フレイヤさん
「戦闘がしたい!?」
いちご男爵ことユウが驚く
「うん、この前【NGF】の事をよく知って、戦闘もしたいなーって」
「嬉しいよレイン!じゃあ色々教えてあげるね」
「よろしくお願いします!いちご男爵さん!」
とちょっとおどけてみる。
「あはは……レインにはユウって呼んでくれると嬉しいな」
「うん、よろしくね、ユウ」
「じゃあまずは基本のボイスコマンドね」
「【NGF】では戦闘スキルは基本的にボイスコマンドを使うんだ、やってみるね」
そういうと近くに湧いていた熊に向かってユウはスキルを使った
『スーパー凄いパンチ!略してSSP!!』
空気を切り裂くするどいパンチが熊にヒットした。
不意打ちをされた熊も戦闘態勢に入った
『奥義!炎獅子剛拳!』
炎を纏った拳が熊にヒットする。
熊が倒れ、パーティクルとなって四散する。
「この辺の熊ならこんなもんかな」
ふぅ、と一息ついて続きを説明してくれる。
「さっきのパンチとキックはデフォルトの技名なんだ、それで奥義の方は自分で名前をカスタムしたやつ」
「そんなこと出来るんだ」
と驚くといちご男爵様は得意げに続けた。
「NGワードはあるけど自由にカスタマイズできるのがこのゲームの醍醐味だからね!」
「レインもやってみなよ、スカッとするよ」
「えーっと、この基本戦闘剣スキルでいいのかな?」
「まずはそれだね、剣と盾で一番基本的なスキルだからやりやすいと思うよ」
生産一筋だったおかげでスキルポイントもレベルも十分溜まっていた。
「よし、じゃあやってみる」
『ソードアタック』
ズバッと一閃し熊のライフが2割ほど削れる
「レインー!ディフェンス使ってー!」
『ディフェンス』
盾を構え声を出すと盾がぴしっと固まるのを感じる
熊のするどい一撃が綺麗に盾にヒットする
『シールドタックル』
『ソードアタック』
熊のライフが半分を割った。
『ダブルスラッシュ!』
鋭い2段切りがヒットし熊が倒れ、四散する。
「お疲れ、どう?ボイスコマンドは」
「うん、直感的で楽しい!」
と返すとユウは
「うんうん、もっと強いスキル使ったりカスタマイズするともっと楽しいよ!」
ととっても嬉しそうに言う
「後から変えられるから今名前変えてみよっか」
「そうだね、じゃあ……」
と楽しい時間を過ごした。
「そういえばさ、この前プレゼント出来るって言ってたよね?」
今日の本題はこれだった。
「出来るよー、プレゼントですって渡せば受け取ってくれるし好感度もあがるよ」
「ちなみに、モンスターにも出来るらしいよ。サキュバスに手を出した人もいるとか」
「そうなんだー……」
「なになに、気になる子ができたの?」
楽しそうだ。
「戦闘教官のフレイヤさんっているでしょ?あの人に男装してほしいなーって思ってて」
「あー、確かに似合うかも」
教官のフレイヤさん、女性人気も高い褐色の姉御だ。
「だったらまずは普通に仲良くなるのが良いよ、会話してると好感度あがってくから、フレイヤさんだと戦闘訓練でも好感度はあがったはず」
「うん、ありがとう、やってみるね」
お礼を言い立ち上がる
「じゃあ行ってくるね」
「がんばれー」
ユウと別れ自分のワールドのフレイヤさんのもとへ移動する
「こんにちは、フレイヤさん」
「やあ、君は……ふむ、レインというのか」
今まで戦闘とは縁遠かったのもあって声をかけるのはこれが始めてだ。
「戦闘訓練を受けたいんですけど」
というとフレイヤさんはにかっと笑った
「訓練か、大歓迎だ!」
「なんの訓練をするんだ?」
ユウの戦闘スタイルを思い出した。
「パンチとかキックで戦ってみたいんですけど」
「そうか、なら超近接格闘術だな、さっそく訓練開始だ」
一通りの基礎訓練を終えて、フレイヤさんからスキルを貰った。
「いやぁ、初めてにしては筋が良い、また来てくれよ」
ぽんぽんと肩を叩かれる
「ありがとうございます」
「野郎にしては礼儀正しいな、ははっ」
「またなっ」
説明する間もなく立ち去ってしまった。
次の日、久々に男装セットを外しフレイヤさんに会いに行く。
どんな反応をするだろう。
「フレイヤさん」
「やぁ、君は……レイン!?えっと、ん?」
混乱しているようだ。
「私、女の子だったんですよ?気づきませんでした?」
と澄ましてみる。
「あぁ、あまりに見事な体捌きで気づかなかったよ」
「でもそうか、女の子だったのか」
視線に熱がこもるのを感じた。
「それで、今日は何をしに?」
「今日も訓練しに来ました!」
と満面の笑顔を見せる
「ふふっ、そうか、じゃあまた新しいスキルを教えよう」
そうして訓練を終えた。
「素晴らしい体捌きだった、それに可愛らしい、また来てくれよ、お嬢さん」
というとまたもあっという間に消えてしまった。
次の日
「やぁレイン、今日も来てくれたのか」
「こんにちはフレイヤさん、ご機嫌ですね」
「君に会えたからな、レイン」
おや?と思っていると
