今日はちょっと忙しい
さて、今日は普通に授業……と思っていたんだけど、これはいったいどう言う状況なんだ?
「クロウ・ヴァルディオス。生徒会長室まで、至急来い」
「……は?」
話を少し戻そうか。
僕は普通に学園へ登校しただけだった。いや、今思うと、周りは普通ではなかった。
僕に向けられていた視線がすべて疑いの視線であったから。登校しているときには気にしていなかったけど……。
僕が何をしたって言うんだよぉ……。いや、もしかしたら僕がラグナということがバレた?いや、それはない。僕は完全に顔を隠していたし、声も変えていた。だからバレるはずないのだよ……。おそらくは、ね。
ということで、生徒会長室の目の前まで来てしまった。何を言われるのだろうか。怖いよ……。
「失礼しま~す」
「やり直し!ノックをしろ!」
「あ、はい」
ドアを閉める。この世界にも入るときのノックは必要なのね……。
三回ノックし、返事を待つ。
「入れ」
「あ、失礼します……」
「そこに座れ」
「はい」
ソファに座る。なんか睨まれてる感じがして怖い。だが、世界最強になるために、ここで怖気づいてはだめだ!
「そ、それで……ご用件は……」
「お前……。何か隠しているだろう?」
なっ!なんでバレたんだ!どこがいけなかったんだ!
「な、何のことでしょうか?」
「前に一回戦ったことがあるだろう?」
「え、はい。ありますね」
「君は最初から気づいてたのではないか?」
「と、言うと?」
「私が、君に急に攻撃しただろう?」
え、そんなことあったけな。
「あ、はい。そう……ですね?」
「それに気づいていたんだろう。私が攻撃する前から」
ちょっと、言ってることがわかんないよ……。攻撃する前に気づけるとしたら、魔力の流れと、目線など、相手の行動を意識しないと事前に気づくことは不可能だし。多分、言ってることは、攻撃する前じゃなくて、攻撃する直前のことを言っているんじゃないかな。それなら僕は気づけたと言えるし、おそらく、生徒会長が僕に聞いていることもそう言うことだろう。生徒会長は口下手なのかも。
「あ、はい。気づいてました」
「……そうか。それともう一つ」
「なんでしょうか?」
「あの時、本気を出していなかったでしょう?」
うぐっ……。痛いとこを突いてくるなぁ。いずれはバレると思ってたけど、直接呼出しするなんて思わないよ……。
「まあ、八分目くらいのところまで来てましたけど……。まあ本気は出していなかったですね」
「八分目、か。わかった。呼んだのはそれを聞きたかったからだ。突然呼んでしまってすまなかった。もう行って良い」
ソファから立ち上がり、ドアへ向かう。
「失礼しました~」
ドアをゆっくりと閉める。
「ふぅ……」
あぶねー。
緊張が解けたのか、汗がめっちゃ出てきた。バレたのかと思ったよ……。ビビらせてくるなぁ……生徒会長は。
僕は時計を見た。
「やばい……。実技の授業始まってるし。早く行かないと」
■【エミリア視点】
クロウ・ヴァルディオス。やはり怪しすぎる。何を考えているのか、予想がつかん……。
表情もあまり変わらない。本気を出せば私はあいつに勝てるだろう。だが今のところ敵ではないだろう。そこだけはわかる。
時計を見る。
「なっ!!授業が始まっている!?早く行かなければ!」
走って、生徒会長室を出ていく。
遅れるのは確定している!だが、一秒でも早く!
その時、ふと外を見る。立ち止まってはいけないのだが、立ち止まってしまった。
エミリアが見つめる先には、クロウ・ヴァルディオスがいた。
クロウはこちらに気づいていない。
「!?」
クロウの構えを見る。相手は、レイラ。圧倒的実力差を前にして、怖がる様子もないクロウ。
「あんな奴が……いるのか……?」
レイラは私より数段劣っているが、王族だ。いくら、代々国に仕える剣士の家系だとしても、王族になど勝てるはずはない。普通だったらレイラの剣に攻撃を入れるだけでも至難の業。
だがクロウは違ったのだ。
レイラの攻撃をかわし、攻撃を返す。決して攻撃が当たるわけではないが、避けれるだけの素早さと、反撃できるその余裕。
これはエミリアの中での異常だった。
かつてあんな剣士はいただろうか?私が戦ってきた中で、王族に反撃をできる相手などいない。
私は気づくと目を見開いてそれを見ていた。窓ガラスに反射した自分の顔を見て、正気に戻った。
「ありえない……。あれは人間ではない……」
私はそう思い始めていた。だが、決して自分が負けるなど微塵も思っていない。
私は負けない。これは絶対である。それくらいの自信がある。
クロウがレイラと互角として、私はレイラの数段上にいる。クロウは私に勝てないのだ。それだけはわかっているのだ。
早く教室に向かわんと。
私は心のどこかで怯えているのかもしれない。
妙に汗が止まらなかった。




