ブルーメタリックの亀裂
まずは一件落着。
今は、十二時。
僕は置いてかれた。だって仕方ないじゃないか……戦ったんだから。
まあ、いっか。一人で歩こう。
■
旧制度館を壊してから、人とすれ違う率が跳ね上がった。
顔も元気があると思える。
「旧制度館が悪かったんだな〜」
そう言い、裏路地に入る。
「!?」
裏路地に入ってしばらく、目の前には死体があった。
「死んでる?死んでるよね……これ」
「ちょっと、ネオン」
「はい。主様……」
「これ死んでるよね」
「死んでます」
「調べといて色々」
「はい」
そして沈黙が流れるが、すぐに破られる。
「僕はしばらく剣で戦わない」
「え?」
ネオンは一瞬固まった。
「剣を使わない」
「え……あ、いや……なぜ?」
「たまには、剣以外も使っておかないと」
「なるほど……」
「ま、とにかく調査よろしくッ」
そう言い、姿を消した。
■
裏路地を随分と歩いた。
死体は結構あったし、どれも今日に殺されたばかりだ。
それも急に。
まあなんだっていい……と思ったのに……。
「なにこれ……血でメッセージが……ふむふむ……」
読んだ。
「バグダッド・メディナ」
誰かの名前が書いてあった。おそらく人斬りの名前だと思うが、偽名という可能性もある。
いや、偽名だろう。だって、一々名前言ってらんないでしょ?
まあ、いいけどさ。まだ時間はあるんだし。
■
「主様」
「なに」
「人斬りの情報を掴み―――」
「バグダッド・メディナ」
「分かったのですね」
「まあな。おそらくは偽名だろう。だが、黒の色素との繋がりはありそうだ」
「はい。ですが、少し違います」
「ほう?」
え、間違ってた……?
「これは、邪神夜行と言う貴族の集まりの一人かと」
「それは確定、と?」
「いいえ、まだ確定ではありませんが、その可能性が高いです」
「なるほど……と言うことは、その貴族は黒の色素と繋がっている、と」
「はい。邪神夜行は黒の色素と深い関わりがあると言えます」
と、なると……邪神夜行の汚れ仕事を請け負う貴族が居るというわけだ。
「邪神夜行はクランフェル王国の貴族が中心なのか?」
「はい」
そうなると、ラグナで調査するのはリスクが高い。
……なら、いい方法があるぞッ!!
「この件、六夜光のメンバーで進めてくれ」
「了解です」
そう言い、ネオンは姿を消した。
日が出ているが、そこだけはひんやりとした。
■
その夜、僕はバグダッド・メディナと言う、メディナ伯爵家の当主を殺した。
そして……。
「我はバグダッド・メディナだ」
完全変装。
これで、邪神夜行の動き、企みを知ることができる。
しばらくはラグナとして、ではなく、バグダッドとして生きる。
ちょっと調べたが、バグダッドには僕と同い年で、同じ学園の娘さんが居るらしい。ぼくはどうでもいいけど、場合によっては消すかもしれない。
そして現在、僕はメディナ伯爵家の当主が使う椅子に座っている。
「……」
「お茶を」
「ああ」
僕は出されたお茶を飲む。
残念ながら、バグダッドの素行など、振る舞いや仕草はすべてパクリ済み。バレないのだよ。
「この茶は、キガラシ商店の茶葉を使っているな?」
「はい」
お茶を飲みながら書類を見る。
旧制度館が破壊されたことは事故として処理、か。
結局は使い捨てというわけで……。
「バグダッド様」
「なんだ」
「この件についての書類が完成しました」
「その件か」
「はい」
書類を渡される。
「邪神夜行の席が空きました。今回はチャンスがあるかと」
「あ、ああ。今回は行けるだろう」
そうだ、席に入る。そうすればもっと情報が得られる……のだが、そうするには犠牲にする事が多すぎる。
別に良いのだが、あと8日ぐらいでできるかどうか、と思ったが、そこは大丈夫。
こっそり失踪届を出したから。しばらくは安心。
■【ネオン視点】
私は主様の指示の事、ヴェタン王国の詳細、バグダッドについての情報、そして邪神夜光の動きを探ることをミレイア様に事細かに説明した。
非常にピリついた空気。
「そう。じゃあ、ウェルタを就かせるわ」
「はい」
「それと、バグダッドについては、ラグナ様が何かしら、手を打っているはずよ。だからバグダッドの件については六夜光がなにかすることはないわ」
「ですが!!」
「黙りなさい。これは決定事項。ラグナ様がやらないはずがないわ」
「ッ……はい」
そう言い、ネオンは霧になり、消える。
ミレイア様は甘い。
それはウェルタも気づいているはず。他の六夜光も絶対気づいている。
単独で動くしかない。
リスクは高い。失敗するかもしれないし、殺されるかもしれない。
でも、指示されたことならやり遂げる。
「必ず成功させる……」
そう言い、この世界のどこかへ、消えていく。
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(この話から後編です)




