりあえず―――」

「うん?」

 少女は片手を俺の方に伸ばすと、少しおどおどしながらも言った。


「あ、あたしの名前は望月(もちづき) 未来(みらい)。 よろしく」

「ああ。よろしく、望月。俺は中島 直行だ」


 そう言って俺はその伸ばされた小さな手を握った。


「じゃあ早速、これから暗殺者についてどう対応するかだけど―――」

「なおちゃん! なんで学校来なかったの? 心配だから来ちゃった♪」

「「!?」」


 俺達の会話は途中で、俺の聞き覚えのある声によってかき消された。この声はあいつだ。あいつに違いない。

 

 一瞬、家に入れようか躊躇うが、すぐにそれが無駄な行為である事に気づく。


「はぁ~~~」

 俺はため息をつく。今凄く大事な話をしていたっていうのに。でも、どんな手を使ってでも俺の家に入ってくるのがあいつだ。無駄な努力はしたくない。俺は望月に「ちょっと待って」と合図をすると、玄関に向かった。


 そこにはやはり見慣れた女子高校生がいた。その女子高校生は俺を見つけた瞬間に「きゃっ」と嬉しそうな声を上げて、いきなり抱きつこうとする。俺はそれをするりと避ける。・・・いつものパターンだ。


 しかし女子高生は、今度はむー、と唸ったかと思うと、今度は俺を床に押し倒してきた。


「痛っ!」

 俺は予想外の行動に思わず声を上げる。一応怪我をしているんですが。

 

 しかしそんなことも気にせずに、俺の瞳をじっと見つめながら言った。


「今日こそは二人で楽しい時間を過ごしましょう♪」

 あれ? なんか・・・やばくないか? この状況。

 

 ていうか楽しい時間ってなんだ? 何かしてくれるのか? 凄く怖いんですけど。

 

 俺は必死に振りほどこうとするが、身体が動かない。まるで金縛りにあっているかのようだ。俺は首も動かせないので、ずっとこの女子高生と見つめあっている。女子高生はこっちを見つめながら服を脱ぎ始めた。やばいやばい! 本当にこのままだとやばい!


 「感触がある」という三次元の長所を上手く利用されて、俺が三次元に取り込まれてしまう!

 そんなのいやだ! 


「ちょっ!? 怪我人に何やってるのよ!?」


 俺があきらめかけていた時に、望月が凄まじい速さで俺と女子高生を離してくれた。

 

 ふぅ・・・助かった。危うく三次元の住人になるところだった。俺は動けるようになったので起き上がる。


「あんた誰? この変態のなんなのよ!?」

 望月が少し怒った様子で言う。俺の為に怒ってくれているのは嬉しいが、俺は変態じゃないんだが・・・。

 

 そう反論しようとした時に、なぜか女子高生がすごく怒りながら言った。


「今私のなおちゃんの事を変態って言ったわね! 許さない! 覚悟しなさい!」

 ・・・俺は誰の物でもないんですけど・・・。しかし今すぐにでも爆発しそうなので、とりあえず止めることにしよう。


「とりあえず二人とも落ち着こうぜ」

 女子高生は「まあ、なおちゃんが言うなら」と言って床に座り、少女は「ふん!」と顔を背けると床に座った。

 

 心の中でため息をはく。なんでこいつらは初対面なのにこんなに仲が悪いんだ。ある意味凄いと思う。喧嘩するほど仲がいい―――ってわけでもなさそうだな。


 俺はしかたなく少女に女子高生を紹介することにした。


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