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第三のシボウ

作者: からすけ

今回初投稿しました、自分の処女作です。

のりと勢いだけで作ったこの作品、色々とダメなところがあると思いますが、よろしくお願いします。

 

 一限のプログラミングの講義が終わり、藤本幸弘は大きく伸びをした。今の大学に入って1年とちょっと、正直プログラミングに関しては(その他も良いとは言えないが)あんまり理解しているかどうか疑わしい。これまで単位を取ってきたのは運だろうと幸弘は思っている。


「はぁ~、んなことより飯だ、飯」


 わざわざ自分から頭を痛くすることは無いか、と教室を出て食堂に向かう。一限が終わったばかりなのに早くない? とか思うかもしれないが、昼になると人が多すぎて面倒なのだ。

 ふと後方に気配を感じて振り向くと、90キロ越え(予想では三桁?)の巨体を揺らして歩く悪友の姿があった。


「よう、御手洗」


「やあ」


 オッス、と幸弘が手を上げると、御手洗と呼ばれた青年も手を上げる。

 この青年は御手洗元気。幸弘の大学に来て最初の悪友で、変態と言う名の紳士だ(本人談)。ちなみに、昔のあだ名は『おトイレ』である。


「御手洗はこれから飯か?」


「も~ちろんさ~。そっちもか~い」


 どこぞの教祖様のような返事にも幸弘は慣れた様子で、んじゃ行くか、と御手洗の歩行速度に合わせる。


「御手洗よ、今日は何にする?」


「う~ん? から揚げ丼かね~。大盛りでなっ」


「お前の分の大盛り、俺に奢れよ」


「何でっ!?」


 そんなアホみたいな会話をしながら食堂に入ると、予想通り人は少なかった。十時半に昼飯を食べる方が少数派なのは言うまでもない。

 幸弘はさっさと券売機でから揚げ丼の食券を買うと、厨房の方へ券を出す。少し遅れて御手洗は先ほどの宣言通り唐揚げ丼の大盛りを頼んだらしく。から揚げ丼の券と大盛りの券を出した。


「なあ、御手洗」


「なんだね?」


「俺のから揚げ丼とお前のから揚げ丼交換しないか?」


「なに言ってやがんだバ~ロ~」


「ですよね~」


 と丼がでて来るまでアホなやり取りをしていると、「やっほ」と声と共に幸弘は肩を叩かれた。


「お、藤倉か」


「うん、わたしも一緒していい?」


「おう」


 幸弘がそう返すと、えへへ、という幻聴が聞こえそうな笑顔で女の子は親子丼の食券を出す。

 藤倉と呼ばれたこの女の子は藤倉茜といい、幸弘と苗字が似ていたのと学生番号が近かったのが縁で友達といった間柄である。

 身長は百七十ある幸弘の目線当たりで、黒いセミロングの髪に少したれ目なのがふんわりとした印象を持つ、少々天然気味な女の子である。


「あ、御手洗君はまた大盛りなんだね」


 うらやましいな~、と茜が言う。


「その代わりに太るがな。結果がこれか」


 そういったのは幸弘でから揚げ丼をトレイに乗せながら憐れむかのような目で御手洗を見る。


「こっち見んな! 腹も見るんじゃねぇ!! はっ、これがし、視姦!? ら、らめぇぇっ! こっち見ないでぇ!」


 正直、デ○がそれを言ったらただキモイだけだ。 


「う~ん、でも健康のためには少しやせた方がいいんじゃないかな?」


 色々とスルーしながら親子丼を受け取り茜が言う。


「いやいや、健康のため、と言う部分ではそんなことは無いぞ」


「え、どういうこと?」


 茜が頭にクエスチョンマークを浮かべる。


「ふ~ん、やせる気なんて無い!!」


「まあ、その話は食いながらにしよう」


「無視ですか?」


「わかったよ~」


「あ、あるぇ~? 無視なの? 虫なの? MU☆SI☆KA! 貴様等ぁ!!」


 渾身のギャグ(本人はそのつもり)をスルーされるのは一番辛いことであることをここに残しておく。




「でで、どういうこと?」


テーブルに着いたとたんに茜が隣に座る幸弘に問いかける。

ついでに言うと先ほどヌルーされていた御手洗は幸弘の向かいに座り、並んで座る二人を見てニヤニヤと『言って』いるがこれも無視されている。話に参加する気はあまり無いらしい。


