コミカライズ記念SS:月の狼は彼見て笑う
コミカライズ記念から始める外伝開始です!
「わ、朝……だー」
ますたの魂の世界で目が覚めて、私は長くてぼさぼさの髪を整えた後しゃこしゃこと歯を磨く。
いつも通り彼に喚ばれないと暇なので、貰った少女漫画という物を読みながら近くの草原でごろごろしてお姉ちゃんが作った太陽の下で日向ぼっこして過ごす。
「……とても暇」
しばらくして数冊の漫画を読み終えて、私はそうつぶやいた。
お姉ちゃんは朝からほかの召喚獣の子達と戦いに行ってるし、過ごす相手がいなくてとても退屈だ。
「喚ばれないかな?」
ごろごろ、ごろごろ……と転がって飽きてから自然とその言葉が口に出る。
ほかの子達より呼ばれる回数が多いのは分かっているし、それが信頼からなのも分かっているけど……やっぱり会えるなら会いたいというのが本心だ。
「ますた、何してるんだろ」
「えっとおはよ、ルナ」
そんな、時だった。
ふと大好きだけど、今だけは絶対に聞きたくない声が耳に届き……気恥ずかしさとか羞恥とか困惑とか混乱とかの色々に襲われて。
「――え、ます……た? なんでいるの?」
ぎこちない動きで、何より顔に熱が灯るのを自覚しながらも……そう聞いてしまった。それに対して彼は、凄くバツの悪そうな顔をして癖なのか頬をかき。
「えっと、漫画持ってきたんだが。タイミング、悪かったよな」
彼の言うとおり本当にタイミングが悪い。
気を抜いてたし暖かさからも無防備になってたのは確か、でもだからといって今みたいな無防備な姿を晒す気はなかった。
私は、ルナ・マナガルムはますたの第一の牙。
常に凜々しい姿を魅せなければ成らないのに、今みたいな腑抜けた姿なんか見てほしくないというか、恥ずかしさが凄くて。
「むぅ馬鹿ますた、ほんと酷い」
「いや……その、なんかすまん」
今更ながらに服には草がついてるし、結構適当に転がっていたから髪にも少し。
そんなだらしない姿を見られたせいか、彼は悪くないのにそう言ってしまう。
でも……会いに来るの一言もなしに漫画を渡しに来る彼も悪い気がする。うん、きっとそうだし、そうしておくことにする。
「というわけでますた責任とって一緒にいて」
「なんでそうなるか分からないが、今日は暇だし別にいいぞ」
「え、いいんだ」
びっくりして思わずそう言った。
鈍感でクソボケで鈍いますただし、こう言ってもなんとか躱すだろうと思ったのに、今日は珍しく受け入れてる。
「たまにはって訳じゃないが、前に貸した奴の感想も気になるし他に用ないしな」
納得はしたけど少し不満。
だけど珍しく彼を独占できるならと、その不満を飲み込んで彼の手を引き地面に座らせる。出来るだけ力を入れないようにして、爪をしまって彼との距離を近づける。
簡単に傷つけてしまうことを分かってるから、それだけは嫌だからと力を抜いて。
「じゃあ一緒に日向ぼっこだよ、ゆっくりしよ?」
「……りょーかい。寝起きだしすぐ寝たらすまん」
「ふふ、何その心配」
そんな事を話しながら、私は彼の横に寝転がりお姉ちゃんの太陽の下で彼と一緒に過ごし、案の定なのか気持ちよさから寝た彼の顔を観察することに決めたのだった。
たまに更新するのお楽しみに!