貴様! お嬢様の御前だぞ!
3名様、ご案内~。
この10日間は、結構濃かった。
街道を移動すれば、ゴブリンやウルフにオーク等の襲撃があったし、盗賊共にも襲撃された。
……まあ、俺達は経験重視で最後の1匹とかばかりだったけどな。
特にオークが出た時、リンが良い笑顔でキルしていったからな。
理由は、オークの肉は美味いらしい。
……実際に食ったら、美味かった。
それと盗賊共だが、少しずつ俺とユイも最初から参加して慣れていった。
そのお陰で、今日も襲撃してきた盗賊共を討伐したのだが、俺達で、盗賊共数人を拘束して、それ以外を俺達の手で討伐して、アジトの聞き出しからアジトの処理までをやった。
その代わりに保護者のリンもアジトには同行したから、便乗させて貰った商隊から途中下車して、終わったら徒歩で辺境都市キアルデアに到着した。
運良く、俺達が納得出来る宿屋も見つかり、部屋を取りゆっくりする事にした。
「やっぱり、徒歩はキツいね~」
「そうだな。 とりあえず、冒険者稼業とかは国境を越えてから考えよう。 それとリン」
「はい、レン様」
「本当に俺達に付いてくるのか?
家族とかは大丈夫なのか?」
「大丈夫です。父母は去年亡くなりましたから」
「すまん」
「何故、謝るのです?」
「いや、それは……」
「……ありがとうございます。
父母の最期をきちんと見送りましたから」
「そう。 それなら良いんだ。
じゃあ、兄弟や姉妹とかは?」
「そちらも大丈夫です。 独立した以上は、自分で切り開くものですから。
それに事情を記した手紙は送っています」
「分かったわ」
「リナもありがとう」
「なあ、リン」
「何でしょうか、レン様」
「マルファーレ王国とは、どんな国だ?」
「詳しくは知りませんが、現国王は賢王と伝わっていますし、商業も盛んだと聞いています」
俺は、それなら大丈夫かなと思いながら、部屋でゆっくり過ごして後は寝るだけとなり寝た。
ラノベなら、何かイベントが起きるのになぁ、と思いながら意識は沈んだ。
そして、本当~に、何~も、イベントが起きずに無事に国境を越える事が出来た。
「何も無かったね」
「そうだな、ユイ」
俺とリナは「アレ?」と、肩透かしだなと思いながらも徒歩で移動中に、不安から進行先に向かって千里眼を発動させた。
序に、視界をワイパーみたいに振ってみた……!?
「前方右手側の林の奥で襲われている女性がいる!」
「リン、頼む!」
「分かりました。 後から来てください」
リンは自分の荷物(偽装用)を俺達に預けて飛び出した。
リンの荷物はユイの「倉庫」に仕舞い、俺達もリンの後を追った。
因みに、リンは全く気にしていないのだが、リンの荷物(偽装用)の中には下着等も入っている為にユイが預かる事になっている。
更に言えば、リンは風呂から出る時は、バスタオル1枚で出てくる。
……白肌の夜○さんを連想してくれ。
俺達が到着した時には、既に収まった後でリンは俺達の到着を待っていた。
そして、現場から少し離れて、何が起きていたのかの説明を受けた。
その内容だが……
被害者は、この先のマルファーレ王国側の辺境都市「ベルモルド」の領主である辺境伯の令嬢で、父親である領主の代理としての仕事帰りに、寄り道したら襲撃されたみたいだ。
……そういえば、奥に花畑が有ったな。
因みにだが、リンの到着が後3秒遅れていたら、娘はお嫁に行けない身体になる所だったらしい。
「良かったね、レン」
「そうだな、ユイ」
……うん、知ってた。
ユイには内緒だけど、千里眼で全て視ていたから、純粋に間に合って良かったと思うよ。
もし、貴族令嬢の貞操観念がラノベみたいだったら、令嬢の人生が終わっていたから。
さて、向こうの準備が整った所で、向こうの誰かが、俺達に声を掛けてきたが、外見は10代後半ぐらいかな。
「貴様らには過ぎた事だが、お嬢様が直々にお礼をお伝えしたいそうだ。……付いて来い」
……俺達を値踏みした上に、偉そうだな。
俺達は、そのお嬢様の社交界的だったり、人生的な命の恩人だよ?
それなのに、あの態度はなんだ?
国王は賢王でも、それ以外の人間まで「そうではない」という事か?
しかし、貴族相手に必要以上に、敵対しない方が良いから付いていった。
「お嬢様、お待たせてしまい申し訳ありません。
例の者達をお連れしました」
俺達を連れてきた野郎が、そう言うと俺達と豪華な馬車の前に立つメイドらしき女性以外が、一斉に跪いた。
そして、人生の危機一髪を思い出せない様にドレスや化粧で調えた美少女が、馬車から出てメイドに手を引かれ馬車から降りた。
「危ない所を救けて頂いてありがとうございます」
「間に合って良かったな」
「貴様! お嬢様の御前だぞ!」
「良いのです、エリック」
「……は」
「恩人である貴女様達に、私としては、何かお礼がしたいと思いますが、何か希望はありますか?」
「……特には無いかな」
「貴様! 下賤の身で不敬だぞ!
今直ぐに、額を地に擦り付けて謹んで辞退をし、この場から立ち去れ!」
「エリック!」
「しかし、お嬢様」
「下がりなさい!」
「……はい」
「私の者が失礼しました」
目の前のお嬢様は頭を下げて部下の非礼を謝罪した。
「お嬢様! その様な下賤の者に頭を下げる必要はございません!」
それを聞いたお嬢様は、毅然として言った。
「エリックに拘束と猿轡を」
「「「は!」」」
「何故です、お嬢様!?」
約5分後、静かになった。
「……大変お見苦しい所をお見せしました」
「少なくとも、俺達の前に出さない様にしてくれ。
それがお互いの為だろうから」
「……ありがとうございます。
それとお礼の件ですが、せめて、我が家にご招待させてください」
でた!
貴族屋敷への「ご招待」が!
ラノベだと、此処から色々なイベントが発生するんだよなぁ。
リンを見ると頷いた。
ユイを見たら頷いた。
「分かった」
「それは良かったです」
こうして、俺達は異世界ファンタジー系ラノベのテンプレである貴族屋敷への「ご招待」を受けるのだった。
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