「ここに来るのは野郎ばかりで飽き飽きしていたところだったんだ」
「レイン、今日も訓練でいいんだよな?」
「はい、もちろんです」
いつも通り答えたけれど、内心ドキドキだった。
フレイヤさんが私を意識し始めている。
訓練が終わった後、移動中少しふらついてしまった。
「おっと」
すかさずフレイヤさんが手を引いて受け止めてくれる。
「すまない、訓練がきつかったか?」
「いいえ、つい楽しくて頑張りすぎちゃいました」
フレイヤさんとの訓練はすごく楽しい。
私の戦闘スキルもどんどん上達していった。
「そっか、それは…嬉しいな」
フレイヤさんがふふっと笑みがこぼした
「ねぇ、フレイヤさん、今度ダンジョンに行きませんか?」
勢いに任せて誘ってみる。
「ダンジョンか、そうだな……うん、行こうか」
「わぁ、ありがとうございます、フレイヤさん」
人生で初めてのデートのお誘いはダンジョンだった。
きっとフレイヤさんには伝わらないかもしれないけれど。
ダンジョンへ行く日が来た
待ち合わせ場所へ行くと、フレイヤさんが待っていた。
「……!」
なんとフレイヤさんがいつもの教官服ではなかった。
「お待たせしましたか?フレイヤさん」
高ぶる気持ちを抑えフレイヤさんに声をかける。
「いいや、私も今来たところだ」
「フレイヤさん、今日のお洋服素敵ですね」
いつもの教官服と雰囲気が違う少しラフな格好だった。
「あぁ、ありがとう。今日はプライベートだからね」
「ふふっ、じゃあ、早速行きましょうか」
ダンジョン攻略はとても楽しかった
少し負傷したらすぐにフレイヤさんが治癒魔法をかけてくれたし、背中合わせで戦うことも出来た
「すっかり一人前だな、レイン」
フレイヤさんがにかっと笑う
「フレイヤさんのおかげです」
事実そうだった、フレイヤさんとの戦闘訓練がなければここまで楽しいと感じんかったかもしれない。
「いよいよボス部屋だな、サポートするから一人で戦ってみるか?」
「はい、やってみます」
成長を見せるいい機会だった。
ボス部屋の扉を開ける。
『エンハンス・ウィンド!』
フレイヤさんの支援魔法で体がふっと軽くなる。
移動速度、攻撃速度上昇バフだ。
「全力でいってこい!」
「はい!」
ここのボスはゴーレムだ。
パット見た感じ攻撃速度は速くないが一撃が大きいタイプ。
打撃が効果的なことは軽く調べてあった。
『スーパー凄いパンチ!略してSSP!!』
ズガンと気持ちのいい一撃がゴーレムの腕に入る。
少しヒビが入るがまだ足りない。
『SSPブースト!』
ガントレットに仕込まれた魔法力を解放して威力を上昇させる一撃を放つ。
リキャストタイムがあるため連打は出来ない。
ゴーレムの右腕に命中し右腕が吹き飛んだ。
「よし」
腕の破損でボーナスが入りライフが2割近く削れた
「次いくぞ!」
フレイヤさんの声が響く
『エンハンス・ファイア』
攻撃力アップのバフが入る
ゴーレムが突進姿勢に入る
しっかり躱した後背中に向かって全力の一撃を入れる
『奥義!炎獅子剛拳!』
ユウが使っていた技を思いっきり打ち込む。
バフと相まってゴーレムの体が消し飛んだ。
このボイスコマンドの圧倒的な爽快感、すごく楽しい。
「ふぅ」
でかいのを一発入れ一息
「まだ終わってないぞ!」
フレイヤさんの叫び声
『エンハンス・ウィンド!』
フレイヤさんが勢いよく突進してくる。
フレイヤさんとぶつかる寸前ふわっと風に包まれやさしく抱きかかえられる。
『ウォーターレーザー!』
フレイヤさんが振り返ることなくゴーレムは粉々になり四散する。
「まったく、まだまだ脇が甘いな」
耳元で囁かれドキッとする。
「おっとすまない、手を出すつもりは無かったんだが、つい」
慌てて謝るフレイヤさんが可愛くてつい笑ってしまう
「ふふっ、ありがとうございます」
ボス部屋奥の報酬部屋へと向かう。
「あんまりいいものは出ませんでしたね」
「仕方ないさ、ここは難易度はそんなに高くないからな」
「じゃあ、また一緒にもっと難しい所行きましょうね」
「あぁ、もちろんだ」
自然と次の約束ができるようになって嬉しくなる。
「そうだ、フレイヤさんにプレゼントがあるんですけど……」
「なんだ?」
「えっと……」
UIを操作しプレゼントを取り出す
「これは、ふふっ」
ダンジョン探索は大成功だった。
後日
「わ…!!」
「フレイヤさん!!それ!!」
「あぁ、なかなか悪くないな、こういうのも」
プレゼントしたスリーピーススーツを着こなしたフレイヤさんがそこにいた。
「写真撮りましょう!写真!」
「今日はずいぶんテンションが高いな、ふふっ」
「だってだって、プレゼント着てくれたから!」
私もフレイヤさんも今までで一番の笑顔だった。
後日
投稿した男装フレイヤさんのスクリーンショットが拡散され、どうやれば男装できるのか質問攻めにあった。
その後個人商店を開業しレインは大忙しとなるのであった。