「藤倉は太っているのが不健康で、やせている方が健康、というイメージがあるよな」


「うん。違うの?」


「ああ、むしろやせている方がやばい可能性がある」


 幸弘がそう言うと、茜は信じられないといったふうになり、御手洗は相手する人もいないのに何故か勝ち誇っている。


「何で?」


「それは――」


 ゴクリ、と誰かが息を呑んだ(気がする)。


「脂肪のせいさ」


「し、脂肪?」


「お前等は、皮下脂肪と内臓脂肪って知ってるよな」


 御手洗、藤倉の二人が頷く。


「最近になってその二つ以外の、第三の脂肪が発見されたんだ」


「なんっ……だとっ……」


「え~と…………あっ、うそだっ!」


 どこぞのひぐらしを彷彿させる茜に、御手洗は言わずもがな、何気にノリノリな二人である。

 茜の方は思い出す努力をしてまで言う価値があったのか、幸弘は疑問に思ったが人それぞれだな、と頭の片隅に追いやった。


「嘘じゃない、異所性脂肪ってやつだ」


「異所性脂肪?」


 親子丼を可愛らしい口の中に収めながら茜が首を傾げる。

 御手洗は話は聞いているが、から揚げ丼をその“立派”なお腹の中へ納めるのに集中している。


「異所性脂肪とは何? と言うとだな、まず脂肪ってのは本来、脂肪細胞っていうカプセルみたいなのに包まれてる状態で皮下脂肪とか内臓脂肪に蓄積されているんだ」


「うっ、想像するとなんか嫌だね」


 幸弘がまあな、と笑いながら返す。一味唐辛子で真っ赤に染まったから揚げ丼を掻っ込みながらその話を聞いた時を思い出す。他はどうか知らないが気分のいいものでなかったのは確かだ。


「ところが、異所性脂肪は脂肪細胞に包まれていない、剥き出しの脂肪が心臓とかの臓器や組織の細胞の中に直接溜まることかあるんだ。んで脂肪の持つ毒がダイレクトに組織とか臓器をダメにするんだと」


「それは、怖い脂肪だねぇ」


「そんでもって問題なのは、この異所性脂肪は太るとか、外見に変化は現れない」


「なんですと!?」


「まず、脂肪が真っ先に溜まる場所が皮下脂肪の脂肪細胞なんだ。皮下脂肪の脂肪細胞は言わば、脂肪の貯蔵庫だな。貯蔵庫がいっぱいになると、次は内臓脂肪に。そこがいっぱいになると異所性脂肪が溜まるんだ」


 脂肪のオーバーフローが異所性脂肪と言った所かな? と幸弘の話を聞いて想像したのが悪かったのか、茜はお腹を押さえながら嫌そうな顔をする。


「んで、太っているのは皮下脂肪に脂肪が溜まるからなんだな。しかも、そこには日本人特有の問題もある」


「そ、それは……?」


「日本人は皮下脂肪が付きにくい体質らしい。つまり、やせている、もしくは普通だとしてもそれは皮下脂肪の許容量が既にいっぱいになっていて異所性脂肪になっているかもしれない、ってことだな」


