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 いざ連れ去って部屋に閉じ込めたは良いものの、貴族娘たちは誰が最初となるかで仲良く言い争っていた。


「内通者の協力を得ているのはわーくしっ。それ故に機を見計らって手を差し伸べられたのではないですか。実際に行動し、この街へお連れしたのはわたくしです。もしも王宮の人間に顔を見られでもしていたら、首が危ういところでしたのよ?」


「その勇気ある行動は称賛に値します。ですが、だからと言って特別扱いするわけにもいきません。どちらにせよ誰かが負わなければならなかった役目。たまたま偶然、あなたがヒマだっただけです」


「あらやだ、ヒマとは失礼なっ。なら過去へと舞い戻ってあなたがおやりになればいかがかしら? もちろん、中央学院に入って有望な人材と繋がりを持つところから」


「空話はいいです。問題は……」


「それになんですかあれは、食事中に訪れるなど聞いておりません!」


「御者を寄越したのはあなた。殿方をお迎えする準備をしろと言われましても、すべて侍女がやってくれますもの。あたくしは悪くありませんことよ? それにあのレストランテはあたくしのお店。出資者が様子を見に訪れてもなんらおかしくはないでしょう?」


「だからと言って悟られでもしていたらどうするおつもりですかっ!」


 とかなんとか言い合ってるが、以下トンチンカンなトリオを紹介するぜ!


 犬車に乗せてくれた案内役――国境警備を任されている辺境の小貴族で地方商会の出資者、わたくしなペレッタさんは中央学院出身で、王宮の人間と友人関係にあるらしい。雰囲気的に首謀者か? 一番頭のキレる秀才だな! プッツンしてすぐキレるリーダー、熱いねぇ!


 宿を提供してくれた屋敷の娘――リーゼロッタさんは大公国にある第二分院出身の真面目っ子であり、領地や城を持たない下級貴族ゆえにか、自らの地位に少々劣等コンプレックスを抱いているらしく、上昇意識が強い頑張り屋さん。つい悦に浸って語ってしまうそんな抜けたところもチャームポイント! マジメでドジっていいよね! ステキだね!


 そしてレストランで話し掛けてきたあたくしさんが、この小城の娘らしい。自らの地位に甘んじているのか、言葉の端々から滲み出る地位だけ高いバ……お姉さんっぽい見た目に反して、ちょっと子供っぽい感じがギャップかわいい! おっぱいも一番大きいよ? きっとその中には小切手が入ってるんだね!


 そんな三人は幼い頃からの馴染みで、大公国が主催する社交界で出会い、歳が近いという事で仲良くなり、年月を経て男をさらう事を画策した。っとまぁ、こんなところらしい。


 ――おっと、お前は誰だって? そんなの決まってんだろ、ちょい未来のシコティッシュうっうだ! 緊縛されて放置されるドエムの気持ち、分かってきたかも。


「コホンっ。無駄話はいいです。問題は誰が最初となるか。それに限りますわ」


「……ですわねっ。ではゲンコツと平手で決めましょ? あたくしたちは三人。同時に出して被らなかった一人が勝者となる。どうでしょう?」


「大切なハジメテをそんな偶然で決めたくはありませんわ」


「同意ね。子供じみたお遊びで淑女の大切な儀を決めてはなりません。わざわざ獣臭い傭兵をメイドとして雇った私の面目も少しは立てて欲しいものですっ」


「良いではないですか、傭兵のお給料ほど安いものはありませんよ。獣人族の娘に懐柔させられている殿方の心を引き、あなたも安心出来るだなんて、なんと喜ばしい」


「しかしっ! 名誉あるメイドの服装を蛮族にさせるなど、貴族としてのプライドが許せませんッ!」


「まぁまぁおよしなさいな。こうしてあたくしの城にて無事確保出来たのですから」


「三人で協力して、確保出来たのですけどね」


「その通り、あなただけの手柄ではありませんことよ? わたくしの巧みな話術によって手中に収めたのですから、わたくしが最初に失礼させていただくのが道理。人の論理ですわっ」


「ですがっ、この城はあたくしの物。拘束具もあたくしの所有物。ならばその内にあるモノはすべてあたくしのモノ。最初の味見くらいはさせてちょうだいな」


「なんですかその暴論は! それだとわたくしたちまで貴女のモノになってしまいますわっ!」


「少しばかり落ち着きましょうよ。ここは年長者である私が代表を務めさせていただきます。男とは凸、なにがあるか分かったものではありません。私が身を挺して前座を努めさせていただきます」


「年齢なんて関係ありませんよ? 男の前で年功序列など無意味。もっとも美しい者が選ばれるべきです。……トシマめ」


「あら、今なんとおっしゃいました?」


「年回りのお話は止めたほうが無難だと言いましたの。あの方の好みが若い娘だった場合、貴女の不利となってしまいます。今は歳を考えず、同じ床に肩を並べる者として冷静に議論しましょう」


「たしかに、少々不平等ですわよね……。なら学院の成績で決めましょうよ。より優秀な子孫を残すのが最優先です。それが我が国の発展にも繋がります」


「それは優生思想に繋がりますので宜しくないお考えですわね。たとえ貧しい親の元に産まれようとも、後天的に優秀となりえるのが人間です」


「貴女は先天的な影響が強いですものね。ご立派です」


「あらやだ、わたくしのお母様を侮辱なさいますの?」


「いいえ、貴女の思い違いですよ。そう言えば、学院の理事会に貴女の母君が居りましたわよね? 数年前の試験でも宜しいのならば、私は学年二位でした。最高値で良いのならば私になりますけど?」


「お母様は関係ありません。それに貴女は第二分院だからでしょう? わたくしは中央学院で五位。地方の分院程度でしたら一位の更に上のはずです」


「……やっぱここは美貌で決めましょ!? より美しい者の血筋のみが残る。それがこの世の理。王宮からも勅令が出されているでしょう? 決して男を奪い合うな、男に選ばれし者こそが正義である。いかなる正義の邪魔も許さぬ。と」


「そうですけどッ!」


「それを言ってしまったらお終いですわ。主に私たちが」


「……ですわねっ!」

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