分かったけど、1人生け捕りで頼む
残念ながら、メンタルが鋼鉄では無いです。
昼前にリンが戻ってきて、一通りの説明を聞いた後にリンは寝た。
リンが寝た後、俺達は万が一に備えてリンが買ってきた冒険者用の服を着て靴を履き、学生服等はお互いの「倉庫」に仕舞った後に、お互いにステータスを見ながら色々と確認をして、リナには魔力操作を出来る様に伝えた。
俺も、雷・火・風の属性魔法が使える筈だから、使える様に鍛練した。
この鍛練では、異世界系ラノベを参考にした事で、思っていた以上に上手くいったよ。
それと、王城に居るクラスメイト達に多少は心を砕いたが、これ以上は何かをする気は無い。
あの時にユイと北条先生以外は、誰も何も言わなかったし、行動に移さなかったからだ。
しかも、悪口も言っていたしな。
「……結構しんどいね」
ユイは、真剣に頑張っていて、俺の時と同じで足元には少しだが水溜まりが出来ていた。
「そうだな。 でも、この魔力操作の熟練度が上がれば上がる程、色々と可能性が広がるし強くなり易いから頑張れ!」
「うん、分かったわ」
夕食頃に目を覚ましたリンと一緒に宿屋の夕食を頂き部屋に戻る。
部屋に戻ると、ユイが自分の服に何度も顔を近付けてソワソワしていた。
「……ああ!」
リンが何かに気付いて、ユイに向かって手の平を向けた。
「洗浄」
「……え、スッキリした!?」
「これは生活魔法で、身体や物品に付いた汚れや、匂いを消す魔法よ」
この生活魔法は、魔力を持つ者なら誰でも修得する事が出来るらしい。
そして、日本生まれの俺やユイにとっては、今さっきまでは汚れや匂いを我慢するしかないと思っていたが……
俺もユイも、何とか翌日の朝食までに洗浄や、他の生活魔法を覚える事が出来た。
宿屋でかなり早めに朝食を食べ終わると少し食休みをしてから精算をして、俺達はリンが交渉してくれた商隊に便乗して東側の隣国「マルファーレ」を目指す事にした。
……正直、呪縛契約とはいえ、良くてLv2程度だと、数日後に消える可能性があるからだ。
「とりあえず、同等程度の軍事力で中立国のマルファーレ王国なら、引き渡し要求に対して直ぐには従わないのだろう?」
「そうですね。 恐らく大丈夫だと思います」
「それなら良かったわ」
俺が徴収した宝飾品は、多少は足元を見られたみたいだが、それでも、平民や駆け出し冒険者にしては超高額だから、暫くはやっていける。
因みに、王国騎士の鎧や剣は、最悪潰せば素材として使えるし、状況に因っては偽装用にもなる。
俺達は商隊の馬車の揺れに我慢しながら身体の中で魔力操作の鍛練をして、ユイは同乗者から色々と情報収集をしている。
俺が言うのはなんだが、ユイは東京のそれなりに有名な芸能プロダクションの何社からスカウトを受けた事がある。
勿論、ユイは断ったがな。
次にリンの戦闘力だが、聞いてびっくりしたが、冒険者ランク「Bランク」だった。
だから、この世界の常識を覚えるまでは、リンにお願いする事にした。
「大変ですね」
「そうなんだよー」
リンは商隊の護衛をしている冒険者に混じっていて、ユイは楽しそうに他の人達と会話をしていると馬車が止まった。
ガコン!
「……止まった?」
「……そうね?」
何時かは来ると思っていたが、まだ当分は来て欲しくない連中が現れた。
「命が惜しかったら、服と靴以外を置いて消えな」
……盗賊共だ。
「「「「「ひぃー!」」」」」
「黙れ! 死にたくなければ言う事を聞け!」
「護衛の冒険者チーム「金鎖」は商隊を囲んで守れ!」
リンは、俺達の所に来て言った。
「レン様とユイは待機でお願いします」
「分かったけど、1人生け捕りで頼む」
「……分かりました」
察したリンは、少し間を置いて返事をした。
「何を考えているの?」
「この世界で生きる以上は、出来ないといけない事があるから、それをリンにお願いしたんだ」
「……そうなの?」
「ああ」
ユイは、あまり異世界系ラノベを読んでない筈だから知らないみたいだな。
そして、外からは「ぎゃー」とかの野太い悲鳴が聞こえてきた。
……数分後には静かになった。
「準備が出来ました」
リンが言った。
「ちょっと行ってくるよ」
「……行ってらっしゃい、レン」
……あ~、行きたくないなぁ。
でもなぁ~。
経験しないとなぁ~。
「はい、レン様」
「ありがとう」
商隊の護衛をしていた冒険者達が盗賊共を処理をしている中で俺は、リンから古い長剣を受け取る。
多分、この長剣はこいつら「盗賊」共が持っていた剣だろう。
……そう!
異世界で、少なくとも冒険者として生きていくのなら、絶対に避けて通れない「殺人」だ!
2日前まで、散々読んでいた異世界系ラノベから覚悟だけはしていたが、こんなに早く訪れるとはなぁ。
「うー!」
「んー!」
「……」
リンには1人で、と言ったのに、猿轡付きで拘束された盗賊が3人居た。
「商隊や護衛の冒険者達から許可を得て、必要な情報は聞き出してありますから、問題ありません」
「……わ、分かった」
……先ずは魔法で。
「……ふ、火矢」
「う゛ー!」
「その程度だと死にませんよ」
「……分かった。 火矢!」
「う゛ー……」
「……次です」
「……ああ」
次は、俺の手にある長剣だ。
無抵抗な雑魚相手の場合の、必要な攻撃魔法の威力は大体分かったから、次は武器での直接攻撃だ。
これが出来ないと、最悪、ユイを守る事が出来ないから殺るしかない!
「……」
「ん゛ーーー……」
胸骨が有るから、斜めから心臓に向かって平突きで刺したが、肉を裂く感触は精肉や鮮魚とは違う……
「……ぅ゙!」
俺は、街道の端に行き……吐いた。
「はい、レン様」
「……ありがとう」
俺はリンから水筒を受け取り口を漱いでいると、ユイが馬車から降りて俺の前に立って言った。
「見損ないでよ、レン君!」
「ユイ!」
「私、レン君の家に行った時にチェックしていたんだから!」
ユイはそう言って、リンが集めていた盗賊共の武器から槍を選び、最後の盗賊の胸を突き刺した。
当然……
「……ぅ゙ー!」
ユイも吐いた。
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