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目立たず世界最強へ〜モブを装う者には裏の顔がある〜  作者: 冬城レイ
第四章「四大英雄と王家の血」

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真実を知る王女

 邪神龍・ドヴァン。

 約二百年前に起きた世界滅亡の危機になった伝説。


 邪神龍・ドヴァンは、一日で、数多もの国を潰し、人々を絶望へと追いやった。

 だが、そんな時、四人の戦士が邪神龍を倒すと、名乗り出た。

 それが、代々受け継がれる四大英雄、セアレヴ、メノヴァン、ベガルド、フィネラだ。


「ラグナ様……」

「なんだ。ナイラ」

「この本は、最古の四大英雄譚です」

「そうか。では、コレが真実と言うことか」

「はい」


 まじかよ……。てことは今流れている伝説は誰かが変えたということか?

 いや、二百年もの間で、変わることはある。僕は、後者を推すさ。

 まあ、それは置いといて……。


「おそらく、黒の色素のメンバーが操る宗教が関わっていると思われます」

「宗教ねぇ……」


 一応察してはいたんだけど。


「四大英雄を祀る宗教。四葬聖教(しそうせいきょう)が黒の色素とつながっていると?」

「はい。さすがラグナ様です」


 その時、寮のドアが叩かれた。

 ドンドンっと。何度も何度も。


「下がれ」

「はい」


 ナイラは姿を消す。


 そして、扉を開けた。

 そこには、モブトが立っていた。片手には新聞が握られていた。


「おい聞いたかッ!!」

「何を?」

「エミリア王女が失踪したってよ!!」

「へー」


 新聞を奪い取る。


 読む。


 エミリア第一王女、失踪。

 謎組織、ブルーメタリックの仕業か。


 僕はニヤッと、気持ちの悪い笑みを浮かべた。

 謎組織……。いい感じじゃあないか。


「クロウはなにか知ってるか?」

「僕は知らないよ」

「そうか。じゃあ、金貸してくれ!!」

「……いやだ」

「お願いだッ!!」

「やだ。キガラシ商店のクレカ発行しないの?」


 モブトはへ?という表情をした。


「新しくできたじゃん。後払い制度」


 そう、僕が以前回収した、送受信レリック。

 アレを複製し、クレカの通信制度を実現した。

 コレもまた、おカネを稼ぐ効率を上げる手である。

 もちろん、分割支払いも可能。手数料と、利息はがっぽりといただくさ。


「そうか!!発行してくるぜッ!!」

「グリーンカードからゴールド、プラチナ、ブラックカードまで、階級分かれてるからね〜」


 某カード会社のパク……リスペクトさ……。


「何ッ!!」

「まずはグリーンか、ゴールドだよ〜それと年間費がかかるからね〜」

「いくらだッ!!」

「グリーンなら、5000ゼニーでゴールドなら、24000ゼニーかな」

「持ってればモテるか!!」

「ゴールドなら、まあまあ、プラチナならOK、ブラックなら、スーパーOKだよ」

「どうすればブラックッ―――」


 僕は人差し指を横に振る。


「チッチッチッチ……」

「なんだよ……」

「資産を見せつけるのだよ、キガラシ銀行に。資産があるほど、銀行はブラックを渡したがるさ」

「年間費はッ!!」

「500000ゼニーさ」

「くッ……」

「プラチナなら、140000ゼニーさ」

「俺はプラチナにするッ……」

「資産が、一千万ゼニー以上じゃないと、拒否られるからね〜」


 そういい、モブトを廊下に向かせる。

 モブトは一直線に、キガラシ銀行へと走り去っていった。


 ぼくは、無料で、ブラックカードさ。

 コレもブランドの一部みたいなもんさ。

 キガラシ・センチネル。いい名前だとは思わないかい?