「太りにくくて喜んで良いのか悪いのか悩ましいところだね……」


「そうだな。ちなみにこれは、日本とアメリカのどっかの大学が民族の脂肪の付き方の違いを調べた結果らしい」


「ということは、皮下脂肪満載の俺は安心ってわけだ」


 空になったどんぶりと箸を置いて、どこか勝ち誇ったふてぶてしい態度でふうん、と『声』に出してイラつく笑みを浮かべる。


「まあ、だからと言って太っているから安心、と言うわけは全く一切ありえない。寧ろお前は太りすぎだ、やせろ」


 ですよね~、とほざく御手洗に、自覚してんなら言うな! と怒鳴った幸弘は大きく溜息をついた。


「その異所性脂肪の対策ってないの?」


「ああ、簡単だ。筋トレしとけばいい」


「……私、長続きしないかも?」


「俺はする気なんてねーなー」


 それぞれが空になったどんぶりを置いて言う。


「御手洗はともかく、やる気があるなら簡単な筋トレでいいんだぞ?」


「走りこみとかしなくていいの?」


「むしろ効果はほとんどないな」


「……痩せるのには走ったりするんだと思ってたんだけど」


「基礎代謝とか運動に使うエネルギーの順番は血中とかのブドウ糖、肝臓のグリコーゲン。それを使い切っていから内臓脂肪、皮下脂肪の順番に消費されるんだ。血中ブドウ糖を使い切った状態でフルマラソンを走っても、肝臓のグリコーゲンを使う程度で内臓脂肪や皮下脂肪を使うところまではいかないってさ」


「簡単に言うと?」


「走る暇があれば筋トレした方が効率的」


 それはわかりやすいね、と茜が頷く。


「寝る前に腹筋とか腕立てを10~20回ぐらいしとけば、それだけでも効果は出ると思うぞ」


 もちろん毎日続けてだがな、という幸弘の言葉に茜は眼をそらした。


「がんばるよ~?」


「いや、うん。頑張ろうな?」


 だめかもしれん、と内心思いながらも応援だけはする幸弘だった。




 その日から、夜な夜な茜から「腕立てが出来ないよ~」という電話のコールが幸弘に度々掛ってくることになった。




おまけ


「腕立てがきついです」


「いや、無理にする必要はないんだが……」


「だって、あんなの聞かされたらやらなきゃ、って思うんだもん」


「それじゃ、腕立ての代わりに両掌を合わせて押し合えばいいぞ」


「イメージしにくい」


「いただきますのポーズで押し合う」


「頑張ってみるよ~」


「あいよ、頑張ってな。お休み」


「うん、お休み」


………………

…………

……ぷに(何の音かは推して知るべし)


「……俺も筋トレする必要あるな」


 その日の夜から胡坐に胸の前で両手を合わせてウンウン唸っている幸弘が見られることになった。


読んでくれてありがとうございます。

誤字脱字など、これは違うんでない? などといったものがありましたらご報告をお願いします。


この小説を書いた理由は、大学でとある授業を受けて、これは覚えられないんでない? と思った自分と友達が、「小説にすれば覚えられるかも」とアホなことを言い出したのがきっかけでした。

その結果が本来考えていたものとは遠く離れたものになってしまいましたがorz


実は登場人物に中で唯一フィクションとノンフィクションの狭間の存在がいます。

ええ、御手洗君です。

80%ほどがノンフィクションで残りがフィクションです。

……ほぼ自分の友達と変わらない(爆

違うのは名前と………………しゃべり方がほんの少し違うくらい?

大丈夫、ちゃんと許可は取っt――――く、首が掴まれているのはなんで、かな?

え? 「ふじゃけんじゃねえぞ、ば~ろ~」?


ご、ごめんなs――





アッ――――――

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― 新着の感想 ―
[良い点] 登場人物たちのセリフが続きすぎることなく、また適度に落ち着いた文章で、個人的にとても読みやすかったです。 [一言] 遅ればせながら読ませていただきました。 他人に影響されやすい私は、あわて…
[一言] 教育小説ですねこれは、でも初めてにしては上手かったです。
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