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ごく潰し転生末王子はテコでも出てこない ~元35歳の35番目王子が僻地で【鎖国】ひきこもり無双~  作者: 野菜ばたけ
【第二章】第一節:襲撃と、実母のクソ露呈と、魔法チート

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第10話 今こそ転生チートを使う時! ⇒ ぐわぁぁあ! 俺の目もぉ~っ!!



 TPOを弁える事。

 それは、社会人にとっては必須スキルだ。

 ある種の空気読みであり、常識ある大人なら普通はできて然るべきマナーでもある。


 それを、場合によっては部下に優しく説いて諭していた立場の俺が、まさか弁えに失敗するなんて。

 ガーンと地味に傷付いた。



 俺の声で、どうやら敵も子どもが馬車の外に出ている事に気が付いたらしい。

 何をする気だと身構えた奴らは、俺の手のひらから出た魔法を見て、一斉にドッと笑い出した。


「一体何が来るのかと思ったら。そんなヘロヘロな攻撃で、俺たちをどうにかできるわけ――」


 たとえノロノロのヘロヘロでも、時間があれば目的地点に辿り着ける。


 本来は到達までに時間がかかった時点で、セズへの忠告として告げた『目と耳を閉じろ』という言葉をヒントにして、俺の魔法を無効化するための対策を講じる事ができた筈だった。


 が、実際にそうはならなかった。

 奴らの敗因は、明らかにヘロヘロな魔法を見て「脅威ではない」と俺と俺の魔法を舐めてかかったから。


 そしてセズの勝因は、俺の言葉を律儀に聞いて実践していたからだ。



 カッ! と視界がホワイトアウトした。

 同時にキィィィィイインという耳鳴りが、この場の人間に聴覚を刺す。


 平衡感覚がなくなった。

 地面に尻をついている筈なのに、地面ごとグワングワンと揺らされているような、そんな感覚に苛まれる。



 お、俺自身の対策、何も考えてなかったーっ!!


 たまの行く末が、魔法が発動するかが不安でずっとその姿を目で追っていた事もあり、スタングレネード魔法の効果を諸に受けた俺は、自身の浅はかさに「何でやねん」と、別に関西出身でもなかったのに突っ込んだ。


 が、そんな事をしている場合じゃない。



 セズは……セズは大丈夫かな。

 うまくやったかな……。


 くそっ、目も耳も潰れてて結果が分からない。

 そう思った時である。

 

「うわぁっ?!」


 チョンッと何かが俺に触った。


 驚いた俺にソレも驚いたのか、すぐにそれは引っ込んだ気配がする。


「……セズ?」


 返事はない。

 いや、したのかもしれないが、視覚も聴覚も失っている俺には、知る術がない。


「あっ、そうだ。手の平になんか字、書いてくれない?」


 言いながら、手を前に出す。


 もし相手が襲撃してきた一味の人間だったなら、今頃俺は有無を言わせずに抱えて連れ去られているだろう。

 そう思って、試しに頼んでみた。

 すると一拍の間を置いて、手の平にチョンと何かが触る。



“なぜ、そとに”


「レーナに追い出された」


“あの、まほうは”


「光と音で目と耳を一時的に潰す魔法を発動させてみた。できるような気がして」


 今世では誰も字の読み書きを教えてなどくれなかったけど、数少ない娯楽として与えられていた絵本で何となく字の習得をしていた。

 実際に字を使って誰かのコミュニケーションを取ったのはコレが初めてだったが、どうやら俺の『何となく字習得』は『きちんと字習得』に格上げしてもよさそうだ。


“しりませんでした、まほう、つかえるなんて”


「僕も知らなかったよ。初めてやったんだ。他の人には秘密にしておいて」


“わかりました”


 ここで一度会話が途切れて、俺はホッと胸を撫でおろす。



 セズがこうして俺の手の平に字を書けているという事は、無事に襲撃者たちを無力化する事ができたのだろう。


 鉄の臭いなどは、あまりしない。

 怪我こそ負わせているのかもしれないが、致命傷とまではいかなかったらしい。


 平和な国で平凡なサラリーマンをしていた俺が、当たり前だが命の取った取られたに慣れている筈もない。


 そりゃあ元は大人な訳だし、いざとなればそういう事が起こりうる事、時には必要な事もあると理解しているけど、殺さずにどうにかできるのならそうするに越した事はないと思う。


 そういう精神性の俺だ。

 比較的平和な解決を見たようで、密かに小さくホッとした。



 すると、そんな俺の内心を知ってか知らずか、彼は手の平にこう字を続ける。


“やつらの、もくてき、でんかだけじゃなくて、そのははおやも、だったみたいです”


 思わずフハッと笑ってしまった。

 どこの誰がそんな企てをしたのかは分からないが、俺を生贄にしたって結局、あの女も助からなかったらしい。


 別にあの女が殺されたり、誰かに売られたりする事を望む訳じゃない。

 しかしそれと、的外れな行動で自身の醜悪さを露呈したという事実が可笑しい事とは別の話だった。



 そんな俺の様子を、セズは不思議そうに見ていた……んじゃないかと思う。

 見えないから知らないけど、多分。


 レーナの滑稽さが可笑しくて笑ってしまったけど、別にあの所業を許したわけじゃない。



 放り投げられた時に地面に打ち付けられた体が、今更痛くなってきたような気がした。

 腹は立つけど、恨みはない。

 恨みはないけど、傍に置いておくつもりもない。

 俺の気持ちはそんな感じで、最早その考えは決定事項となっている。


「レーナは多分、あの魔法の効果を諸に受けてるんだと思うんだ。じゃなければ、多分馬車から出てきてるでしょ? 戦闘が終わって音が止んだんなら猶更、様子を見に出てきてると思うんだ」


 俺がレーナの事を話した時、セズは続きを制止しなかった。

 という事は、レーナはここにはいないのだろう。


 いやまぁあの話をした時、レーナがここにいてこの話をセズにした事が彼女にバレてしまっても、それはそれでよくはあった。

 三人で馬車移動をする必要があるのにアレを知られたら、気まずいなんていうものじゃない。


 精神的な意趣返しには十分なるだろう。

 が、まだ知られていないのなら。


「レーナには、今まで通り何も知らない体で接してくれる? 考えがあるんだ」



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