運命士三人に操られているけど、これほんとに愛ですか?いいえ、ケフィアです。
「デュエ!」
「ゴーヤー!」
「きみにきめる!」
彼らは一斉に掛け声をかけた。いや揃えろよ。
「彼女は渡さない!」
「いや俺が!」
「まけないぞう!」
彼らは一斉にわたしを奪い合った。
彼らは運命操作士。略すと運命士。
そんな三人は、目先の運命をしばらく操作できる。
運命士の能力によって、彼らはバトルを始めた。
……一斉にわたしの運命を操作して。
「あ、カレーパンケーキ屋さんだ。入ろかな、いや、ちょっとカロリー高いかな」
すると店内には、すでにエオリーがいた。
「うわ、操られてる」
ムキになったわたしは、踵を返す。
すると、力士がキリンを追いかけている瞬間に出くわし、ひかれそうになった。
「きゃー!」
「あぶない!」
飛び込んで助けてくれたのはロックだった。ロックは微笑む。
「やあ、あなたでしたか、よければカレーパンケーキでもご一緒しませんか」
「え、あ」
すると、街頭演説が近くで始まった。その演説をしていたのは、ミクスだった。
「えー、わたしに投票していただいた暁には、わたしはピアノさんと結……結構いいところまでいくと約束します」
「いいぞー!」
なぜか拍手喝采。わたしことピアノは硬直した。
「うわあ」
「さあ、どうする」と、エオリー。
「で、どうしますか?」と、ロック。
「俺だよな」と、ミクス。
「なんでやねん」
わたしはつぶやいた。
次の日。
わたしはその日、あらゆる店を回った。
すると街中には、あちこちにミクスの選挙ポスターが貼られている。
「ラブ。油民党」
シンプル!あと党名どうした?
また、いつしかエオリーは街中に自作ラブソングを流しまくる。
「あいに来てください、さもないと祟りがあなたに降りかかり、あなたは必ず苦しむー!」
なんかこわい。やめて。
さらに、ロックは行く先々にマンホールを通じて先回りしていた。
「また会いましたね……あ、珍しいカマドウマ。きゃー!」
「どこ行ってもあの三人だー!」
わたしは頭を抱えた。落ち着いて買い物もできない。ついうっかり買ったのはキリンと力士のデュエットCDだった。
「ああ、どうすれば」
わたしは恋愛したいと言ったかどうかはわからない。しかし彼らは言ったと言うだろう。
とくにミクスとロックはちょっと我田引水なところがある。
エオリーはアグレッシブで押しが強く、受け身で悲観的だ。どれ?とにかくがんばれ。
「なにを!勝つのはおれだ!」
「いや僕です!」
「俺俺」
三人は言い争った。わたしはそれを尻目にひとり鍋を準備。
「いっただっきまーす!」
おいしい、白菜。
そして、運命の日。
わたしはオレンジのチューリップを一輪手渡された。
「この人、と思う人にチューリップを渡してください」
パクリじゃん!パ、パロディですよ。すみません。
わけもわからぬまま、わたしは舞台に進んだ。
今日アイプチしてないけど大丈夫かな。わたし6重まぶただから。
「じゃあ、チューリップを……」
わたしは三人を背に、いったん観客席に花を掲げてみせた。
すると、背後で火花の散る気配。
わたしの手は勝手に動き出し、三人の前をあっちこっち。
あっちこっちあっちこっちあっちこっち。
「わー!」
私はパニクって、花を食べてしまった。
「あ」
「あ」
「あ……!」
私は舞台袖で三人に説教した。
「こら、ただの企画なんだから、ムキになったらだめでしょ。台本通りにやるだけなんだし」
「すみません」
「すみません」
「花。美味しかった?」
「うんまあ」
私は微笑んだ。今回のモチョラーは大失敗ね。
帰って白菜鍋でもしよ。
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