……魅了に掛かったな。
贈り物を送る相手が女性で複数居るのなら、しっかり考えないといけません。
翌日、俺達は街を散策する事にした。
「レン。 アレ美味しそう」
「幾らだ?」
「1本銅貨3枚だ」
「4本だ」
「まいど!」
俺は銅貨12枚を渡す。
「ホイ、焼けた」
俺達は1本ずつ受け取る。
「……美味い!」
「美味しい!」
「美味しいですね!」
「美味いのじゃー!」
昨日食ったジャイアントバッファローとはまた違う旨さだ。
次に目を付けたのは露店の銀細工屋だった。
「……結構、良いのが有るな」
「どれも自信作だよ」
「ユイ、欲しいのは有るか?」
「……う~ん。 レンに選んで欲しいな」
「わ、分かった」
……俺が選ばないといけないのか!?
ちょっと粒は小さいが、鮮やかな青石を使っているこの髪飾りにしよう。
「……これはどうだ?」
「……うん」
「店主、幾らだ?」
「銀貨5枚だよ」
「はい、銀貨5枚」
「まいど」
「レン、付けて」
「……分かった」
……めっちゃ緊張する~。
「どうかな?」
「とっても似合っているよ、リナ」
「あ、ありがとう」
ユイが喜んでいるから良かった。
「リンは?」
「私は……」
リンに似合うのは……この紫石を使った髪飾りだな。
「これは幾らだ?」
「銀貨6枚だ」
「分かった」
「待ってください。 ユイの髪飾りより高いじゃないですか!」
「……?」
「リン。 私は気にしてないわ」
「……分かりました」
意味が分からないが、2人が納得したみたいだから銀貨6枚を払う。
それで、俺がユイみたいにしようとしたら、リンが髪飾りを奪い自分で付けた。
「……どうですか?」
「似合っているぞ」
「ありがとうございます」
買うものを買ったから露店から去ろうとしたら、店主が言った。
「そっちの姉さんには買わないのか?」
実は、キサラに装飾品を付けても意味が無いんだよな。
本性の刀から人型に、また人型から本性の刀に変化する時に、何故か装飾品が消滅するだよなぁ。
それでも……
「そうだったな」
「我が主……」
キサラに似合う赤石を使った髪飾りを選ぶ。
「これは幾らだ?」
「銀貨4枚だよ」
「ほい、銀貨4枚」
「まいど」
そして、俺はキサラに買った髪飾りを付ける。
「……ありがとうなのじゃ、我が主」
「似合っているぞ、キサラ」
キサラの喜んだ笑顔を見ると、意味が有る無しに関わらず買うという事実が大事なのだと、俺は良い勉強になった。
俺達の散策を昼食後も続いた。
「異世界料理も侮れないな」
「確かにね」
「それは良かったです」
「美味ければ、それで良いのじゃ」
「確かにな」
「それもそうね」
そんな事を話しながら歩いていると、テンプレさんが投げキッスをした。
「あぁ!」
通り過ぎようとした路地裏から女性の呻き声が聞こえた。
「ん?」
思わず足を止める俺。
「レン、どうしたの?」
「いや、この路地裏から女性の呻き声が聞こえた」
「レン」
「分かっている。 行こう」
「そうこなくちゃ」
俺達は路地裏の奥に向かうと、そこには身体も服も汚れていてボロボロの状態で倒れている女性と、893的な空気を出している身なりの良い格好をした男が3人居た。
「何をしている?」
俺が、そう聞くと、3人の中の1人が答えた。
「表を歩く坊っちゃんお嬢ちゃんが入って良い場所じゃない。 消えな」
「悪いが、そっちの女性を見ると、そういう訳にはいかないな」
「痛い思いをしないと分からないみたいだな」
そう言うと、残った2人の内1人が俺に向かって来たのだが、見え見えの右テレフォンパンチだったから、そのまま躱して山嵐を放つ。
「……がはっ!」
「……ほう」
「どういう理由や状況で、そうなったか教えてくれないか」
「……良いだろう」
そう言ってリーダーらしき男が語った。
簡単に纏めると、彼女自身が彼らから借金をしていて、それなのに逃亡しようとして捕まったのが、今の状況らしい。
「次は……」
そう言って、彼女に小治癒を掛けて話せる程度には回復させた。
そして、彼らに背を向けて魅了を発動させる。
「……」
……魅了に掛かったな。
「これから質問するから答えて貰う」
「……はい」
「彼らが言っていた借金の話は本当か?」
「……はい」
「その借金は、自分以外の誰かの為に作った借金なのか?」
「……いいえ」
「逃亡したのは、完全に自分の為だけか?」
「……はい」
俺は魅了を解除する。
「……え!?」
「……済まないな邪魔して」
俺は、そう言いながら彼女や彼らから離れてユイやリンの前に立つ。
「……良いのか?」
「俺達は別に、物語に出てくる様なお人好しじゃないんでね。
借金を作り、その借金を踏み倒して逃亡する方が悪いのは当たり前だろ?」
「それはそうだが……」
「だから、これで失礼するよ。
ただ……」
「ただ?」
「俺の仲間や関係者に、違法な形で危害を加えたなら容赦しねえからな!」
そう言って、ガチな威圧を放つ。
「……わ、分かった」
「それなら良いんだ」
返事をすると、俺は表通りに戻る為に歩きだした。
勿論、ユイやリンやキサラも。
後ろでは、女性が「助けて!」とか言っているが、自業自得だから無視した。
「レン?」
「同じ犯罪を犯して、男は死刑で、女は無罪なんて有り得ないだろ?」
「……それもそうね」
「その通りですね」
リンは地元民だから当たり前の反応だし、ユイも大分メンタルが異世界に適応しているな。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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山嵐の説明
この山嵐とは、柔道技の1つで、体重制で行われている現代柔道では、幻の技と言えます。
どんな技かは、ググッてください。




