本当に、そんな褒美で良かったの?
王女の前に出る文官なんて……
昨日、近衛騎士団との総当たりの模擬戦という疲れる仕事を熟した俺は、冒険者ギルドの練武場でユイ達と軽く模擬戦等をした後、王城に戻ると部屋でゆっくりし、美味しい夕食に舌鼓をして、風呂に入り、後は寝るだけの時に、俺達が居る部屋にクローディアと壮年の文官らしき男が来た。
「どうした?」
「真面目で面倒臭い話をしに来ました」
少し固い表情に、俺達は真剣な話だと理解した。
「どんな?」
「今回の近衛騎士団との模擬戦の結果を考慮して、外には発表はしませんが、内々で邪炎竜討伐の表彰式を執り行う事が決定しました」
「……まあ、外への発表が無いだけマシか」
「そこは、私やアーベルトお兄様とで、頑張りました」
「ありがとう、クローディア」
此処で、一緒に来た文官が口を挟む。
「それで、その表彰式で国王陛下から褒美を与えられる事になりますが、何か希望はありますか?」
「……褒美か」
「参考までに言いますと、爵位であれば子爵からとなり、不動産であれば、商業地区エリアの一等地の侯爵級の屋敷が与えられ、金銭であれば白金貨300枚かと思われます」
因みに、この世界の貴族階級は、下から「男爵」、「子爵」、「伯爵」、「侯爵」、「辺境伯」、「公爵」となるから、爵位以外なら金で買える最大限の褒美と言えるな。
まあ、国と王族の現在と未来の不安を取り除いた褒美としては妥協とも言えるな。
しかし、屋敷は裏から見れば「拘束」だし、金銭は、必死にやれば半年で稼げる額だ。
そうなると……
「……は、どうかな?」
「成る程。 国や王族としても体面は保たれますし、金銭的な負担がほぼ無いのは素晴らしい。
勿論、リスクやデメリットが無い訳ではありませんが、クローディア殿下が既に保障しているのも同然ですから、大丈夫でしょう。
ただし、その時は監視を付けますが、よろしいですか?」
「監視が付くのは当然だから構いません」
「分かりました。 それでは、褒美は決まりました」
「レン」
「何、クローディア」
「本当に、そんな褒美で良かったの?」
「屋敷は、最終的には金が有れば手に入るし、その金もモンスターの討伐等で稼ぐ事が出来る。
次に、貴族の爵位は、俺達は冒険者をやっているのだから分かるだろう?」
「……伝統と規則で動けないわね」
「そうだろう。 最後に、こういう時に必ず候補には挙がる『女性』だけど、俺にはユイ1人で充分だし、ユイ以外は要らない」
「……ほう」
「……へぇ」
「レンのバカ!」
バチン!
「痛っ! ユイ、背中を叩く事はないだろ!」
「レンが悪いの!」
「……話が進まないから止めてね」
「……はい」
「それなら……まあ、いいか。
そんな訳だから、金、権力、地位、女、どれも必要無いな」
「分かったわ」
「そうですな。 それだけの力と意思がお有りなら、確かに屋敷や金銭に、女性や爵位は必要ありませんな……今の所は」
「どういう事です? 今の所はって」
ユイが質問した。
「あ、その心配も分かりますが、大丈夫です。
拠点の王都に、良くして貰っている貴族の方がいますから」
「……出遅れましたか」
「申し訳ありませんが、そういう事です」
「分かりました。 ただ、私共の門は、貴方達に対しては何時でも開いている事を覚えていてください」
「ありがとうございます」
要するに、貴族のトラブルは貴族でしか解消出来ないってやつだ。
「では、せめてコレを受け取ってください」
そう言って、メダルを俺に渡す。
「このメダルはアレですか?」
「そうです。 そのメダルを見せれば、街や都市に王都に、私の領地の出入りの際に貴族門が使えますし、それなりに融通が利きます」
「ありがとうございます」
「それと、私の名は『セーブル=ラスタ=ウグベスク』で、宰相をしております」
……やっぱりな。
褒美を具体的に、断言に近い言い方をするからな。
「さて。あまり遅くなっても、レン殿達にご迷惑になりますからお暇しましょうか」
「そうですね。 表彰式の日時は、また追ってお報せします」
「それと、私の事をセーブルとお呼びください」
「分かった」
こうして、クローディアと宰相が退室した。
クローディアside
「宰相」
「はい、クローディア殿下」
「何故、あれ程の事を?」
「邪炎竜の討伐は、充分な理由になります」
「……まだ、有りますよね?」
「はい。 あの近衛騎士団との模擬戦ですな」
「模擬戦……ですか?」
「そうです。 邪炎竜の討伐は、仲間の力も加わったからこそかもしれませんが、近衛騎士団との模擬戦ではレン殿1人で魔法も身体強化のみで……です。
正直に言って、彼は脅威です」
「それ程ですか?」
「それ程です。 そして、私達の対応としては信頼と誠意が、最も安全で我々のメリットが高いのです。
その為なら、私のメダルぐらい安いものです」
「そう……ですか」
「後、ユイ殿が居ますから難しいでしょうが、レン殿なら問題が無いので大丈夫ですよ」
「……はい!?」
「邪魔はしませんし、表立っては出来ませんが、応援もします」
「……」
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