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ごく潰し転生末王子はテコでも出てこない ~元35歳の35番目王子が僻地で【鎖国】ひきこもり無双~  作者: 野菜ばたけ
第一章:5歳、早速不遇からの脱出

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第2話 流石に俺、可哀想じゃない?





「おいごく潰し。今日も元気にごく潰しだな!」


 王城内の、後宮の庭にて。

 その辺にあった石を積み木がわりに積んで暇を潰していた五歳の頃の俺にそう言ってきたのは、小さな背丈でもっと小さな弟をふんぞり返って見下した、まだ十歳のガキだった。



 俺より幾分かはいい服を着たそのガキは、いい子で黙々と一人遊びしていた俺に、意地悪なガキ大将の如くいかにも傲慢な態度を示している。


 いやまぁ実際に、意地の悪いガキなのは間違いない。

 なんせ半分は血のつながった弟に、毎日のようにこの手の暴言を浴びせてきては喜んでいるような馬鹿である。


 これを性悪と言わずに何というのか。

 少なくとも前世で義務教育を無難に終え、十三年にも及ぶ社会人生活をそれなりに過ごす事ができたくらいには知識も教養もあった俺の脳内辞書に、これ以上の最適解は存在しない。



 前世では、それなりに苦労性だった。

 金遣いの荒い両親と、介護を必要とする祖父母たち。

 弟が一人いたけれど、あいつは俺が工面した費用で大学に行きストレートで卒業した後は、一度も実家に帰らなかった。


 弟が大学を卒業してからはまだマシだったが、それでも自分以外に祖父母と両親の生きるための金も稼ぎつつの生活は、手放しに「楽しかった」とは言い違い。



 それでも詰まらない日々ではなかった。

 会社では順当に昇進し、気のいい上司と可愛い部下に恵まれた。

 中間管理職という立場は時に俺に苦悩を生んだが、それだって実のある悩みである。

 少なくとも「俺が稼いだ金を湯水のように使って何とも思わないような奴らをどうにかできないか」と思い悩む日々よりは、余程充実したものだった。



 俺が三十五で生を終えたのは、あり体に言えば事故であり、ロマンチックに変換すればある種の運命だったのだろう。


 普通に交通事故だった。

 別に誰かを助けようとしてなどという事もなく、帰宅中に車に轢かれた。


 青信号になるまでわざわざ待ってからの横断歩道歩行中の事故だったので、瑕疵は完全に向こうなのだろうが、詳しい理由は知る由もない。



 俺が自身の死に気が付いたのは、フィクションよろしく天国で神に「転生させてあげるよ」と言われた時である。


 異世界系のフィクションって、たまに「その世界で生きた前世の記憶持ちがうっすらとその時の事を覚えていて物語に落とし込んでる説」が囁かれてるけど、まさか本当にこんな事があるなんてなぁ。


 俺はそう変に納得しながら、生まれ変わり先の要望を尋ねられ、答えたのだ。


 ――食うに困らず権力闘争にも縁のない王族らへんにでも生まれて、自由に生きたい。

 自分がせっせと稼がずとも食うに困らない日々も、権力闘争とまでは言わなくても責任ある立場で人間同士の諍いに苦悩するような事のない日々も、前世の俺にはないものだった。


 俺は、どうせ次が与えられるなら、前とは違う人生を生きてみたいと思ったのだ。




 そうして与えられたのが、『大国の、三十五人目の子ども』という立場だったわけだけど。



 曲がりなりにも王族だ。

 たしかにお願いした通り、毎日食うには困らない。


 俺に理解力がないと思ってか、メイドが仕事の合間に様々な噂話を溢す。

 その話を聞く限りでは、どうやら権力闘争も、王太子殿下と第二王子、第四王子が水面下で行っているのみらしい。

 この分では三十五人目の王族は、権力闘争の歯牙にもかけられないだろう。



 が、それにしたって俺、可哀想過ぎない?


 王族なのに両親の顔さえ見たことがない。

 最低限の衣食住こそ与えられているが、俺に与えられる晩飯は、社会人になって以降の朝食と同じくらいの簡素さだ。


 その上、母親が違うとはいえ、毎日こうして半分は血の繋がった兄から、悪口攻撃で虐められる。

 この兄は三十三番目らしいが、目に見えて存在する服の品質格差。

 俺の服は、下手をすればチクチクゴワゴワするものも多い。


 何なんだ!

 この待遇の差は!


 あれか?!

 よくある母親の格の違いってやつか?!


 でもさぁこういう時って大抵、物語では後ろ盾はないけど優しくて病弱な母親がつきものだろ?!

 そういう《《飴》》もないって何!

 可哀想な子どもには慈悲があって然るべきでは?!



 ……いやまぁ俺だって、精神年齢は前世の三十五+五歳だ。

 社会の荒波に、揉まれに揉まれた俺の心である。

 これしきの言葉で傷付くようなガラスハートは持ち合わせていない。

 いないのだが。


 この状況、普通の五歳児だったら、かなりきついと思うんだよ。

 泣いちゃうよ?

 泣いちゃっていいの?!


 ……いや、別に泣かないけどさぁ。

 三十五にもなってこれしきの事で泣いちゃうとか、ちょっと俺のプライドが許さないし。



 まぁね、たった十歳の子どもが、まさか弟を本気で害そうと――殺そうとするとは誰も、本人でさえ思ってないんだろうし?

 だから毎日律儀にこの兄の俺への接近を許す、ただ立っているだけの木偶の棒騎士も、この際大目に見るよ。

 

 でもさぁ、この兄。

 よくも毎日同じ言葉を言い続けていて、飽きないよねぇ。

 俺が二歳の時からだよ?

 こうして毎日欠かさずさぁ。


 何なの?

 皆勤賞でも狙ってるの?

 こんな事で褒めてくれる人、いるかなぁ?



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