 モブトには、僕の稼ぎの一部になってもらう。


 ■【エミリア視点】


 目を開けた時には、謎の部屋にいた。とても薄暗い。

 体は動かせない。魔力は吸い取られ、何もできない状態だ。


「もう起きたか」

「貴様ッ!!なぜ私をさらったのだッ!!」

「王族の血が欲しいんだ」

「何故だッ!!」

「何故、か。そうだな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だな」


 私は、怒鳴る。


「ふざけるな!!そんなことできる訳な―――」


 男は、私の言葉を遮り、言った。


「できる」

「ッ……!!」


 言葉が出なかった。

 男は椅子に座った。


「少し、四大英雄について話をしようか……」

「誰でも知っている話など!!聞かされても得にはならんッ!!」

「いいや。あれは改ざんされた話じゃよ……」

「戯言をッ!!!」


 男は一冊の本を投げつけてきた。


「読めないぞ……」

「そうか……。片手なら許してやろうかのう……」


 そう、男が言うと、手錠の鎖が、伸び、少し自由になった。


「この本は何年目の四大英雄譚……なの?」

「最古の英雄譚の複製だ。本物はどこかに消えた」

「……」


 私は読み始める。

 最初は特に問題はなかった……なかった……。

 だが、読み進めていくと、今の歴史と明らかに違うところがあった。


「メノヴァンが茶系犬獣人……?」

「そうだ。それが本当のメノヴァンだ」


 さらに読むと……。


「邪神龍・ドヴァンを封印……だと……?」

「そうだ。英雄は倒すことを諦めたのじゃよ」

「ウソよ……こんなの……。なら……なら!!封印されたドヴァンはどこにッ!!」


 そういうと、男は指をパチンと鳴らす。

 そうすると、薄暗かった部屋が明るくなる。


「後ろじゃ」


 そう言われ、後ろを振り向く。


「ッ!!!」


 そこには、石化した、ドヴァンが居た。


「ウソ……。こんなことが……こんなことがあるの……?」

「残念ながら事実じゃよ。ワシだって、最初は……」

「……さいしょ……?」

「何でもないわい。こっちの話じゃ」

「……」


 私は黙った。

 だが、男はまた話を振ってきた。


「よくわかったろう?理解したとみて、質問するぞ」

「……」

「なぜ、メノヴァンが人間と書かれたかわかるか?」

「……」


 男の問いに、エミリアはしばらく答えられなかった。


 石化した邪神龍の圧が、背中から思考を押し潰す。

 討伐されたはずの存在が、封じられたまま現存している。

 それだけで、王家が守ってきた歴史は信用に値しなくなっていた。


「なぜ、メノヴァンが人間とされたかわかるか」


 男は、改めて問いを投げる。


 エミリアは唇を噛み、視線を落とす。


「……人の英雄でなければ、民が従わないから」

「浅い」


 即座に切り捨てられた。

 その動きに、警備員の気配は微塵もなかった。


 男は一歩前に出る。

 老いた体に似合わぬ、芯の通った足運び。

 ベテランの立ち振る舞いだった。


「それでは説明がつかぬ。獣人を排しただけなら、他の三人も人にすればよかった」


 エミリアは、ハッとする。


 確かにそうだ。

 ベガルドもフィネラも、エルフとして語られている。

 人に書き換えられたのは、メノヴァンだけ。


「……なぜ、彼女だけが」


 男は一拍置いてから答えた。


「四葬聖教が必要としたからじゃ」


 エミリアの眉がわずかに動く。


「四大英雄を祀る宗教だ。だが、ただ祀るだけではない」


 男は英雄譚の挿絵を示す。


「四葬聖教は、死を受け入れさせる教えじゃ。英雄が死に、世界が救われ、秩序が残るその形を、人の社会に定着させるための宗教」

「……それと、メノヴァンに何の関係がある」

「大いにある」


 男は静かに言う。


「四葬聖教の教義は、人の生と死を基準に組み上げられている。獣人の繁栄力や、エルフの長命は、都合が悪かった」


 エミリアは息を呑む。


 確かに、教会で語られる死生観は、人のものだ。

 獣人やエルフの思想は、ほとんど触れられない。


「四人全員が人である必要はなかった。だが、中心に据える一人は、人の価値観を体現せねばならなかった」


 男の視線が、挿絵の中央に描かれたメノヴァンを捉える。


「彼女は獣人でありながら、人の思想を理解し、人の秩序に適応した。四葬聖教にとって、これ以上ない都合の良さじゃ。だってそうじゃろう?通常なら、獣人は知能が人間より劣っているからのう」

「……だから、人として扱われた」

「そうじゃ。獣人である事実は否定されなかった。ただ、語られなくなった」


 それは排除ではない。

 沈黙による操作だ。


「四葬聖教は、英雄を神に近づける。神に近づけるということは、人の理解できる形に整えるということじゃ」


 男の声が低くなる。


「英雄譚は、祈りのための物語であり、統治のための構造でもある」


 エミリアの背筋に、冷たいものが走る。


「……なら、封印が消されたのも……」


 男は、わずかに口角を上げた。


「祀るには、勝利が必要じゃ。封印は、負けを含んだ物語だからのう」


 石化した邪神龍が、松明の光を受けて不気味に輝く。


「四葬聖教が語る英雄は、必ず勝つ。世界は一度、完全に救われねばならぬ」

「だが、現実は違った」


 エミリアは、無意識にそう呟いていた。


「その通りじゃ」


 男は頷く。


「だから、真実は地下に残された。表で祀られる英雄と、裏で管理される英雄その二重構造が、二百年以上続いておる」


 男は、エミリアを静かに見据える。


「王女よ。お主が今知ったのは、四葬聖教の教義でも、英雄譚でもない」


 一拍置き、低く告げる。


「これは、世界が自分を保つために選んだ嘘の形じゃ」


 重い沈黙が、石室を満たした。

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