第二王女は……
剣術祭は無事……無事に終わった。特に問題はない……ないんだけど……。
「ボス。観客の皆さんは眠っているようです」
ウェルタか。
「エミリアはどうだ」
「同様に、です」
「四塔の奪還は?」
「完了しています、です」
やることはないか。
「そうか。下がって良い。ミレイア」
「ボス。なんでしょうか」
「お前に渡したレリック、貸してくれ」
「どうぞ」
コレと、ローランドがポッケから出した別のレリック。
「起動」
レリック同士を重ねる。
『待機』
この世界の文字でそう書かれている。
レリックというのは不思議だ。まさかレリック同士を合わせることができるなんて、誰も知らないだろう。
「押してみよう」
「正気ですか!ボス!」
「ダメか?」
「もし、何かあったら……」
「責任は我が持つ」
「……了解。ボス」
さて……。
レリックに魔力を流し、押し込む。
『復元』
学園の壊れた場所がすべて元通りになっていく。
人々は起き始める。記憶はないだろう。
「じゃあ、行こうか」
「はい!ボス!」
「はい、です。ボス」
「は、はい……。ボス」
僕達は学園を去った。
まあ、僕はクロウとして、普通に学園にいるんだけどね。
「お、いた」
「クロウ……か……」
「クロウくん……」
「あ、モブトとダルマ」
「金……貸してくれ……」
「え、なんで」
泣きついてくる。
「生徒会長が負けたんだよぉぉぉぉぉおお!!」
「あーラグナっていう人に負けたんだっけ?」
「そうですよおぉおぉぉぉ!!」
ダルマも、泣きついてきた。ちょっ……鼻水つけるなよ……ッ。
「まあ、仕方ないよ。僕は帰るから」
■【エミリア視点】
私は負けた。あの圧倒的敗北感、とても悔しい。勝てると思っていたのが、間違いだった。
あいつは、私には到底、たどり着けない領域に達している。それに留まらず、まだ成長している。
「クソ……ッ!!クソ……ッ!!!」
私は保健室のベッドを叩く。
自分で保健室へ行き、包帯をあちこちに巻かれた。
歯をギリギリとやる。
「ムカつく……ムカつく……!!」
「エミリア王女!落ち着いてください!」
保健室のミク先生に止められた。
「す、すみません」
「いえ、無理もありません。あのラグナと言う人……怪しすぎます」
「ええ」
「私は職員室へ行きますね」
ミク先生がいなくなった少し後。
「お姉様」
私はすぐに振り向く。
「レイラ?」
レイラが来た。もう数年話してないのに。
「お姉様に、質問があります」
「―――言ってみろ」
「ラグナをどうする気ですか」
「見つけ次第、即殺す」
「なりません!」
レイラと久しぶり話して、内容がラグナの事。コレでも十分不快。
更に、レイラから、否定の声が出た。私は怒る。
「なぜだ!」
手が出た。やってしまった、と思った。
「お姉様はお変わりないですね」
拳が止められていた。いつもなら、飛ばされて、泣いて、喧嘩になるはず……。だけど今回は違った。
「……ラグナは悪いやつではありません」
「そんなわ―――」
「悪いやつではないです」
圧倒的。ラグナと似ている圧がレイラから出ている。
「……ッ」
「レイラが、何を言おうと、ラグナは、私の敵。それは変わりはしない」
「そうですか……。なら、話すことはもうないです。それと……私は王家を出ていきます」
私は本気で怒った。あってはならない事。実行させてはいけない。
「ふざけるなぁああ!!」
「いいえ。お姉様。私はふざけてなど―――」
「うるさい!!」
私はベッドから立ち上がり、ベッド横に置いてあった大剣を持って、レイラに斬りかかる。
「お前がそう言うなら!ここで死になさい!!」
だが、レイラは受け止めた。
ラグナと同じ、止め方で。
私は目を見開き、青筋が浮き出る。
「レイラあああぁぁぁ!!」
「お姉様。私は、ラグナの元へ行きます。私は王家を捨てる覚悟をしました」
レイラは冷静だ。ただ本気で、王家を捨てる覚悟があると。私は悟った。
私は、その瞬間、地面を強く蹴り、殺気を放ちながら、レイラに斬り掛かった。もう容赦はしない。
レイラは言ってはいけないことを言ったから。死に値するほどの。
「そのうち、会えることを期待しています」
レイラの剣と、エミリアの剣が同時に当たる。
白い光が部屋一面を照らす。
地面が揺れる。保健室が崩れ始める。
「レイラぁぁぁあああ!!」
「お姉様。私はもう、あのときとは違うのです」
その瞬間、エミリアは腹部を浅くだが、斬られる。
「う……ッ!!」
後ろに吹っ飛ぶ。傷は浅いが、波動がすごい。
保健室にある薬品の瓶が割れ、エミリアに割れたガラスの破片が頬に当たる。
そして、意識が朦朧としてくる。傷は浅いが思ったより、出血は多かった。
「お姉様。さようなら」
レイラは振り返らず、歩いていく。
「レイラ……ま……て」
私は、レイラにも負けたんだ。そして、レイラはラグナの元へ行くといった……。
悔しいけど、何もできない。
そして、意識を失う。
その後、レイラは死亡扱いになった。犯人はラグナとして。




